先輩たちのたたかい

東部労組大久保製壜支部出身
https://www.youtube.com/watch?v=0us2dlzJ5jw

鶴彬(つるあきら)の川柳紹介②

2010年03月27日 13時18分37秒 | 鶴彬(つるあきら)の川柳

生きてゐるな解雇通知の束がくる

    翻る時を待ってる組合旗

        たべものが尽き穴を押し出る蟻の牙

鶴彬死亡1年前、28歳時の作品後半
1937年(昭和12年)この年、盧溝橋事件等日本軍中国で総攻撃開始。12月13日南京虐殺。12月15日労農派400名を逮捕(第一次人民戦線事件)。全国で千人針・慰問袋さかん。
1937年(昭和12年)
・金の卵を産む鳥で柵に可愛がられる
・棚[柵]を越せぬに翼になれ生む外はな[い]金の卵
・産卵せねばしめ殺す手で餌をあてがわれ
・奴隷となる子鳥を残すはなかい交尾である
・重税の如く奪はれる金の卵を産み疲れ
・死なないといふだけの餌でつぶされる日が迫り
・産み疲れて死んでやれ飼主めひぼにしならう
・増税の春を死ねない嘆願書
・ゼネストに入る全線に花見客
・人民に問へばゼネラルストライキ
・アゴヒモをかけ増給を言へぬなり
・祭政一致と言ふてゆるさぬメーデー祭
・5月1日の太陽がない日本の労働者
・『病欠』で来たハイキングのメーデー歌
・空白の頁がつゞくメーデー史
・議事堂でみたされぬ飢がむらがる観音堂
・フジヤマとサクラの国の餓死ニュース
・エノケンの笑ひにつゞく暗い明日
・男らは貧しくひとり,花嫁映画みるばかり
・「ワリビキ」へ貧しさ負ふて列ぶ顔
・クビになる恋と知りつゝする若さ
・殴られる鞭を軍馬は背負わされ
・妾飼ふほど賽銭がありあまり
・闇に咲く人妻米のないあした
・バイブルの背皮にされる羊の死
・泥棒と知れ花魁の恋やぶれ
・喰ふだけのくらしに遠いダイヤの値
・税金のあがったゞけを酒の水
・メーデーのない日本のストライキ
・要求を蹴りアゴヒモがたのみなり
・歯車で噛まれた指で書く指令
・翻る時を待ってる組合旗
・生きてゐるな解雇通知の束がくる
・裏切りをしろと病気の妻の顔
・失業の眼にスカップの募集札
・スカップが増えた工場のすゝけむり
・缶詰にする暴力団を雇ひ入れ
・今からでもおそくないといふ裏切りの勧告書
・総検(総検挙)にダラ幹だけがのこされる
・弾圧がいやならとれといふ歩増し
・くらしには足らぬ歩増しで売る争議
・裏切りの甲斐なく病気の妻が死に
・釈放を解雇通知が待ってゐた
・ダラ幹が争議を売ればあがる株
・正直に働く蟻を食ふけもの
・蟻たべた腹のへるまで寝るいびき
・蟻食ひの糞殺された蟻ばかり
・蟻食ひの舌がとどかぬ地下の蟻
・蟻の巣を掘る蟻食ひの爪とがれ
・やがて墓穴となる蟻の巣を掘る蟻食ひ
・巣に籠もる蟻にたくわえ尽きてくる
・たべものが尽き穴を押し出る蟻の牙
・どうせ死ぬ蟻で格闘に身を賭ける
・蟻食ひを噛み殺したまゝ死んだ蟻
・パンを追ふ群衆となって金魚血走ってる
・工夫等の汗へすぎてく避暑列車
・昂奮剤を射された羽叩きでしゃもは決闘におくられる
・稼ぎ手のをんどりを死なしてならぬめんどりの守り札
・決闘の血しぶきにまみれ賭けふやされた銀貨うづ高い
・遂にねぐらをあげて斃れるしゃもにつづくと妻どり子どりのくらし
・勝鬨(かちどき)あげるしゃもののど笛へすかさず新手の蹴爪飛ぶ
・最後の一羽がたほれて平和にかへる決闘場
・しゃもの国万才とたほれた屍を蠅がむしってゐる
・をんどりみんな骨壺となり無精卵ばかり生むめんどり
・をんどりのゐない街へ貞操捨て売りに出てあぶれる
・骨壺と売れない貞操を抱え淫売どりの狂ふうた
・稼ぎ手を殺してならぬ千人針
・銀針に刺された蝶よ散る花粉
・避暑客の汗を一人で流す火夫
・枕木は土工の墓標となって延るレール
・泥濘をよける気のない程疲れて帰る
・泥濘の長屋へすくむ視察団
・招集兵士産待つ子の夢を見る
・花園の蜜をあつめて奪られる箱を与えられ
・蜜箱空っぽにする手を知らず稼ぐばかりの蜂である
・蜂に蜜吸はれつくした花園凋(しぼ)んで散って咲かない
・新しい花園を襲ふ働き蜂の剣の毒
・襲ふてくる蜂の毒剣へ花園の蜂も毒の剣
・蜂ら刺しちがへて死んで花園を埋めてる

最終稿
『川柳人・281号』(11月15日発行)
・高梁実りへ戦車と靴の鋲
・屍のゐないニュース映画で勇ましい
・出征の門標があってがらんどうの小店
・万歳とあげて行った手を大陸へおいて来た
・胎内の動きを知るころ骨(こつ)がつき

      手と足をもいだ丸太にしてかへし


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