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徳川が残した唯一の美の空間は京都にある ~二条城 展示・収蔵館

2017年09月30日 | 城・屋敷・歴史遺産

二条城は節目の年を迎えている

 

慶応3年10月13日(新暦1867年11月8日)は、二条城二の丸御殿大広間において15代将軍徳川慶喜が40藩の重臣に対して「政権を幕府から朝廷に返上する」ことを伝えた日だ。2017年はちょうど150年になる。

 

二条城ではこの節目の年に様々なイベントが企画されており、二の丸御殿の障壁画の原本を安全に保管・展示する「展示・収蔵館」では、大広間の障壁画の原本が公開されている。

 

二の丸御殿の障壁画は2,000面以上あり、うち約半数の1,016面が重要文化財に指定されている。二の丸御殿を訪れると絢爛豪華な障壁画に圧倒されるが、これらはすでに模写とはめ替えられているものも多い。この模写とのはめ替えは1972年から始まり、現在も連綿と行われている。修復作業も2002年から始まり、2005年には展示・収蔵館がオープンした。

 

 

障壁画の原本は展示・収蔵館で少しずつ公開される

 

 

展示・収蔵館では、会期60日の公開を年4回行うことが通例になっている。2017年9月からは大政奉還150周年記念として「<大広間>一の間・二の間の障壁画」の展示が行われている。

 

二の丸御殿は徳川家康により建造されたもので、本丸御殿を含め洛中がほぼ焼失した天明の大火でも生き残った強運の持ち主だ。ゆえに結果的に江戸幕府の最初と最後の歴史的な場となる。御殿内の大広間には人形が置かれ、慶喜が大政奉還を伝えたシーンを再現している。大広間の一の間・二の間は将軍との公式の対面所で、特に将軍の権威と品格を感じさせるしつらえがなされている。

 

三代将軍家光は1626年に二条城に後水尾天皇を迎えるために、狩野派一門に障壁画を描かせた。基本のモチーフは松、天井まで届く巨大さで非常に太く、動き出すような躍動感がある。若さとエネルギーにあふれた松だ。松は年間を通じて葉が落ちないため、不老長寿の象徴として頻繁に描かれるが、数多くある松の中でも大広間の松は特に巨大だ。

 

二の丸御殿で最も重要な部屋である大広間の一の間・二の間はまだ若かった狩野探幽が担当した。もし探幽作の江戸城の障壁画が現存していたらどんなにダイナミックな松が描かれていたのだろうと想像が膨らむ。徳川が残した美の空間は二条城しか現存しないのだ。

 

 

<大広間>一の間・二の間の障壁画は、公式サイト内のパノラマウォークで見ることができる

 

 

展示・収蔵館ではガラス越しだが間近にこの松を見ることができる。巨大な絵にも関わらず、細部の木肌や葉の質感もきちんと表現されている。空白部分の金箔も美しい。

 

本物と模写を両方見ることになるが、模写も実によくできていることに気づかされる。日本画は長期展示ができないため、公開が制限されている場合がほとんどだ。

 

障壁画では模写や複製することで常設展示がしやすくなり、在りし日の室内空間を楽しめるようになる。常設展示するには作品の劣化対策以外にもクリアしなければならないことは多いが、寺院を中心に少しずつ模写・複製画による展示期間の拡大が行われている。観る方は一定の観覧料を支払うことで、模写・複製作業を応援することになる。日本美術の展示のあり方として私は応援したいと思う。

 

この障壁画が描かれた1625年、絶対王政を確立し始めていたフランスで、ルーベンスの大作「マリー・ド・メディシスの生涯」が完成している。国王ルイ13世の幼少期に摂政を務めていたものの後に息子に追放される母マリーが、自らの生涯を神格化して描かせたものだ。絵の制作の背景は異なるものの、時の権力者が「どうだ!」と見せつけるべく、時の一流の画家に描かせたことは共通だ。欧州との文化の違いが明らかで興味深い。

 

Atlas:ルーブル美術館展示作品データベース「マリー・ド・メディシスの生涯」

 

 

 

日本や世界には、数多く「ここにしかない」名作がある。

「ここにしかない」名作に会いに行こう。

 

 二条城の障壁画と庭園美をあまねく解説した公式ガイド

 

 

二条城 展示・収蔵館

http://www2.city.kyoto.lg.jp/bunshi/nijojo/tenji/index.html

大政奉還150周年記念展示第2弾「歴史の舞台~<大広間>一の間・二の間」

会期:2017年9月14日(木)~11月12日(日)

原則休館日:会期中なし

 

 


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