神々の棲む島・竹生島の魅力は、竹生島神社と宝厳寺(ほうごんじ)が一体となって形成されているものです。神仏習合の長い歴史と文化の蓄積はそうそう分離できるものではありません。
宝厳寺には竹生島の信仰の中心となる弁財天や観音があり、豊臣時代の遺構である国宝の唐門が戦国時代の人間模様を物語っています。
竹生島へ向かう爽快な船旅
竹生島で寺社とお店が立ち並んでいるのは、島の南側に設けられた桟橋を中心としたわずかなエリアだけです。宝厳寺の伽藍は山の斜面に設けられており、長い石段を上るほどに琵琶湖の絶景が爽快に見えるようになります。
唐門(写真は修復工事前)
最初の拝観スポットは国宝の唐門と、その奥にある重文の観音堂です。両建築は観音堂の奥にさらに続く舟廊下と竹生島神社・本殿と共に、江戸時代初期の1603(慶長8)年に豊臣秀頼が片桐且元を奉行に命じ再興したものです。
観音堂と竹生島神社本殿はどこからの移築か定かではありませんが、唐門が京都東山の秀吉の墓所・豊国廟(現在の豊国神社)から移築されたことは記録にも見られ確実なようです。この唐門、さらに興味深い説も登場しています。21世紀になってオーストリアの古城で発見された、豊臣時代の様子を描いた「大坂城図屏風」に描かれた門が、宝厳寺の唐門である可能性が高いというものです。
現在も大阪城天守閣のすぐ北の内堀にかかる極楽橋は、京都に至る街道と城をつなぐ出入口にあたり、豊臣時代の大坂城にもほぼ同じ位置に架けられていたと考えられています。「大坂城図屏風」には、極楽橋が壁と屋根で囲んだ建物のような廊下橋として描かれており、唐破風の様子が宝厳寺の唐門と酷似しているというものです。
唐門は2018年現在修復工事中で、内外観の様子が通常とは異なります。修理前の状態は琵琶湖の強い風雨にさらされることから、檜皮葺の屋根や漆の剥落が目立っていました。しかし扉や欄間の彫刻、破風のカーブの優美さを見る限り、当時の最高水準の作品であることは間違いないでしょう。
となるとことさらに豊臣時代の大坂城の遺構だったというロマンが高まってきます。もちろん他に遺構はどこにもありません。関ヶ原の戦い後に秀頼が移築していることにも政治的な背景がうかがえます。まさに安土桃山時代の人間模様の象徴のような建築です。
観音堂は西国三十三所の札所にもなっており、竹生島信仰の二枚看板の一つです。千手観音は秘仏で60年に1回の開帳(次回は2037年)です。
石段を上ると、弁財天を祀る本堂と三重塔、宝物殿があります。本堂と宝物殿は昭和になってからの建築です。三重塔も江戸時代初期に焼失してから平成になって再建されたもので、石段の上は比較的新しい参拝エリアと言えます。
本堂はたくさんの参拝者で賑わう。
本堂には竹生島信仰の二枚看板のもう一つ、本尊の弁財天が安置されています。本尊はこちらも秘仏で60年に1回の開帳(次回は2037年)です。通常は御前立像(おまえだちぞう)にお参りすることになります。七福神の一人である弁財天の御前立像は、インドの女神の様子で造形されています。内陣の壁画と相まって、とても神秘的な空間になっています。
【公式サイトの画像】 本堂、弁財天
宝物殿では、竹生島に平安時代から江戸時代に至るまで、各時代の権力者による篤い信奉を物語る数多くの文化財が入れ替えながら公開されています。島の長く深い歴史を実感できる展示です。彦根藩主の井伊家ゆかりの品も少なくありません
【公式サイトの画像】 宝物殿
竹生島には豊臣ゆかりの建築がこれほど多く残されていることは驚きです。徳川は京都の豊国廟や大坂城など、豊臣ゆかりの建築の痕跡をなくしてきましたが、竹生島には手を付けませんでした。三代将軍・家光の母である江(ごう)浅井三姉妹の一人であり、その姉は淀殿です。徳川は自らが滅ぼした浅井や豊臣にゆかりの深い竹生島を、両氏の鎮魂の島と考えたのかもしれません。
こんなところがあるのです。
ここにしかない「美」があるのです。
自然と歴史を同時に楽しめる関西の休日散歩コースをたっぷり紹介
竹生島 宝厳寺
【公式サイト】http://www.chikubushima.jp/
原則休館日:なし
拝観時間:始発観光船の着時間~終発観光船の発時間
※終発観光船出発以降の夜間島内滞在は不可
※修復工事や災害復旧工事の影響で建物の内外観や参拝ルートが通常と異なる場合があります。
おすすめ交通機関:
【宝厳寺 公式サイト】 アクセス案内
JR北陸線長浜駅下車、西口から徒歩10分の長浜港から観光船で30分、竹生島港から徒歩5分
運行本数は、夏季は毎日5往復+多客期増便、冬季は毎日2往復
※観光船は便数が少ないため、事前にダイヤを確認の上、利用されることを強くおすすめします。
※長浜港には無料の駐車場があります。
【公式サイト】 琵琶湖汽船 竹生島クルーズ
JR京都駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:2時間
京都駅→JR琵琶湖線新快速→長浜駅→長浜港→竹生島港
他の竹生島への観光船
※琵琶湖汽船、JR湖西線近江今津駅から徒歩5分の今津港から
※オーミマリン、JR琵琶湖線彦根駅から送迎バスで8分の彦根港から
【公式サイト】 オーミマリン 竹生島めぐり
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