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ロシアで大切に受け継がれてきた絵画が日本でプレゼン ~兵庫県立美術館 大エルミタージュ美術館展

2017年10月03日 | 美術館・展覧会

赤い絨毯が似合う展覧会

 

 

兵庫県立美術館で「大エルミタージュ美術館展」が始まった。2017年3月の東京・森アーツセンターギャラリー、7月の愛知県美術館から巡回してきたもので、絵画だけでも17,000点を所蔵する世界最大級のコレクションの中から選りすぐった85点で展覧会が構成されている。さすがにコレクションの幅は広く、バロック・ロココ時代を中心に西洋絵画のオールドマスターを国別に体系立ててわかりやすく楽しめるようになっている。

 

入口では、エルミタージュ美術館の創設者とも言える女帝エカテリーナ2世の1762年の戴冠式の衣装の肖像画が出迎えてくれる。この絵だけ11/2まで平日限定で営利目的を除いた写真撮影OKだ。最近は期間限定や平日のみ写真撮影OKの展覧会も増えている。

 

美術館での作品の写真撮影は、著作権だけでなく鑑賞環境維持も大きな壁となる。多くのスマホはシャッターを押した時に自動で音が出る、オート撮影モードだと無意識にフラッシュがたかれてしまうことがある、のが厄介だ。鑑賞者自身がマナーを考え、よりよい方向に進むことを願ってやまない。

 

イタリアの部屋では、カナレットの写真のようなベネチアの風景画が目を楽しませてくれる。また日本での知名度はあまり高くないが、18世紀のローマで新古典主義の先駆けとなる画風で売れっ子だったポンペオ・ジローラモ・バトーニの「聖家族」も美しい。聖母マリアの肌は白く輝き、どこまでも理想的な母と子の様子に仕立てている。

 

ポンペオ・ジローラモ・バトーニ「聖家族」

 

 

オランダの部屋では、17世紀のバブル絶頂期のオランダ絵画の代表であるハルスの肖像画やレンブラントの独特の光と影の絵が揃っている。市民の生活の様子を描くのが上手なピーテル・デ・ホーホの「女主人とバケツを持つ女中」は構図が面白い。女中が女主人に買ってきた魚を見せているのだが、どのような意味を込めたのだろうか。背景のオランダの街並みものどかで美しい。

 

私が最も長時間いたのはスペインの部屋だ。まずスルバランの「聖母マリアの少女時代」に見とれた。彼の絵は、聖人を理想化せずに普通の人のように描くのだが、厳格な静粛さが特徴的だ。とても神秘的に光と影を駆使するので、同じく光と影が特徴的なカラバッジョやジョルジュ・ラトゥールとは異なる、中世のような絶対的な宗教感を醸し出している。聖母マリアもどこにでもいるような普通の少女のように描かれているが、その目はとても素朴でけがれがない。

 

スルバラン「聖母マリアの少女時代」

 

 

同じ部屋には、セビリアでスルバランから人気を奪ったムリーリョの愛くるしい天使やマリアの絵もある。ムリーリョ独特の“プヨプヨの毛の羊”も見ることができる。ムリーリョの絵にも強い宗教観を感じるが、両者の表現の違いを見比べてほしい。

 

ティツィアーノ、クラナハ、ヴァン・ダイク、シャルダン、フラゴナールといった各時代・各国の主要画家の特徴的な作品も揃っている。西洋絵画のオールドマスターを俯瞰するには最適の展覧会だ。

 

エカテリーナ2世は、ポーランド分割を行うとともにトルコとの戦争に勝ってウクライナを獲得するなどロシアの領土を広げた皇帝として知られる。伊勢の船頭でアリューシャン列島に漂着し、サンクト・ペテルブルクまでやってきた大黒屋光太夫に帰国を許可したのも彼女で、光太夫はラクスマンに伴われて根室に向かい1793年に帰国を果たした。日本とも不思議な縁で結ばれている皇帝だ。

 

 

巨大なカエルが出迎えてくれる

 

 

日本や世界には、数多く「ここにしかない」名作がある。

「ここにしかない」名作に会いに行こう。

 

 

 

 

「怖い絵」の著者・中野京子によるエカテリーナ2世ほかロマノフ王朝の物語、オールカラーで読みやすい。

 

 

 

兵庫県立美術館

大エルミタージュ美術館展 ~オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち

http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_1710/index.html

会期:2017年10月3日(火)~2018年1月14日(日)

原則休館日:月曜日

 

 

 


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