goo blog サービス終了のお知らせ 

あ/た/ま

聴く読む観る買うの備忘録

清須会議 / 三谷幸喜

2014-06-08 | 
清須会議
三谷幸喜
幻冬舎


 織田信長が本能寺の変で命を落とした後、織田家の行く末を定める為に清州城で会議が開かれた。家臣達は互いの腹を探りながら、様々な駆け引きを繰り出しあう。
 映画の方が期待ほど面白くなかったので本の方も読んでみた。本で読んでみると、あの場面はああいう思惑を表現していたのか等々、色々と発見があり、映画を観た後でも楽しめる。逆に本を読んで映画を観ると、また違った楽しみがあったかも。

天使の柩 / 村山由佳

2014-05-06 | 
天使の柩 (天使の卵)
村山由佳
集英社


 家にも学校にも自分の居場所を見つけられずにいた高校生の茉莉は、ふとしたきっかけで画家の歩太と知り合い、彼の家に入り浸るようになる。最愛の人を亡くした傷を抱え続ける歩太と、母に捨てられ、祖母に疎まれた生い立ちから自分を肯定できない茉莉は、徐々に距離を縮めながら互いに癒やされるようになる。
 「天使の~」シリーズ完結編。前作から大分経っているので、思い出しながら読み進める感じ。過去の作品あってこそ生きる物語という気はするが、救いのあるラストに辿り着いたのは良かった。

ボックス! / 百田尚樹

2014-04-18 | 
ボックス!
百田 尚樹
太田出版


 成績優秀で特進コースに通う優等生の木樽は、幼馴染でボクシングに天賦の才を持つ奔放な少年鏑木と再会し、彼の誘いでボクシングを始める。始めはひ弱だった木樽は愚直に努力を続け、鏑木と争うまでに成長する。
 典型的な青春小説だが、主要登場人物のキャクターの描き分けが巧みな上に、場面展開のテンポも良く、ぐいぐい引き込まれる。感動を織り交ぜつつ、ラストやエピローグは爽快で読後感も良い。

ロスジェネの逆襲 / 池井戸潤

2014-03-24 | 
ロスジェネの逆襲
池井戸潤
ダイヤモンド社


 銀行からセントラル証券への出向を命じられた半沢直樹は、IT業界の雄、電脳雑伎集団からライバルの東京スパイラルを買収したいと相談をもちかけられる千載一遇のチャンスを得るが、親会社の横槍でアドバイザの地位を奪われてしまう。奇縁で東京スパイラルの社長の知り合った半沢は、思いもよらぬ奇策で親会社に対決を挑む。
 テレビドラマで半沢直樹シリーズに嵌り、続編を読了。舞台を証券子会社に移しても半沢の復讐劇の切れ味は相変わらず。題材がM&Aになったことで自分の仕事にも近づき、より臨場感を感じて一気に読んでしまった。散りばめられたエピソードのリアリティと、現実にはあり得ない程痛快な復讐劇のバランスが見事。

夢幻花 / 東野圭吾

2014-03-22 | 
夢幻花(むげんばな)
東野圭吾
PHP研究所


 大学院で原子力を学んでいた蒲生蒼太は父の三回忌で実家に戻り、兄の要介を訪ねてきた女子大生の梨乃に出会う。仕事が忙しく父の三回忌も出席できない兄が身分を偽ってまで梨乃のブログからは黄色い花の写真を削除させようとしたのは何故なのか、梨乃の叔父が殺害された事件にも黄色い花が関わっているのか、2人は真相を探ろうとする。
 シリーズものに比べると、登場人物の書き込みが浅いことは否めないが、散りばめた伏線を見事に回収してラストに収斂させる構成力は安定感たっぷり。サラッと読めて楽しめる。

祈りの幕が下りる時 / 東野圭吾

2014-03-18 | 
祈りの幕が下りる時
東野圭吾
講談社


 小菅のアパートで女性の腐乱死体が発見される。警視庁捜査一課の松宮は被害者が亡くなる直前に中学の同級生に会っていたことを突き止めたものの捜査に行き詰まり、従兄弟の加賀恭一郎に意見を求める。事件に関わることを躊躇っていた加賀だが、遺留品の中から見つかったメモと彼の母親の失踪の謎の意外な共通点が見つかる。
 いつも楽しみにしている加賀恭一郎シリーズ諸作品の中でも屈指の出来。捜査対象の事件と加賀の抱える過去が次第に結びついていく構成、犯人が犯行に至った経緯、シリーズで長く謎のままになっていた加賀と両親の顛末、どれを取っても納得感が高く、読み応えがある。ここ数作の流れに決着が着いて、次の展開がまた楽しみだ。

風が強く吹いている / 三浦しをん

2014-03-15 | 
風が強く吹いている (新潮文庫)
三浦しをん
新潮社


 ボロボロの下宿、竹青荘に住む変わり者の学生達が、寮長の発案で箱根駅伝をめざす物語。寮長のハイジとかれに見初められた新入生の走意外は素人ばかりの集団だったが、皆の個性を知り尽くしたハイジの励ましとアドバイスで徐々にその気になり、いつしか本気で走り始める。
 素人集団が箱根駅伝をめざすという荒唐無稽な物語だが、登場人物たちの魅力で一気に読んでしまう。定評も頷ける傑作。仲間たちを一見不可能なことに駆り立てていくハイジの手管、ストイックでどこか突き抜けた走、変わり者ばかりだが悪人のいない寮生達、誰をとっても魅力的。来年から箱根駅伝を見る目が変わりそうだ。

火の粉 / 雫井脩介

2014-03-07 | 
火の粉 (幻冬舎文庫)
雫井脩介
幻冬舎


 裁判官だった梶間は、一家惨殺事件の容疑者として起訴され、死刑を求刑された武内に無罪の判決を下す。数年後、退官して大学教授になった梶間の隣家に武内が引っ越して来る。武内は紳士的な態度で梶間の家族と打ち解けていくが、次第に異変が起こり始める。
 悪い予感がみるみる膨らんで疑心暗鬼に至る過程の葛藤、いよいよ悪者が明らかになった後に追い詰められるような感覚、いずれも頁を捲る手がもどかしいような筆致は見事。犯人の異常さ故に動機の説得力は薄いがスリルは十分。

ふがいない僕は空を見た / 窪美澄

2014-02-26 | 
ふがいない僕は空を見た
窪美澄
新潮社


 人妻とのコスプレセックスに耽る高校生、姑のプレッシャーと不妊治療に悩む主婦、兄はひきこもり彼との付き合いも上手くいかない女子高生、貧しさに耐えながら認知症の祖母と暮らす高校生、助産院を営み独りで高校生の息子を育てる主婦、閉塞感を抱えながらも前を向いて生きていく人達の群像劇。
 映画が面白かったので、小説の方も早速読んでみた。映画を先に観ているので展開は分かっているが、小説の方が視点の違いがより鮮明に感じられる。主人公はみんな悩みを抱えているが、物語としては暗くなり過ぎていないので読み易いし、リレー形式で視点が変わりつつも1つの大きな物語として継っている構成も良い。今思い返してもあの映画はこの世界を巧みに映像化していたなぁと関心。