美の五色 bino_gosiki ~ 美しい空間,モノ,コトをリスペクト

展覧会,美術,お寺,行事,遺産,観光スポット 美しい理由を背景,歴史,人間模様からブログします

奈良 西大寺 愛染明王の傑作が1/15から公開|美仏が目白押し

2019年01月03日 | お寺・神社・特別公開

奈良・西大寺で、秘仏・愛染明王が開扉される冬の特別公開が間もなく始まります。日本の高僧の肖像彫刻の傑作である、鎌倉時代に西大寺を中興した叡尊(えいそん)像と一緒にお会いできるスペシャルな2週間です。

  • 愛染明王は日本有数の美しさ、西大寺を代表する美仏
  • 奈良時代から伝わる西大寺の多くの美仏が収蔵された聚宝館(れいほうかん)もあわせて公開
  • 社会事業を尽くした叡尊の心の大きさを表すように、おおらかで温かく感じる境内も魅力
  • 公開初日には西大寺の名物行事・大茶盛式(おおちゃもりしき)が行われる


西大寺には苦難の歴史の割に、多くの仏教美術がのこされています。それだけ大切にされてきたのです。近くの薬師寺と唐招提寺に負けず劣らない充実した仏教美術空間を楽しむことができます。


東門から見る境内はおおらかで温かい

西大寺は奈良時代の765(天平神護元)年、軍事クーデター・藤原仲麻呂(恵美押勝)の乱を鎮めようとした称徳(しょうとく)天皇によって創建されました。乱の鎮圧を祈願して最初に造られたのは四天王像で、本尊が後から造られたというとても珍しい創建のエピソードがあります。

仏教への信仰心が篤かった称徳天皇は、父の聖武天皇が造った東大寺を上回るような巨大伽藍を西大寺に築きます。現在の境内の20倍ほどあったと推定されています。寺名もよく連想される通り、東大寺に対応する意味を込めて付けられたものでしょう。

平安時代に相次いだ火災や自然災害で荒廃が進みましたが、1235(文暦2)年に叡尊(興正菩薩、こうしょうぼさつ)が入寺すると、復興が一気に進みます。修行僧の生活規範である戒律の復興を唱え、人望を集めていた叡尊の下には多くの修行僧が集まります。真言律宗(しんごんりっしゅう)の実質的な開祖になり、西大寺は真言律宗の総本山となります。

叡尊の弟子にはハンセン病患者の救済で知られる忍性(にんしょう)がいました。社会事業に尽くした伝統から、現在の境内も人々からとても愛されていると感じることができます。


本堂

主要な堂宇である本堂・愛染堂・四王堂は常時公開されています。西大寺の現在の建物はすべて江戸時代以降の再建です。

本堂の本尊・釈迦如来立像は清凉寺式で、叡尊の発願で摸刻されたものです。彩色が残り、衣のひだも美しい重要文化財の名品です。南都仏師・善慶(ぜんけい)の作です。鎌倉復興期の西大寺の仏像は善派の作品が多くなっています。

【西大寺公式サイトの画像】 本堂・釈迦如来立像


愛染堂

愛染堂では、国宝の叡尊像が常時公開されています。仏師・善春(ぜんしゅん)による叡尊が80歳の時の肖像です。存命中に造られた作品であり、叡尊の面影をほぼ忠実に伝えていると考えられます。指の造形は今にも動き出すかのようにリアルであり、長く伸びた眉毛からは叡尊の人物としての大きさが伝わってきます。西大寺では、日本有数の肖像彫刻の傑作にいつでもお会いできるのです。

愛染明王は、善円(善慶の旧名)の作で、重要文化財です。叡尊の念持仏で、寺で大切に保存されてきました。そのため彩色もよくのこり、木肌の質感もとても美しく保たれています。とても精緻に彫刻されており、30cmほどの小像ですが、強いオーラを発しています。こちらも日本有数の傑作です。

【西大寺公式サイトの画像】 愛染堂・愛染明王坐像、興正菩薩叡尊上人坐像


聚宝館

寺宝の収蔵庫である聚宝館では、奈良時代に建てられた五重塔に安置されていた塔本四仏坐像の内の二体が注目です。創建当初をしのぶ数少ない遺品で、奈良時代に多いおおらかな表情の造形が目を引きます。重要文化財です。国宝の金銅宝塔も叡尊の発願で造られたものです。この作品も保存状態が良く、金地が美しくのこっています。

【西大寺公式サイトの画像】 聚宝館・金銅宝塔、塔本四仏坐像

常時公開されている四王堂は、西大寺創建の原点となった四天王像を祀る堂宇です。現存する四天王像は後世の作品ですが、踏みつけられている邪鬼だけが奈良時代の創建当初のものと考えられています。

【奈良県観光公式サイト なら旅ネット】 新春大茶盛式(西大寺)

大茶盛式は、叡尊が民衆に、当時は高級品であった茶を振る舞ったのが起源と考えられています。直径30cmもある巨大な茶碗を周囲の人に支えてもらいながら、順に回し飲みしていきます。予約不要で誰でも参加できます。とてもほのぼのとした茶会です。



叡尊の偉業が見事に伝えられている寺です。伽藍が新しく世界遺産には指定されていないため、知名度では不利です。しかしコンテンツは目を見張るものがあります。境内もとても親しみやすい雰囲気があります。西大寺をぜひ、おすすめします。

こんなところがあります。
ここにしかない「空間」があります。



民衆の祈りの場であり続けた西大寺の魅力を長老と歌人が共に語る

________________________________

西大寺
秘仏愛染明王御開扉、聚宝館開館
【公式サイト】 http://saidaiji.or.jp

会場:愛染明王開扉は愛染堂
会期:毎年日付で固定 1月15日~2月4日
原則休館日:なし
入館(拝観)受付時間:9:00~16:30

※愛染明王開扉は、10/25~11/15にも行われます。
※聚宝館開館は、4/1~5/31と10/25~11/15にも行われます。
※本堂・愛染堂、四王堂は常時公開されています。
※大茶盛式は、4月と10月の各第2日曜日にも行われます。
※公開されていない仏像や建物・美術品があります。



◆おすすめ交通機関◆

近鉄・奈良線・京都線・橿原線「大和西大寺」駅下車、南口から徒歩3分
JR大阪駅から一般的なルートを利用した平常時の所要時間の目安:55分
JR大阪駅→JR環状線→鶴橋駅→近鉄奈良線→大和西大寺駅

【公式サイト】 アクセス案内

※この施設には有料の駐車場があります。
※道路の狭さ、渋滞と駐車場不足により、健常者のクルマによる訪問は非現実的です。


________________________________

→ 「美の五色」とは ~特徴と主催者について
→ 「美の五色」 サイトポリシー
→ 「美の五色」ジャンル別ページ 索引 Portal


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 1/8から京都で初ゑびす|舞妓... | トップ | 韓国 慶州 仏国寺|日本の仏... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

お寺・神社・特別公開」カテゴリの最新記事