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舞い上がる。

日々を笑い、日々を愛す。
ちひろBLUESこと熊谷千尋のブログです。

渡部佳則写真集「古町 '99 2000」を読みました。

2021-07-02 22:15:53 | Weblog
一つ前の記事に、6/30(水)で営業を終了したBOOKS fsさんについて書きましたが…
BOOKS f3さん、今までありがとうございました!





そんな閉店間際のBOOKS f3で購入した、渡部佳則写真集「古町 '99 2000」。
この本、さっそく読んでみたのですが、本当に素晴らしかったので、感想を書いていきます。

タイトルからも分かる通り、この本が出版されたのは2000年、著者である写真家の渡部佳則さんは、20世紀の終わりという時代の変わり目に、今までの時代を振り返るために、生まれ育った古町に出かけ、人に出会い、それを写真に撮ったそうです。
で、その写真集を20年以上経った今見てみると、まさに時代を映した記録にちゃんとなっているんですよね。

子供を背負って買い物をする親子、当時の流行のファッションに身を包んだ若い女性や女子高生、路上ミュージシャン、夜中の酔っ払い…人々から感じるそれぞれの生活。
特に、当時から開催されていた「古町どんどん」の賑わいに、本当に歴史のあるお祭りなんだなあと毎年行っていた自分は嬉しくなりました。

最近では見かけなくなったショーウィンドウのマネキンや、数年前に潰れた成人映画館「大要」。
遊び心で撮っているような町のちょっと面白い一コマが、貴重な歴史の記録となっています。

10代の若者達、一人一人の顔写真の章も、当時の若者の流行のファッションの貴重な記録になっていて、当時はまだ中学生で古町に遊びに行く習慣がなかった自分は、やっぱり当時は同じ新潟に住んでいても古町は流行の最先端だったんだなあと感じました。
また、一人一人に聞いた将来の夢も載っていて、時代が違っても期待と不安を抱えながら生きる若者達の気持ちはあまり変わらないのかもしれないなあと思ったりもしました。

新潟まつりの賑わいの写真を見ると、当時はこんなに古町も新潟まつりも盛り上がっていたんだなあと、コロナ禍の今に見ると特に実感します。
また、ただのお祭りの賑わいだけでなく、警備をする警察官や、祭りの終了後の掃除をする人達の写真もちゃんと撮っているあたり、人々の生活にしっかり密着しているんだなあと感じました。

雪の中でも仕事をする人達、街角でスケボーで遊ぶ若者達、町中で遊び場を見付けて遊ぶ子供達、交流するお年寄り達…古町には本当にあらゆる生活をしている老若男女が行き交う場所です。
また、町中には色々な犬や猫を飼っている人達もいて、犬や猫を通して人々の生活が見えてくるのも面白いし、今でも犬や猫の散歩をしている人達がいるなあという、そういう意味でも歴史を感じました。

中でも一番印象的だったのが、1999年から2000年へのミレニアムのカウントダウンのイベントの写真。
当時、僕は祖父母の家で2000年を迎えたので古町のことは全く知らなかったのですが、当時はこういうイベントが開催されていたんだなあと知れて面白かったです。

人ばかりでなく建物に注目している写真もあり、火災のあとが残るビルや、新しいビルの隣に残っている古い建物、高級料亭の鍋茶屋の歴史を感じる壁など、常にどこかが変化し続ける古町の象徴的な写真だと思いました。
思わず、古町の色々な小道を散歩して人々の生活や歴史を感じてみたくなりましたね。

様々な親子や祖父母と孫、兄弟姉妹などの家族を撮った章には、なんと2018年に亡くなった新潟の音楽家でジャズギタリストの経麻朗さんと、その息子さんの写真が!
自宅を訪問して撮影したらしいですが、まさに新潟のレジェンドの一人である経麻朗さんの貴重な写真だと思ったし、また、写真ではまだ子供の息子さんは今ではピアニストになっているらしく、ちゃんとお父さんの優しい想いを受けて育ったんだな…と温かい気持ちに。

お酒の配達をする若者、老舗のお寿司屋さんを旦那さんから継いだ奥さん、歴史ある写真屋さん、新潟唯一のゲイバー、当時の流行語だったガングロのカリスマ店員が働くブランド店、本場の味を修行したバーのマスター、夜の古町で働く人向けの保育所…そこで働く人達の貴重な写真とインタビュー。
中にはもうなくなっているお店もあると思うのですが、こんな仕事をしている人が古町にいたのか…と本当に人々の生活が歴史を作るんだなと実感しました。

ライブハウス前のバンドマンや路上ミュージシャン、ホステスやジャズバーの歌手など、夜の古町で働く人達に、当時は今よりも賑わっていたであろう古町を感じました。
同時に、夜中に飲み歩く人達や、早朝に変える酔っ払いの写真に、自分もそういう体験を古町でしたなあ…と思い出して懐かしい気持ちにもなりました。

それから、古町には靴屋さん、鍋茶屋の庭師さん、紳士服屋さん、桐箪笥屋さん、靴磨き屋さんなど、数多くの職人さんがいたそうです。
おそらくこの本に乗っている人達の中にはもう亡くなった方やお店を畳んでしまった方もいると思うのですが、こういう人達が古町を支えていたんだなと今に伝える貴重な写真とインタビューでした。

それから、世紀末に考えたこととして、古い建物が壊されて作られた新しいビル、ジャイアント馬場さんの訃報、横田めぐみさんの帰国を願う署名活動など、歴史の転換点に起きた出来事、当時から今に続く歴史などを感じました。
特に、古町で暮らすホームレスの方や、托鉢しながら全国を歩いているお坊さんなどにまでインタビューしていて、本当に凄い本だなと感じましたね。

また、GOLDEN PIGSになる前のCLUB JUNK BOXのバンドのライブ、ジャズパブ、NAMARAの芸人さん達のお店、そして劇団第二黎明期さんの演劇に、知っている人の姿(ちず屋のシダさんとか)を見付けて、当時からこんな人達が新潟の文化を作ってきたんだなあと感動しました。
最後はまさに古町の歴史を今に伝える古町芸妓さんの写真が載っているのですが、この写真を撮影するためにお世話になっていた方が一席設けてくれたというエピソードも含め、本当に人と人の繋がりが古町の歴史を作ってきたんだなあと感動しましたね…

というわけで、当時の古町の風景や流行や文化そこで暮らす人々の貴重な記録を通して、変わりゆく時代を記録に残して次の時代に伝えていく意味を感じさせられました。
そして、毎日の生活や気持ちをこうしてブログに書いたり記録に残している自分の表現活動もまた、きっと未来に意味がある行為なんだと思うことが出来たので、本当に自分にとって大切な本との出会いでした。

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