ぜじろぐ

SAMBATOWN・ゼジの書くブラジル音楽やその他あれこれ

2008年最初に紹介するCDは

2008-01-05 01:24:34 | CD

こんにちは、ええ加減正月ボケから復帰しないといけないサンバタウン店主です。開店以来こんなに寝正月をカマしたのも初めてですが、在宅勤務というものはやはり自分を甘やかすとどんどんグータラライフになっていくもので、いかに己を厳しく律するかというところがキーポイントになってまいります、と言ってるそばから年末に業界の某重鎮からいただいた飛騨の古酒「天恩」をちびちびやりながらこの記事を書いているワタシですが、それより何はともあれ新年明けましておめでとうございます。今年もサンバタウンをどうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、そろそろぜじろぐも稼働を開始し、ブラジル音楽情報を発信していかねばなりません。そこで2008年の最初を飾る作品はということで見繕ってみましたが・・・やはりコレ以外に見当たりません。年末ギリギリに入荷した、Sérgio Santosの「Iô sô」です。唐突ですが、はっきり言って化け物アルバムなんであります。

セルジオ・サントスは1956年生まれのミナスジェライスの人。95年のファーストアルバム「Aboio」から注目を浴び続けてきたシンガーソングライターで(とか言いながら実は店主はこの『Aboio』をまだ一度も聴いたことがないのであります・・・)、当時マルコス・スザーノが大絶賛していた人物でもあります。以降は素敵なサンバ寄りのアルバム「Mulato」、3作目にアフリカをテーマにした名盤「Áfrico」をリリース。このÁfricoで彼は決定的な評価をブラジル内外で受けることになり、日本(ていうかサンバタウン周辺)では最も支持されている作品でもあります。その後2004年に4枚目のアルバム「Sérgio Santos」を発表、ジャジーなテイストが光る秀作(実際にサポート陣の演奏はブラジル最高峰レベルと言っても過言ではない)ながらも、彼自身の持つ音楽の本質が見えづらいとの評価もあり、賛否両論を巻き起こした問題作となった感があります。

そして満を持して3年ぶりにリリースされたアルバムがこの「Iô sô」。しっかりしたリサーチをしていないのですが、このiô sôとはeu sou (I am)の訛った形であると思われます。すなわち、このアルバムで彼は自らを表現しきったという意思表示という風に店主としてはとらえています。ブックレット裏にセルジオ自身のコメントが寄せられており、彼はこの中で以下の通り並々ならぬ愛情を持って解説しています。

「ここに収められている音は、ミナス内部のいち少年時代にストリートを満たしていた、私が記憶している初めての音色に基づくものです・・・(中略)・・・私は長い時間をかけ、私自身の中で散り散りになっていたこれらの音のこだまを集め、今回こうして再会することができたのです・・・(中略)・・・この作品は、ミナスに住み始めた黒人とその謎深さ、そして我が故郷のコンガード(ミナスの伝統リズム)と太鼓の音を包む信仰心と美といったものの歴史を紐解くこと、それら全てに捧げるものです」

そしてその中身は・・・というとこれ以上だらだら書くのは野暮というものですが、あえてかいつまんでご紹介させていただくとすれば、極上という言葉すら低俗に思える、美しさと力強さを併せ持ったアコースティック音楽。セルジオ・サントスの作品中、完結章といっても差し支えない凄まじさ。これまでにないスケールを感じさせるセルジオの歌とギターに加え、バックにはお馴染みのメンバーであるホドルフォ・ストロエテル(ベース)、アンドレ・メーマリ(ピアノ)、マルコス・スザーノ(パーカッション)、トゥッチ・モレーノ(ドラム)らが名を連ね、ゲストとしてドリ・カイミがミナスの大地の匂いを、ジョイスがミナスの風を運んできたかのような名演を披露してくれます。そしてアルバム全体に響き渡るタンボール・ヂ・ミナスの野生的にして荘厳な打音。ワタシはこれを聴いてすぐさま感動を通り越して畏怖すら覚えました。セルジオ・サントスは果たしてこの後これを凌ぐ作品を世に送り出すことができるであろうか、そしてワタシは今後の人生で果たしてこれ以上のブラジル音楽にどれだけ出会うことができるだろうか、そういうやるせない思いが身を包んだのであります。

残念ながら、皆さんにそのひとかけらをご紹介するための試聴サイトを探し当てることは叶いませんでしたが、上記の拙文をお読みいただいて「これは!」とお感じになった方がいらっしゃったら、その直感は多分、間違ってはいないと思います。是非この世紀の名盤をお試し下さい。先月ラティーナさんの「2007年ブラジル・ディスク大賞」に寄稿したばかりですが、声の持つ力とギターの音色というものに強いこだわりを持ち、太鼓の音圧に無条件で心躍らせる性分で、おまけに最初にハマったブラジル音楽がミルトン・ナシメントであったというこのワタシの中では、2008年ベストアルバムはいきなり不動のものとなっています。気が早いといくら笑われても、この決定がブレることのないよう願うばかりです。

・・・とか言いながら、やがて入荷するでありましょうマリオ・ジルの新譜がとても気になります。ああ、あまり早いタイミングで前言撤回するとなるとちょっとカッコ悪すぎます・・・。

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