福助の誕生日に鎌倉山ローストビーフの本店に行った。約30年ぶりか。
格調高き鎌倉山、ゆったり待って席に案内され、誕生日だからシャンパンをグラスで。前菜は貝とマグロの刺身。あとから焼いた貝も。
チーズを入れたオニオンスープをいただいて、メインのローストビーフはヒレ肉に和風ソース。サラダとパン。グラスの赤ワイン。
ヒレ肉のローストビーフは初めてだったが、すこぶる美味。
というか、前菜の貝から全て美味しくて、たまに美味しいねえ、とか言うくらい。
ほぼ無言で、食べることにじっくり集中できる幸せ。
レストランでずっと話している男女は、恋人同士とか不倫カップルの付き合っている人たち。黙ってそれぞれスマホいじってたりするのは夫婦というか家族だなと思う。関係ないか。
3つ選べるワゴンサービスのデザートは、福助は柿のケーキとチーズケーキと栗のケーキにコーヒー。私は栗のケーキと洋梨のタルトとりんごのコンポートに紅茶。
ああ美味しかった、ごちそうさまでした。
それなりに高い料金を払うけど、今なら平気。
30年前は、こうじゃなかった。
その頃藤沢には西武デパートがあり、鎌倉山レストランが入っていた。ビンゴ大会つきのクリスマスのディナーも参加したことがある。ポインセチアの鉢植えやクリスタルの花瓶を持って帰った。カジュアルに美味しいローストビーフが食べられるお気に入りのお店だった。
鎌倉にある本店は、どんなところかな?
一度行ってみようと車で出かけた。
格式高く沢山の従業員さんがいる。予約もしてなかったのに丁寧に案内され、大きなテーブルに二人。メニューが西武と全然違って面食らった。車で来たからお酒は断れるけど、コースに入っていないスープを断るのは恥ずかしかった。
どうしていいかわからない「間」に焦る。
確かに美味しかったと思うけど、よく覚えていない。デザートに私だけ3色の菱餅型ババロアをいただいたから雛祭りの頃だった。ババロアは半分に切って、福助の皿にコソッとのせた。
支払いはカード持っててよかったね。
実態を知らなさすぎたから、そんなに背伸びして出かけたつもりはなかった。それでもこの貴重な経験は、後のアメリカ生活はじめ、いろんな場面で活かされた。どう振る舞えばいいか、初めてと2回目以降の差は歴然。結局のところ、お金があれば怖くない、とも言える。
若い頃のリベンジを胸に秘めた二人であったが、人目を気にせず堂々と「食べる」に専念できる、素敵なレストランだったね、という尊敬を新たに抱いた次第。
お金を持ってあれこれわかっちゃったつまんない大人だけど、滅多にない贅沢を楽しみ満ち足りた。