万葉の人々も愛した畝傍山と耳成山が美しい
葛城。関西に多い難読地名の代表の一つで「かつらぎ」と読む。大阪府との県境に位置する奈良県側の地名で、境を隔てる山が標高950mほどの葛城山だ。奈良県側には當麻寺(たいまでら)、大阪府側には世界遺産登録を目指す古市(ふるいち)古墳群と、日本の原点となる証が数多く残されている。
一方この山は、関西を中心に現代人のレジャー対象としてもよく知られている。関西は都市を取り囲む山が近距離に豊富にある。六甲山・箕面山・生駒山・金剛山と、神戸・大阪を取り囲んで街並みを詳細に見渡すことができる山々が連なっている。
東京・首都圏では近くにある著名な山は高尾山か筑波山に限られるが、いずれも街との距離は遠く、詳細な街並みは見渡しにくい。高尾山頂からは東京スカイツリー(高さ634m)はほとんど見えないが、葛城山頂からは高層ビル日本一(2017年時点)の高さ300m「あべのハルカス」が頻繁に見える。
ロープウエイは奈良県側から
葛城山頂へは奈良県側から上るのが一般的で、ロープウエイと登山道が通じている。ロープウエイ乗り場・登山口には近鉄御所駅からバスがあるが、本数は少ないので事前にダイヤを確認されることをおすすめする。本数が少ない分、高尾山のように人手が多すぎて山頂で弁当を食べる場所の確保に困るようなことはまずない。ほぼ確実に非日常の静かな自然の絶景を満喫できる。
ロープウエイの山上駅からは15分ほどゆるやかな上り坂を歩くと山頂に至る。山頂からは奈良側・大阪側いずれも絶景が広がる。奈良県側は畝傍山など万葉集にも謡われた大和三山がはっきりと見える。大阪側は関西空港、あべのハルカスなど大阪都心の高層ビル群、神戸の港までも見える。
山頂付近は、絶景はもとより「5月のツツジ」「10月のススキ」が美しい。全国的に有名な吉野の桜のように、5月はツツジの赤色、10月はススキの黄金色が山全体を覆いつくす。特に9~11月にかけてのススキは、風になびきながら繊細な黄金色が一面を絨毯のように覆いつくす神秘的な輝きが、秋の収穫への感謝と冬ごもりへの備えを生き物に伝えるように主張する。赤と黄色のコントラストが美しい紅葉とは対照的な日本の秋の色だ。
ススキが主張する秋の色(写真は9月末なので少し早い)
関西は街と山との距離が近く、歴史を重ねた街並みも多いため、散策コースには事欠かない。大阪~京都~奈良~伊勢~名古屋と広範囲に路線を巡らせた近鉄では、沿線の散策コースの案内「てくてくまっぷ」にも力を入れている。
「てくてくまっぷ」は散策コース最寄り駅で配布しているほか、近鉄公式サイトからPDFでダウンロードできるのが便利だ。事前の計画には欠かせないツールとしておすすめする。
近鉄「てくてくまっぷ」奈良-15 葛城登山コース
http://www.kintetsu.co.jp/zigyou/teku2/#tab2
日本や世界には、数多く「ここにしかない」名作がある。
「ここにしかない」名作に会いに行こう。
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国民宿舎 葛城高原ロッジ(登山案内が充実)
http://www.katsuragikogen.co.jp/