昨日の夜、イアン・マキューアンの小説『贖罪』上下巻を読み終える。
精緻な描写と、第三部のラストの一文に吃驚して引っくり返る。
第一部の舞台は、1935年の英国。
主人公は英国の地方旧家の末娘。十三歳の少女。
彼女は文学の創作に早熟な才能をしめしていた。
第一部は主人公の少女の主観から少女の家族達それぞれの主観へと移り変わって、とある一日を描いている。
第一部のラストで事件が起こり、主人公の少女は妄想癖から、姉と姉の恋人の仲を引き裂いてしまう。
第二部の舞台は、1940年のフランス。
ドイツ軍のフランス侵攻によって、フランスに駐留していた英国軍が撤退する。
第一部で出てきたある人物が第二部では主役。
英国軍にいたその人物の、英国への撤退の拠点となるダンケルクへの困難な道程を描いている。
第三部の舞台は、1940年の英国ロンドン。
十八歳になった主人公の少女は、見習い看護士をしながら、作家になる夢をかなえる為もがいている。
かつて引き裂いた姉と姉の恋人の仲を気にしながら。
第一部のラストで起こった事件についての真相は、第三部で一応明かされる。
しかし、第三部の最後の一文でその「真相」も信用できない物になってしまう。
第三部の後に短い文章がある。
そこでも「真相」は明らかにされない。
小説家にとって「贖罪」とは何なのか?
「真相」とはどんなものなのか?
この小説はそんなお話。
凄いお話です。
きっと私は、今後何度もこの本を読み返す事になりそう。
とてもよい小説です。
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