日本社会には、触れてはならないとされる多くのタブーが存在している。それは、皇室のことだったり、政財界の権力構造の問題だったり、戦後の日本外交の実態だったり、闇社会と政財界との関係だったりするが、安倍の蓋と呼ばれるものが元首相の死亡によって少しは外れたかもしれないと思っていた矢先、亡くなったジャニー喜多川氏が、所属タレントの複数の少年達に性加害行為をしていたということが、BBCの報道以降、我が国のごく一部のマスコミでも報じられはじめた結果、ついに、ジャニーズ事務所も問題の存在を認めたとのこと。文春報道などもあり、かなり以前から同氏がそのような行為を行っているのではないかという噂を知っていたものの、忖度が横行し、ジャニタレに依存しているテレビ業界などを抱える大手のマスコミにあっては、つい最近までは、そのことを真正面から取り上げようとはしなかった。これは、24時間テレビに象徴されるように、ジャニタレを除外しては番組自体成り立たないという思惑もあっただろうし、マスコミやテレビ業界など自体も、立場の弱いタレントや関係者に対する権力者によるセクハラ行為に目をつぶってきたということすら推測されかねない。
安倍べったり記者による性加害とされる行為についても、当時の警察幹部による現場への介入があったとかも一部で報じられているし、細田衆議院議長に報道関係者へのセクハラ行為があったのではないかと追及されても、彼は未だに議長職に留まっているし、これが、日本の現状でもある。こういったことから、日本は、未だにセクハラ、パワハラ大国でもあると言わざるを得ないのではないか。そして、マスコミは、自らの保身と、経営に関する影響を考慮して、こういったことを敢えて報道しないか、報道しても少なくしようとしてきた。その一つの表れがジャニーズ問題であった。しかし、「水に落ちた犬は叩け」と言われるように、今回、ジャニーズ事務所が問題の所在を認めたことで、堰を切ったように報道されるかもしれないが、今朝は新聞休刊日でもあり、ジャニーズ事務所への忖度もあるだろうし、まだ、報道の仕方は少ないままである可能性もある。そもそも、報道の自由とか謳っていても、我が国のマスコミは、記者会制度に縛られ、大手の広告代理店などにも忖度しており、過去に公正な報道がされてきたのか疑問がある。その結果、信仰の自由を振りかざす宗教団体への報道でも、何か事件が起こるまでは制限されて来たし、東京オリンピックに絡む汚職事件なでの問題もそうではなかっただろうか。マスコミの取材現場が問題を把握しても、自社幹部が報道しないようにと圧力をかけてきたということもあっただろうし、事件報道などでは記者会制度への忖度によって敢えて報道しないということもあっただろう。
しかし、今の時代は、SNS時代であり、隠そうとしても事実が暴かれる時代でもある。芸能界についても、枕営業や性加害が当たり前に行われてきたということが言われている。他の国では、Me-too運動も行われているが、我が国では、タレントにかかる性被害の問題などは半ばタブーとされてきて、その実態が明らかではない。被害者であっても、堂々と声をあげ、そのことによって干されたり、タレント活動に影響が出ることのないように、視聴者である我々自体も反省する必要がある。今回、ジャニー氏から被害を受けたと勇気を出して声をあげたタレントには、マスコミ各社は自ら反省する上でも、あえて番組等に起用して欲しい。彼ら被害者も、才能があるのなら忖度なく公正にテレビに出して欲しい。一方、その他のジャニーズタレントについては、被害の有無に関わらず、今になっても一切このことに口を噤んでいるとするなら、少なくとも報道番組などには関わらせるべきではない。
なお、午前6時のテレビ各局のニュースを見たが、NHK以外は、ジャニーズ事務所社長の謝罪メッセージを取り上げたところは見なかった。流石、NHKと思う一方、民報各局の腰の引け具合にガッカリした。この問題は、一芸能事務所の問題だけではなく、それを敢えて報道しない、或いは、極力少なく報道するという各メディアの問題でもあると考えるからである。