読書備忘録

日々の読書メモと万葉がらみのはなしあれこれ・・になるかどうか

小野寺信子・河村和美・高田則雄「続 浦河百話」

2013-08-01 10:19:47 | Weblog


 北海道の日高地方に、浦河町という人口14,000人ほどの町がある。本書は、この町で1991年に刊行された「浦河百話」の続編である。前作が、古くは江戸時代から戦前までの古老からの聞き取り郷土史として好評だったことを受け、こちらでは一部戦前の拾遺と、終戦から昭和60年代くらいまでの話が百話まとめられている。
 名馬シンザンや遠洋漁業基地など、この町特有のテーマをはじめ、「産婆さんの時代」や「砂浜の運動会」や「テレビ時代」等々、百話に通底する“北海道の戦後体験ノスタルジー”を堪能することができた。なかでも、第九九話「そして、誰もいなくなった -浦河町戦後開拓の帰趨」は、限りなく近い環境に生まれ育った者として、深い感慨をもって読んだ。

 5月の末、この本の執筆者の一人である知人から「予定より遅れましたが、発行されましたよ♪」との案内を受け、さっそく近くの大型書店で購入した。その日は、ちょうど近所の小学校の運動会の日で、小学校の交差点を渡った向かい側は全国展開の弁当屋さんなのだが、その前に大行列ができていた。「運動会のお昼を弁当屋さんでかぁ・・」と、なんともいえない気持ちで家に帰った。そして、この本を読み終えた今思う。食べるものにも着るものにも不自由しながら日々を懸命に生き抜いた人々の心に描いたしあわせの行きつく先は、ひょっとして、あの弁当屋さんの行列だったのだろうか・・、などと。