行先を告げタクシーに乗っていると、一本手前で角を曲がってしまった。
行先を告げた声に元気がなく、運転手も聞き間違えたのかもしれない。
普段なら、角に差し掛かる前に、指示を出していたのに。
急いで帰りたいと思っているのに、大回りとなってしまった。
家の玄関はしっかり鍵が閉めてあり、妻も出てこない。
というか、妻は玄関までも降りてこられないのである。
鍵を開けて入ってみると、妻は起きていたが、クーラーの効きが弱かったので、冷房を強くした。
家では29度くらいにクーラーを効かせているけれど、病室は24度くらいしかないのではないだろうか。
シャツ1枚では寒いのである。
2階まで行く元気もないので、とにかく1階で長椅子に横になった。
(つづく)