貝殻島灯台と水晶島
日本の駅で最も東にある根室駅から、さらに東に路線バスで40分ほど行ったところに、誰でも自由に行くことができる日本の東の端「納沙布岬(のさっぷみさき)」があります。東の果てとして観光スポットになっていますが、目前に見える北方領土に行くことができないという現実も重くのしかかっています。鉄のように固く氷のように冷たいBorderを日本で最も感じさせるところです。
誰で自由に行くことができる日本の西の端「与那国島(よなぐにじま)」とは、日の出時間の差が最も大きくなる夏至の日には2時間20分以上の差があります。日本は決して小さな島国ではないことがわかります。西の端から先、100kmほど離れた台湾には、ビザなしで行くことができます。2016年になって与那国島に自衛隊が駐屯するようになりましたが、それまでは軍事的な緊張感を感じさせる存在はありませんでした。
日本人が北方領土に行く場合、ロシアからビザを発給してもらう必要があります。しかし現実にはビザはほぼ発給されません。また日本政府も北方領土への渡航を自粛するよう呼び掛けています。ロシアからビザを発給してもらうことは、ロシアの領土だと認めることになるからです。
歯舞(はぼまい)諸島の一つで、岩礁に朽ちた灯台があることで知られる貝殻島(かいがらじま)は、最も近い北方領土です。納沙布岬からはわずか3.7kmしかなく、悪天候にならない限り普通に見えます。島として最も近い水晶島(すいしょうじま)も7kmしか離れていません。付近の海は昆布がよく取れますが、ロシア側にお金を払って漁を続けているのが現実です。
冬季に唯一営業している土産物屋
納沙布岬はバス停の周りでも建物は少なく、さいはての地にたどり着いたことを感じさせます。夏の方が圧倒的に観光客は多く、ツーリングを楽しむライダーたちの人気スポットになっているようです。一方冬季はお店がほとんど営業しないほどです。
バス停からは岬まで徒歩5分ほどです。先へ進むと貝殻島・水晶島以外の歯舞諸島の島も見えてきます。双眼鏡を使えば建物も鮮明に見えます。納沙布岬から近い北方領土には、定住者はいないとみられており、人の気配は全く感じられません。氷に閉ざされた極寒の大地が、冷たい壁としてBorderに立ちはだかっているように見えてきます。
終戦直後まで確かな日本人の暮らしがあった
岬付近には「北方館 望郷の家」「根室市北方領土資料館」の2つの資料館があり、戦前の北方領土での暮らしの様子が展示されています。村人の写真、集落の地図などがたくさん残されていることには驚きます。終戦時のソ連軍の進行直後にロシア人と日本人が一緒に暮らしている写真には、特に心を打たれます。普通に暮らすにあたって、国境や国籍は本来は気にする必要がないのです。
国後島の遠景も見える
国後島(くなしりとう)も見えます。北方領土四島の中で最も標高の高い1,822mの爺爺岳(ちゃちゃだけ)の勇壮な姿を感じることができます。国後の先にある択捉島(えとろふとう)と共に、知床に匹敵するような大自然が残されていると思えてなりません。
納沙布岬は、北海道のスケールの大きさと冷徹な政治の現実が同居しているところです。雄大な自然を感じたら必ず、現代の日本社会がこのBorderを生み出した過去の悲劇の元に成り立っていることを考えてみてください。
根室の原野はどこまでも大きい
こんなところがあったのか。
日本にも世界にも、唯一無二の「美」はたくさん。
北海道の鉄路、究極のローカル線
北海道・根室振興局 観光スポット紹介「納沙布岬」
http://www.nemuro.pref.hokkaido.lg.jp/ss/srk/kanko/nmrgsdb/3k-spot/3ks-cape-nosappu.htm
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