読書備忘録

日々の読書メモと万葉がらみのはなしあれこれ・・になるかどうか

金両基「物語 韓国史」

2009-08-30 10:16:04 | Weblog
 同じく、お盆休みまとめ読みから・・。
 面白い本だった。超古代の壇君神話から始まり、古代三国時代を経て高麗王朝、朝鮮王朝、そして韓日併合から独立までを、300ページ足らずでわかりやすくまとめてある。
 とはいっても、その大半は古代三韓三国に費やされており、高句麗・百済・新羅の興亡史といって良いかもしれない。もし、日本書紀と古事記をもとに韓国人にわかりやすい古代日本史をまとめようとしたら、こんな本になるのではないだろうかなどと想像しながら読んだ(そのような本のニーズが韓国人にどれほどあるかは別にして・・)。

 韓国には、日本のアマテラスや神武神話に類似する壇君神話がある。要約のさらに要約をすると、朝鮮の国は天孫である壇君によってBC2,333年に開国されたというものである。天帝の子と熊の変わり身の女性との間に生まれた檀君は、1,900歳生きたといわれている。そして晩年、周王即位の年に朝鮮に封じられた箕子(きし)に王位を譲り、神となったと・・。(これはきっと、中国の史書にある箕子の伝説との整合性を図ったものか。)
 その箕子がひらいた国を箕子朝鮮とよび、それが衛氏朝鮮に滅ぼされ、さらに衛氏が亡びるころ、半島に三つの勢力が台頭する。高句麗・百済・新羅である。ようやく神話時代から決別し、歴史時代に入り、日本との関係も少し見えてくる。日本でいえば、卑弥呼の少し前くらいだろうか。このあと数百年、中国からの被侵略と三国同士の熾烈な領土奪回の興亡が、延々と続くことになる。

 日本古代というのは、このような東アジアにおける緊張感の外縁にあった。古代を知る上で、これら興亡史に日本古代史を当てはめていくことのほうが、その逆よりは正確なのではないか、そんなあたりまえのことを再認識させてくれる一冊だった。




大島建彦「咄の伝承」

2009-08-24 19:41:56 | Weblog

 お盆休みまとめ読み、数冊のうちの一冊。
 本書の著者によると、日本古代からの民間文芸を大まかに分けると、ウタ・コトワザ・カタリ・ハナシの4つに分類されるという。本書では、そのうちの「ハナシ(咄)」を取り上げ、古代から現代に至る咄の変遷についてまとめている。

 ただ、問題提起だけして見解を示さないというのは学者論文によくあるパターンで、もう少し個のテーマに踏み込んだ論述を読みたかった。たとえば、「私にとって関心の深いのは、『万葉集』にあらわれたハナシの上手が、どのような境遇におかれていたかということである」などと問題提起をしながら、それが帰化人の一族であったであろうこと以上の記述はみあたらないのは残念至極。皮肉ではあるが、古代史においてひとつの見解を述べるということ、そのことの大変さが窺える、というべきか・・。


直木孝次郎「古代史の窓」

2009-08-15 16:42:48 | Weblog


 お盆休みにまとめ読みと思い、古書店から5冊ほど買い込んだうちの1冊。18の古代史論考で構成されている。「第三編 大化改新とその前後」に、古代朝鮮における諜報活動についての記述があり、興味深く読んだ。
 もともと間諜の活動などというのは歴史の表に残りづらいものなのだが、古代朝鮮の政情を記す「三国遺事」「三国史記」あるいは「新唐書」の記述を元に、その真実のあぶりだしを図っている。孫子の兵法や「六韜」を地でいくようないくつかの記録を読むにつけ、古代朝鮮三国の政治状況のきびしさが伝わってくる。

 それにひきかえ古代日本はというと、間諜の活動に関する記録がきわめて少ないと著者は指摘する。その理由として中国及び三韓と海を隔てていること、さらにはそのおかげでヤマトを中心とする緩やかな連合首長制を敷きやすかったことをあげる。
 ただ、スケールは小さいがまるでないわけでもない。古人大兄の謀反を中大兄皇子に知らせた吉備臣垂などは中大兄の間諜じゃなかったか、あるいは大津皇子の歌に出てくる津守連通も、間諜を使って大津の身辺を探っていたのではないかという推定は成り立つ、とも著者は指摘する。 
 また、日本書紀推古9年、新羅から差し向けられた「迦摩多」という間諜をとらえたとする記事も紹介し、あわせて日本忍術の源流をこのあたりに求める説についても、疑問符つきながら触れている。

 古代史はとにかくわからないことだらけである。その古代史に著者なりの“窓”をあけたいとの思いがこの本となったという。わたしのような読者にとってはありがたい“窓”である。


政権交代選挙

2009-08-10 07:59:07 | Weblog

《政治:politics》
主義主張の争いという美名のかげに正体を隠している利害関係の衝突 わたくしの利益の為に国事を運営すること
***(ビアス「悪魔の辞典」より引用)


巷は ビアスの冷笑にピタリと符合を感じる政治状況がつづいている
政党のマニフェストは
いいことずくめのたれ流し
まるで家電量販店の安売り合戦

他人の幸せを自分の幸せと感じられる社会
政権交代予定の政党のキャッチフレーズ
なんとも耳に心地のいいフレーズだが
それを資産数百億の名家の御曹司にいわれても 実感はわかない
だいいち そんな社会はそら恐ろしい

いいことずくめの連呼が終わって
政権交代がなって
政界再編がなって
大山鳴動鼠なんとやら
気がつけば ビアスの次のような定義が肩で風を切っていることだろう


《大衆:public》
法律制定の諸問題で無視して差支えない要素