いつか読みたいと思いながら先送りしてきた一冊。いつもの古本屋さんで目にとまり、分厚い愛蔵版にしばし躊躇したが、結局購入。
平安時代の僧、円仁「入唐求法巡礼日記」からはじまり、江戸時代末期の川路聖謨「下田日記」まで、七十七の日記が紹介されている。著者の狙いは、この膨大な日記の精査から日本人と日記の関係を解き明かしていこうということなのだが、私のような不勉強な者には、純粋に日本古典へのナビとしての意味合いの方が強い本だった。
「とはずがたり」「うたたね」における女流作家のあからさまな記述には新鮮な驚きを感じたし、宗祇「白川紀行」「筑紫道記」が芭蕉に続くことなども初めて知った。一方、芭蕉の日記を手厚く扱っているのに引き換え、一茶を割愛したことについて著者は、「幕末の日記の流れにうまく入らなかったため」と弁明している。私としては、「菅江真澄遊覧記」が取りあげられていないのにも物足りなさを感じるのだが、きっと同じ理由なのだろうか・・。
ともあれ、日記を書くという行為の持つ、さまざまな意味について考えさせられる読書だった。