ブラジルのCDはプレス枚数が少ないのか、はたまた再プレスを渋るレコード会社の怠慢ゆえか、すぐ廃盤になってしまいます。店主の感覚ではメジャーレーベルでない限り、約1~2年でたちまち入手困難となっております。別に無理に買わせようというわけではありませんが、迷った時は買い時だというのがブラジル音楽のセオリーと言っても過言ではないでしょう。
しかし忘れた頃になってひょっこりと「幻の名盤」的作品が再発されたりなんかするわけですが、この時のジャケットデザインというのがまたどうにもいただけません。João Donatoの"Lugar comum"然り、Novos Baianosの"Acabou chorare"あたりなんか、サンバタウンに再発盤が届いた時はあまりのダサさに怒り狂ったものです。なぜオリジナルのままにしないのでしょう。なぜ敢えてダサジャケに改悪するのでしょう。一体レコード会社のデザイナーには仕事に賭けるプライドというものはないのでしょうか。でなければ後は単にセンスの問題なのですが、そこには個人の才能というものも関係してきますので敢えて言及しないことにしましょう。いずれにしましてもブラジル再発盤、とにかくジャケデザイン悪すぎ。「アンタらホンマに売る気あんのん?」とブラジルの方角に向かって、4年しか生活していないのに大阪弁で文句を言う店主です。
そこで本題。写真の作品。Quarteto em Cy & Luiz Claudio Ramos "Falando de amor pra Vinícius"というCDをご紹介します。
どうですこのジャケット。まるで○○小学校卒業50周年同窓会の記念写真のようなグロテスクさです。Quarteto em Cyの4人に囲まれてちょっと得意げにギターを構えるルイス・クラウヂオ・ハモスもなんかちょっとアレな感じですが、これでもミュージシャン達の間では「マエストロ(巨匠)」と呼ばれるブラジル屈指のギタリスト&アレンジャーなのです。「あの頃さあ、みんなルイス・クラウヂオ君にお熱上げちゃってたのよねえ」「やあだもうバラさないでよ」「いいじゃないの時効よ時効」「ぎゃはははは」みたいな会話が聞こえてきそうで店主耐えられません(←勝手な想像)。
最初ワタシはこれをジャケット通りの年(つまり90年代後半あたり)に製作された新録かと思っていたのです。でジャケからもう判断して弊店のセールリスト行き決定。2軍1,000円の扱いです。ところが本日ひょんなことからこれを再度試聴しましたら、あらビックリ、81年ライヴのリマスタリング再発盤じゃございませんか!ヴィニシウス・ヂ・モラエスの作品ばかりを取り上げています。80年に彼は没しているので、トリビュートの意味合いも込められていたのだと思います。そういう認識のもとで聴き直すと、これがまたなかなかどうして良いではありませんか。4人の声も瑞々しく、バックは端整なギター1本の伴奏のみ。由緒正しきボサノヴァコーラスと言えましょう。音は本当にリマスタリングしたのかと言いたくなるほど粗いですが(後ろでひーんとかハウってます)まあそれは見逃しましょう。
あまりのジャケのヒドさとはいえ、ワタシは2年以上もこのCDをお客さんに薦めないままでいました。内容もロクに覚えていないのに「これはアカン」と勝手な思い込みをしてしまっていたのですね。まるで近鉄時代にマイペースで調整を続ける野茂英雄投手に対し「ワシはこれでエエ思いしたんやから言われた通りにせんかい」と彼を締め付けた当時の某カントクのようです。ちなみにこのカントクさんとは対照的に、故仰木彬氏はかつてオリックス監督就任後すぐに「鈴木(当時のイチロー選手の呼び名)は今どこや?」と尋ねたといいます。当時イチローは前任のカントクに「そんなフォームは1軍では通用せん」と例の振り子打法の矯正を強いられましたが、頑として変えようとしないイチローをこのカントクは半ば制裁よろしく2軍でくすぶらせていたのだとか。で、仰木さんはというとスタッフが「ファームです」と答えるや「すぐに(1軍に)上げろ!」と命じたそうです。卓越した眼力を持っている方はやはり違いますね。
このCD、ええ、もちろん本日大慌てで1軍に復帰させましたとも(笑)。