仕事を終えた夜の方が賑わう「えべっさん」
正月が明け今年も関西には「えべっさん」がやってきます。大阪・難波近くの今宮戎神社でも、初詣では味わえない圧倒的なオーラを発する空間となります。特別に選ばれた福娘から授与される福笹を求め、商売繁盛を祈る人たちがひっきりなしに訪れます。26年ぶりの日経平均株価の高値で幕を開けた2018年、人々は手に持った福笹にどんな思いを込めるのでしょうか。
関西で正月明けに商売繁盛を祈る「えべっさん」は、京都・祇園の京都ゑびす神社や大阪・天満の堀川戎神社が知れられていますが、西宮神社と今宮戎神社のものが双璧です。両神社とも例年3日間で100万人を超える参拝客が訪れ、関西ではこれを迎えないと年が明けた気分にはなれません。
今宮戎神社は四天王寺の西の海岸沿いに開かれた物々交換をする市の守護神として平安時代ごろから親しまれていたようです。江戸時代になって大坂が日本の物流の中心都市として繁栄するようになると、十日えびすの祭事が定着し、大阪では初詣以上に熱気を帯びる祭事として定着しています。
大阪・道頓堀のグリコの看板で有名な「戎橋」も、今宮戎神社への参拝道として名付けられたものです。歌舞伎・文楽・落語・漫才の著名芸人やNHKの朝の連ドラのヒロインが、籠に乗って道頓堀周辺を1月10日に練り歩くイベントも毎年恒例です。十日えびすは、大阪の繁華街を支える人たちが率先して商売繁盛と街の発展を祈る、江戸時代から続く大切な祭事なのです。
1月9日の「宵えびす」には最寄りの南海電車・難波駅からの参道が歩行者天国となり、縁日屋台で埋め尽くされます。仕事帰りに参拝する人が多く、特に平日は夕方以降がごったがえします。私は昼間より夜の絵別山の方が好きです。境内を埋め尽くす提灯が映え、ライトアップされた縁起物を売る屋台が華やかだからです。
神社境内に入ると多くの人は福笹を求めに行きます。福笹を授与する巫女さんは「福娘」と呼ばれ、応募すれば大抵採用される普通のアルバイトではありません。今年は2,800人以上あった応募の中から面接などを通じて選ばれた定員50人の特別な若い女性たちです。
倍率では50倍以上となり、どのような女性たちが揃うかはご想像の通りとなります。近年は留学生枠も設けられ、街が外国人観光客であふれる時代にとてもよくあった選考枠と言えます。大阪では女性たちにとって「福娘」に選ばれることは、ステイタスであることに他なりません。
【公式サイトの画像】 今年の福娘
福笹は「福娘」から受け取りますが、今宮戎神社では笹だけは無料でもらえることが他の神社とは異なりユニークです。神社の周りには福笹に付ける縁起物を売る屋台が密集しています。数十万円するものも珍しくありません。
2018年は日経平均株価の上昇に伴い、景気上昇への期待ムードが例年になく高まっています。また大阪は日本でも有数の外国人観光客の恩恵を受けている街でもあります。新たな商売の発展の方向を祈って、縁起物の売上も大いに活況を呈するでしょう。
「福娘」は今宮戎神社のえべっさんの主役となりますが、西宮神社のような「福男」を選ぶイベントはありません。また西宮神社には「福娘」を選ぶイベントもありません。関西のえべっさんの双璧の両神社で、主役を男女で分担しているようでとても興味深く感じます。3日間開催されていますので、両方を訪れるとよりたくさんの福をもらえることは間違いありません。
こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさんあります。
今宮戎神社
http://www.imamiya-ebisu.jp/
会期:毎年1月9日~1月11日
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