![]() | 64(ロクヨン) |
横山秀夫 | |
文藝春秋 |
昭和64年に起きたD県警史上最悪の未解決誘拐事件を巡り、刑事部と警務部が対立は先鋭化していた。長く刑事部に在籍した後、警務部配下の広報室に配属された三上は、娘の失踪という悩みを抱え、古巣との板挟みのに苦しみながら、事件の核心に迫っていく。
当に警察小説という感じで、重厚な筆致でヴォリュームも相当なものだが、プロットが頭に入った後は頁を捲る手がもどかしいほど一気に読めてしまう。警察組織内の対立、広報官として対峙するマスコミや被害者との関係、妻や娘との関係など、幾重ものジレンマを描く物語は重苦しいが、苦しみながらも信念を貫こうとする主人公の矜持や、彼が出会う魅力的な登場人物に次第に引きつけられる。特に、昔の事件と現在の出来事が結末に収斂して行く終盤の展開は見事。