ヘルマン・ヘッセ「シッダールタ」を読んだ。
ヘッセといえば「車輪の下」や「デミアン」。中高生の頃読んだが、内容はほとんど忘れてしまった。手元に本もない。
シッダールタはバラモンの家に生まれ、極めて優れた人であった。生贄し瞑想を深める日々に満足せず、家を出て沙門となって修行する。
そして悟りを得たという師、ゴータマ仏陀の噂を聞き会いに行く。
あれ、シッダールタは仏陀ではなかったのか。
これは仏陀の伝説を物語にしたものではなく、シッダールタという別の男の話である。
しかしシッダールタは仏陀なのかもしれない、瞑想、ストイック、禁欲の崩壊、向き合う自我。
これは仏陀ではないと仏教徒は言うかもしれない。しかし人である仏陀が悟りを得るとはこういうことかもしれないとも思える。
読み始めると文章に引き込まれ、知らず自分が静かになる。物語は静かなままではなく、若くないシッダールタは人としての情にこの上なくかき乱され、その果てに悟りがあった。
私が本を閉じる静かさも、読み始めた時と同じではない。コロナでなーんにもなかったような1年でも、1年前と同じではない。
本をめくれば何かが灯る。