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あ/た/ま

聴く読む観る買うの備忘録

疫病神 / 黒川博行

2014-11-18 | 
疫病神 (新潮文庫)
黒川博行
新潮社


 建設業界を専門に扱うコンサルタント、二宮は産業廃棄物処理場をめぐるトラブルに巻き込まれ、成り行きでコンビを組んだヤクザの桑原と二人で、トラブルの裏にある陰謀を追うハメになる。
 直木賞を受賞した「破門」に至るシリーズの第一作。アウトローな主人公コンビの会話の妙と、次々にピンチに襲われては切り抜けるテンポの良さが魅力。次回作も読んでみたい。

虚ろな十字架 / 東野圭吾

2014-10-24 | 
虚ろな十字架
東野圭吾
光文社


 11年前に、仮出所中の殺人犯に8歳の娘を殺された中原の元に、別れた妻の小夜子が殺されたという報せが届く。ライターになった小夜子の遺した文章を読んだ彼は、娘を殺された後の苦しみの中で別れた妻が、その後の11年間をどのように過ごしていたかを知り、その足取りを辿り始め、事件の意外な真相を知る。
 罪を償くことの意味や死刑制度の是非といった社会性の強いテーマを扱いながらも、事件の真相が顕になっていくプロセスを巧みに絡ませてエンタテイメント性を損なわずに仕上げているのは、さすが東野圭吾という感じ。今回も一気に読了してしまった。テーマが重いだけに読後感は爽やかではないが、驚きと納得のバランスもちょうどいい。
 

ニシノユキヒコの恋と冒険 / 川上弘美

2014-10-18 | 
ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)
川上弘美/td>
新潮社


 見栄えが良くて仕事も出来て、女達が望むことを自然に覚ることのできるニシノユキヒコ。様々な女達が彼に惹かれていくが、結局は彼のものを去っていく。関わった様々女の目線で彼を描く連作短編集。
 面白そうな話なのに、映画のタッチが今ひとつピンと来なかったので、小説の方を読んでみた。やはり物語としては面白い。結局ニシノの一人称が登場しないので、彼の心象が最後まで分からないのがモヤモヤするが、そうした掴みどころのないところが、彼を囲む女性の気持ちを表しているんだろう。

PRIDE 池袋ウエストゲートパーク10 / 石田衣良

2014-10-13 | 
PRIDE プライド―池袋ウエストゲートパーク〈10〉 (文春文庫)
石田衣良
文藝春秋


 シリーズ10作目。今回も時事の話題を織り交ぜながら、お馴染みのキャラが立ちまわって事件を解決してゆく。手法がすっかり出来上がっていて新鮮味はないが、キャラへの愛着でつい読みたくなる感じ。10作目ということもあり、1つの区切りを感じさせるラストだったので、次回作は進展開か。

女のいない男たち / 村上春樹

2014-10-11 | 
女のいない男たち
村上春樹
文藝春秋


 表題作に「女のいない男たちになるのはとても簡単なことだ。一人の女性を深く愛し、それから彼女がどこかに去ってしまえばいいのだ」とある通り、深く愛した女性が側にいなくなってしまった男たちの物語を集めた短篇集。派手な起承転結に翻弄されることもなく、淡々とした物語だが、1行目からすーっと入って来て、するすると読み進められるが、退屈でもない、独特の雰囲気が心地よい。中でも「イエスタディ」が1番気に入った。「木野」のバーも居心地が良さそうで、そんな居場所を持ってみたいし、「すべての女性には、嘘をつくための特別な独立器官のようなものが生まれつきそなわっている」という渡会の見解に同感。

教場 / 長岡弘樹

2014-10-09 | 
教場
長岡弘樹
小学館


 警察学校を舞台に、それぞれに屈折を抱えた警官の卵達が起こす事件と、全てお見通しで核心を暴いていく教官を描く連絡短編。エピソード毎に、なるほどと思う種明かしは用意されているが、エピソード間のつながりが殆どないせいか、少々薄い感じ。著者は異なるが、柳広司のD機関シリーズにも似たダークな雰囲気。

ペテロの葬列 / 宮部みゆき

2014-10-02 | 
ペテロの葬列
クリエーター情報なし
集英社


 義父が会長として君臨する今多コンツェルンで広報室に務める杉村三郎は、取材の帰りに乗り合わせたバスでバスジャックに遭遇する。事件は3時間ほどで解決したかに見えたが、犯人の老人の動機を追ううちに社会に巣食う大きな悪に辿り着く。「誰か」「名もなき毒」の続編。
 結構な長編だが、その長さを感じさせずにグイグイ物語に引き込んでいくストーリー運びはさすが宮部みゆきの真骨頂というところ。多くの読者の感想にラストの驚きが言及されており覚悟して読んだが、やはり後味が悪い。ここは是非、早く次回作を披露してこの気持を晴らして欲しいものだ。

ルーズヴェルト・ゲーム / 池井戸潤

2014-09-20 | 
ルーズヴェルト・ゲーム
池井戸潤
講談社


 一代で会社を中堅企業に育て上げた野球好きの社長が立ち上げた青島製作所野球部は、監督が主力選手を連れてライバル企業に移籍し、創部以来の危機を迎えていたが、更に不況で会社の業績が伸び悩み、聖域なきコスト削減の中で、存続すら危ぶまれる状況に立たされる。
 野球部の存亡をかけた戦い、ライバル会社との会社同士の戦い、社内の対立や、ライバル会社の工作など、様々な対立軸を描き、危機感や悔しさを前半で積み重ねておいて、スカッとした読後感を残すラストに収斂させていく筆致は今回も見事。筆者の基本パターンは過去の諸作で体験済だが、やはり気持ちいい。

ルーズヴェルト・ゲーム (講談社文庫)
池井戸潤
講談社

海賊とよばれた男 / 百田尚樹

2014-09-14 | 
海賊とよばれた男 上
百田尚樹
講談社


 出光興産を興した出光左三をモデルに、一人の実業家の生涯を描いた作品。私心なく信念を貫く仕事観、スケールの大きな人間力に魅了され、大部であることを忘れて一気読みしてしまった。面白い。


海賊とよばれた男 下
百田尚樹
講談社


海賊とよばれた男(上) (講談社文庫)
百田尚樹
講談社


海賊とよばれた男(下) (講談社文庫)
百田尚樹
講談社

夏の終わり / 瀬戸内寂聴

2014-06-16 | 
夏の終り (新潮文庫)
瀬戸内寂聴
新潮社


 妻子ある不遇の作家との8年に及ぶ関係に疲れ、年下の男とも関係を結ぶ知子。激しい業を抱えながらも、自分の気持ちに忠実に生きていく。
 満島ひかり主演の映画がとても気にいったので原作も読んでみた。当然、文字になったことで登場人物達の心象はより直接に描かれているが、そうした描写を読んで改めて、映画がこの世界を見事に醸し出していたと思う。小説と映画どちらを先に手に取っても楽しめる2作品だ。