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舞い上がる。

日々を笑い、日々を愛す。
ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

映画「スウィート・シング」観てきました。

2021-12-29 23:39:31 | Weblog




シネ・ウインドで「スウィート・シング」を観てきました。

貧困な父子家庭で暮らすビリーとニコの姉弟は、父がアルコール依存症で入院、母親の彼氏の家に移り住むと虐待され、二人で逃亡の旅に出る。
社会の厳しさを描いた物語ですが決して感動ポルノにせず、一人一人を生きた人間として描き、毎日の中でのささやかな楽しみなども描いた良作だと思いました。

例えば冒頭、父親がアルバイトをして貯めたお金で二人にささやかなクリスマスプレゼントを買ってあげる場面は、そんな不器用な優しさに本当にぐっときてしまったし、ビリーとニコの喜びも伝わってきた。
だからこそ、そんな父親がアルコール依存症で暴れてしまう場面の、「どうして…」というビリーとニコの悲しみも伝わってくるという、リアルで深い人間描写によって、気持ちが伝わってくる映画でした。

その後も悲劇的なことばかり起こるのだが、なんというか、それを「こういうの悲しいよね…」と最初から決めつけて描くのではなく、突然降りかかった現実に翻弄される右も左も分からない子供の目線で描いているのがすごく印象的でした。
だからストレートに悲劇だけを描くのではなく、時には楽しさもある、そういう部分もしっかり描いていたのが、すごくリアルでした。

逃亡の旅の途中で子供達は時に犯罪もしながら生きていくのですが、そこに至るまでの背景もしっかり描くし、正義や悪ではなく、生きた人間として子供達を描いていたのがすごく印象的でした。
映画を見ながら、こういう子供達がちゃんと守られる社会であってほしいと思うと同時に、彼らの力強い生命力に感動もしてしまうという、色々な気持ちが自分の中に起こりました。

この感じ、この日本で言うと是枝裕和監督の「万引き家族」とかに近いかもしれません。
また、貧困な立場の人間を愛を込めてリアルに描くという意味で、ポン・ジュノ監督の「パラサイト 半地下の家族」に通じる部分もあったかもしれません(特に、豪邸に忍び込む場面でそれを感じた)。

冒頭にはアレクサンダー・ロックウェル監督からメッセージもあり、「日常の輝きを描きたかった」という言葉も心に残りました。
だからやっぱり、ただ悲劇を描くのではなく、生きた人間を描いた映画なんだなあと思いました。

あとで調べて知ったのですが、ビリーとニコの兄妹は監督の実子、2人の母親は監督のパートナーが演じているらしいです。
だから、ある意味監督の私小説的な映画なのかもしれないし、だからこそここまでリアルで深い人間描写が出来たのかもしれません。

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