ぜじろぐ

SAMBATOWN・ゼジの書くブラジル音楽やその他あれこれ

続・ワタクシ的話題盤

2008-08-29 14:54:00 | CD

こんにちは、東海地方は昨夜からの豪雨でもうとんでもないことになっちゃってますが、おかげさまでサンバタウンは何事もなく業務を遂行できております。それよりも明日の浅草サンバカーニバルが心配です。今年はワタシも久々に浅草に出かけることができそうですが、「台風でもない限り行います」とは浅草実行委員会の回答。果たしてどうなりますことやら。

さて、そんなカーニバル系のサンバとはうって変わって、今回ご紹介するCDは渋いサンバ・カリオカの世界。リオの若手・ベテラン混合一体型のユニット、Samba de Fato e Cristina Buarqueによるマウロ・ドゥアルチ集(なんと2枚組)、O samba informal de Mauro Duarteであります。

そもそもマウロ・ドゥアルチって誰よ?というところから解説を始めねばならないかもしれませんね。彼は元々ミナス生まれなのですが、3歳の頃にリオのボタフォゴに移り、69歳でリオにて没していますから、ほぼカリオカといっても差し支えないでしょう。映画「モロ・ノ・ブラジル」にも出演した仕立て屋サンビスタ、ヴァルテル・アルファイアッチの無二の親友で、パウリーニョ・ダ・ヴィオラとも親交を厚くしていた上、優れた作曲家であった彼は当時のエスコーラ・ヂ・サンバ各所にも相当顔の利く存在であったようです。また彼の作品はエリゼッチ・カルドーゾやクララ・ヌネスといったビッグネームの歌い手達に好んで採り上げられていましたが、いかんせんマウロ本人がパフォーマーではなかったためか、今ひとつ表舞台には立ちきれていなかったように思われます。

そんなツウ好みのマウロ・ドゥアルチ作品を、それも2枚組というボリュームで再構築し、世に送り出したこのグループには拍手喝采を贈りたいものです。
メンバーはショーロ界では知らぬ者のいない名手ペドロ・アモリン(カヴァキーニョ/バンドリン)、テレーザ・クリスチーナの「元」夫ペドロ・ミランダ(パーカッション)、古風で小粋なサンバ・カリオカを能くするアルフレド・デル・ペーニョ(ギター)、縁の下の力持ちという表現がぴったりきそうなパウリーノ・ヂアス(パーカッション)、そしてシコ・ブアルキの妹御(本人はそう呼ばれるのを大変嫌っているのだとか)クリスチーナ・ブアルキら5人。ここでは全員が入れ替わり立ち代わりリードヴォーカルをとっており、時折マウロ本人の生歌音源も挿入されたりして、全く飽きさせない作りになっています。

個人的に親しくさせていただいているペドロ・アモリンがジャケでカヴァキーニョを抱えているのにも少々驚かされましたが、なかなか味わいのある歌を聴かせてくれるのが個人的に嬉しいです。そして伝家の宝刀バンドリンが放つサウダーヂ。胸がいっぱいになります。その他ミュージシャンらのプレイも堅実そのもの。一聴して派手なプレイこそないものの、そのサウンドのまとまりはいわゆるひとつの「間違いないねぇ」というやつです。

あと、それを言っちゃおしまいよ的発言になってしまいますが、特筆すべきはクリスチーナ・ブアルキの歌の入り具合の絶妙さ。正直言って全盤通して聴くと多少ツラい彼女の歌も(失礼)、こうやってかわりばんこに登場するとアラ不思議、ほどよく枯れた渋い味わい。押し・引きのリズムでいくと明らかにこれは「引き」の役割。いや実に素晴らしい。男声ではパウロ・セーザル・ピニェイロ(狙ったかのようにゲスト参加してます)、女声ではこのクリスチーナで泣けるようなら貴方は筋金入りのサンビスタ。サンバの心を後進の人々に伝えていくのは貴方です。

ただ一点、これはちょっと欲張りすぎかもしれませんが、マウロ・ドゥアルチを歌うにあたり、ヴォーカルにモイゼイス・マルケスを起用していたら、ブラジル音楽史上に残る名盤が誕生していたかもしれません。もちろんモイゼイスうんぬんを抜きにしても、このCDは広くサンバファンに愛聴いただきたい名作だと思います。テレーザ・クリスチーナに代表されるラパ系のサンバに目がない方はイチコロでしょう。店主は今日のうちに東京行きの深夜高速バスに乗り込みますが、携帯プレーヤーにはこの音源を忍ばせて、心豊かに東京までの道中を楽しみたいと思います。以上、店主の勝手な思い入れでした。

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