今年の春から夏にかけて読んだ「1Q84」のまとめを書こうと思い、本書を久しぶりに読み返した。「一九九五年三月二十日の朝に、東京の地下でほんとうに何が起こったのか?」。本書は、このことの検証のための著者インタビューで構成されている。ある日突然、思いもしない激しい暴力を受けなければならなかった被害者およびその家族の生々しい告白が、延々と続く。
このインタビューのあとがきで、著者は「あちら側」と「こちら側」についての論理を展開している。要約すると、オウム真理教という「あちら側」の「ものごと」を対岸から双眼鏡で眺めるだけでは何も見えてこない、その「ものごと」は、自分というシステム内でおこったことなのではないか、というものである。もう少しいうと、「こちら側」のエリアの地面の下に隠されているもの=アンダーグラウンドの検証こそが必要なのではないかと。
付箋箇所だけですまそうと思ったのが、結局読み込んでしまった。何度読んでも重い・・。一つひとつのインタビューが、人が生きる根源への問いかけに聞こえてきそうな、そんな本である。