上・足尾銅山争議「頑迷なる古河に猛省を促す」(1921.3)
この歌は古いだろうか。私には全然そうは思えない。今の日本の労働運動の方がよほど遅れているのではないか。今の日本の労働運動は、この足尾銅山ラッパ節のように、現に今まさに、大手を振って派遣制度を合法化させ、非正規労働者を大量に産み出し、低賃金で酷使し、抑圧している悪逆非道の経営者や資本家や政治家どもを「人たる道を踏みにじり平民の嘆きの叫び声 知らぬふりする穀潰し」「弱き我等をふみ倒す 義理も情けも知らぬ鬼」と糾弾しきっているだろうか。非正規労働者や派遣労働者、外国人労働者など職場で差別され苦しめられている同僚たちの悲惨な実態をこの歌のように暴露して暴露して暴露し尽くしているだろうか。今の日本の労働運動に一番欠けているものがここにはあると思う。この歌から学ぶことは多いと思う。
足尾銅山ラッパ節:永岡鶴蔵:詞 唖蝉坊:曲/ 土取利行(唄・演奏)
(Youtubeの説明)
足尾銅山ラッパ節;永岡鶴蔵(詞) 添田唖蝉坊(曲)
土取利行(唄・演奏)
永岡鶴蔵は元鉱山の工夫、
キリスト教と社会主義を知り労働者救済のために生き、
各地の鉱山で労働運動を南助松と共に推進し、
片山潜の影響で鉱山労働者の全国組織を決意し
足尾銅山に移り足尾暴動へと発展する運動を展開したが、
その後治安警察法の下、運動を阻止される。
労働運動を呼びかける際に唄っていたのが
当時流行っていた唖蝉坊のラッパ節に自らの詞をつけた唄である。
この歌は最初平民新聞に発表された1906年〜1907年の作
足尾銅山ラッパ節:永岡鶴蔵:詞 唖蝉坊:曲/ 土取利行(唄・演奏)
一
欲という字に眼が潰れ 人たる道を踏みにじり
平民の嘆きの叫び声 知らぬふりする穀潰し
二
古河さんかご主人か イエイエあいつは違います
弱き我等をふみ倒す 義理も情けも知らぬ鬼
三
足腰立つうちゃ酷き使い 病気やケガをした時は
南京米が二升五合 ご主人呼ばわりしゃらくせー
四
哀れ撰工(鉱)の女工さん 朝は早くて晩は五時
長い時間を働いて 貰うたお金銭(おあし)は十二銭
五
風は冷たし腰は冷え 指はちぢむし皮は剥げ
爪はなくなる肉がでる 撰工女はつらいもの
六
役人さんや監督は 手足あたため腰をかけ
寒さ痛さは知らぬとも 少しは女工を思いやれ
七
腹が立たぬか鉱夫さん 年が年中働いて
盆や正月きたとても いつも変わらぬボロ着物
八
人夫引らにだまされて 来てみりゃビックリ下飯場
荷物みんなあずけられ 飛ぶに飛ばれぬ籠の鳥
九
籠の鳥なる食い物を よくよく吟味するけれど
我等堀子の食い物は 塩のまぜたる空っけつ
十
毒と知りつつ精錬で 臭き煙に責められて
死ぬほど稼いで三十二銭 これがほんとの生地獄
十一
上席好い顔せんために 我々共を酷き使い
飯くう時間もやかましく 今に見ておれ此の犬め
十二
好きで淫売(だるま)をするでない 嫁にいかれず飯くえず
というて仕事もない故に 涙こぼしてこの苦労
十三
淫売(だるま)すれども心まで まさか淫売になりません
思う殿御があるなれば 必ず操を守ります
十四
我々この歌うたうのは 面白おかしでするでない
心のそこの血の涙 割って見せたい腹のうち