このホテルのプールが好きなんだ
ってあなたは言った
椰子の木の影がブルーになってプールに落ちている
私もいつか好きになっていた
南の島のリゾートホテル
毎年彼と一緒に来た
でも、別れた
きっかけはつまらないこと
でも、わたしのせい
今回は別の人と
それも新婚旅行
私は何も言わなかった
相手が勝手に決めた
直前に大きな台風が来たらしい
ホテルはあちこち修復中
そして、椰子の木は、葉がすべて無くなっていた
色んなものが浮いたプールの上で
蒼いシルエットは唯の棒だった
私は泣き出した
しゃがんで泣いていた
30分はたっただろうか
ごめんね やっぱりだめ
おろおろする相手を残し、荷物を持って空港へ
そして関空に着いた
タクシーを捕まえて
手を合わす
神様お願い
彼はいた
前にはいなかった猫と一緒に
おかえり
なによ、帰ってこなけりゃどうしたのよ
こいつがいるから
猫を指さす
あ、名前どうしよう
困ったな
名前?
彼は猫を呼んだ
私の名前だった