刈れ芝よ!団結をして春を待つ
インテリが疲れて女土工起ち
暁をいだいて闇にいる蕾(つぼみ)
鶴彬(つるあきら)
川柳作家1909年1月1日生まれ、1938年9月14日死亡。享年29歳
石川県生まれ。高等小学校卒業後勤めた機屋の倒産により大阪に出る。労働運動や反戦運動と出会う。プロレタリア川柳に共鳴。石川県に帰り全日本無産者芸術連盟(ナップ)支部を結成するが、間もなくプロレタリア川柳会員として検挙される。
1930年(昭和5)、金沢第七連隊に入営するも軍隊内で反戦活動・赤化事件で軍法会議にかけられ収監、拷問を受ける。刑期1年8ヶ月、二等兵のまま除隊するが常に警察の弾圧と圧力を受け続ける。
中国への全面侵略が開始された盧溝橋事件の1937年(昭和12)に『川柳人・281号』を発行。
・高梁実りへ戦車と靴の鋲
・屍のゐないニュース映画で勇ましい
・出征の門標があってがらんどうの小店
・万歳とあげて行った手を大陸へおいて来た
・手と足をもいだ丸太にしてかへし
・胎内の動きを知るころ骨(こつ)がつき
その直後特効警察に逮捕される。 1938年、国家総動員法。9月14日赤痢で死亡。享年29歳。ベッドに両手を手錠で括りつけられていたという。
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<時代>
1909年1月1日石川県に生まれる。この年、伊藤博文が安重根により、殺される。翌年、韓国併合。
1915年、第一次大戦時、日本は中国へ「二一カ条の要求」。
1917年、ロシア革命
1918年、米騒動
1923年、関東大震災(朝鮮人虐殺・亀戸事件・大杉栄虐殺)
1925年、治安維持法
1924年、15歳で初めて投句する。この年,宮沢賢治が「春と修羅」を発表。
1928年、張作霖爆殺謀略事件。共産党員大量検挙(3.15事件、翌年4.16事件)
1929年、世界恐慌 小林多喜二「蟹工船」発表(翌年、不敬罪で起訴)
1930年、全国各地で労働者決起。ストライキ頻発する。亀戸モスリン女工のたたかい。大阪、岸和田紡堺分工場の日朝女性労働者の共同闘争・・・・。
(ストライキ参加者1928年43,337名、29年77,444名、30年81,329名、31年64,536名、32年54,782名)
鶴彬は、この年、金沢第七連隊に入営。軍隊内で反戦活動・赤化事件で軍法会議にかけられ収監、拷問を受ける。刑期一年八ヶ月、二等兵のまま除隊するが、その後は常に警察の監視・圧迫を受け続ける。
1932年、5.15事件 「満州国」建国宣言
1933年、国際連盟から脱退、小林多喜二築地警察の拷問による虐殺、享年29歳。
1936年、2.26事件
1937年(昭和12)、日中戦争(盧溝橋事件~南京占領~)へ全面突入
11月15日に『川柳人・281号』を発行。その直後12月3日に待ち伏せしていた特効警察に逮捕され,野方署に留置。
1938年、国家総動員法。9月14日死亡。
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鶴彬の川柳紹介①死亡1年前、28歳時の作品前半
1937年(昭和12)
・春を得つ地熱に続く休火山
・地熱燃え怒り地球は春にめざめたり
・春の太陽へ廻る地球の奴隷達
・地球まだ老ひぼれず奴隷の春近し
・解放の前夜-その闘ひに死ぬ奴隷達
・太陽のベルト自由の春動く
・シキの底ひと息ごとの肺の煤
・セメントでこわばった白い肺で血も吐けないのだ
・鉄粉にこびりつかれて錆びる肺
・もう綿くずを吸へない肺でクビになる
・サナトリウムなど知らぬ長屋の結核菌
・紡績のやまひまきちらしに帰るところにふるさとがある
・夜業の煤煙を吸へといふ朝々のラヂオ体操か
・息づまる煙下の下の結核デー
・タマ除けを産めよ殖やせよ勲章をやろう
・この安日給で妻をもたねばクビになるばかり
・これからどうして食ってゆこうかと新婚の夜を寝つかれず
・免税になるまで生めば飢死が待ち
・葬列めいた花嫁花婿への列へ手をあげるヒットラー
・種豚にされる独逸の女たち
・ユダヤの血を絶てば狂犬の血が残るばかり
・ソビヱットを奪へと缺食の子をふやし
・鉱毒の泥海をダムはもりあげてゐやがった
・決潰する夜のダムの真下の鉱夫村
・きのうまでとかした毒泥あびせかけられ
・貧しさの中の歓楽の夫婦の姿で生き埋めとなり
・救いをよぶ咽喉ふさがれてしまふ硫化泥よ
・泥海にふた親のまれた子がゐる子をさらわれた母がゐる
・毒泥を呑んでつかんで悶絶の姿にされて凍ってる
・いまは仲間の死骸掘り探すシャベルとなった
・うらみ呑んだ仲間の死骸が幾百とゐる蒼ずんだ毒泥の底
・掘り出された屍のうらみ生き残された子にうづく
・生き埋めのうらみ買い占めてやらうといふ見舞金だった
・凶作つづきの田は鉱毒の泥の海
・十年はつくれぬ田にされ飢えはじめ
鶴彬ドキュメント映画「こころの軌跡」
公式サイト
http://tsuruakira.jp/
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