狐の日記帳

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『ブラッド・メリディアン』/コーマック・マッカーシー

2018年05月26日 11時12分04秒 | 小説・本に関する日記




 昨日の夜は、コーマック・マッカーシーの小説『ブラッド・メリディアン』を読み返していました。

 十九世紀半ば。開拓時代のアメリカ南西部からメキシコ北部。
 キッドと呼ばれる少年は、十四歳で家出して物乞いや盗みで生計を立て各地を放浪していた。
 放浪の末に少年は以前より見知っていた「判事」と呼ばれる二メートル超の男の誘いでグラントン大尉率いるインディアン討伐隊に加わる。
 非常に博識でインテリであるこの「判事」は、何の躊躇もなく罪のない人々を殺す男で……。



 『羊達の沈黙』のハンニバル・レクター博士のような人物がわんさかと出てきて暴れまわる、ようなお話。悪漢小説です。
 ほとんどのキャラクターが悪逆無道で残忍で卑怯で悪党。
 平和を唱える人をせせら笑ってその人の頭を銃で撃つような人物ばかり。
 苛酷な環境で無法地帯で戦争状態で暴力と野蛮と堕落に支配された地に現れる人の弱さや残忍さや悪を、精緻で乾いた文章で淡々と描いています。
 人の悪の部分を糾弾するわけではなく、そのまんま、ぽ~んと読者に投げ出して「勝手に判断してくれ」と言っているみたいな小説です。
 或いは、極限状態の人間なんてこんなものだよ、と淡々に述べているかのような小説であります。


 主要キャラクターの一人は作中で「人間は戦争をこよなく愛しているから、戦争はなくならない」と言います。
 作者自身はそう思っていないのかもしれない。
 でも、「そんな酷い事を言って酷い事をする人は幾らでも居るよ」って言われているような気がしてくる。(←誤読かもしれない。)
 現代でも、紛争地帯は同じような人がいて同じようなことが起こっているのでしょうか?



 面白かったですよ。
 楽しめました。



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