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覚え書き13

7日の午前中、学生さん達の猛烈な肉体労働により水路が完成。
田んぼの上の方から放水すると瞬く間に今掘ったばかりのビオトープに水が行き渡っていく。
気持ちのいい五月晴れの日ざしが滔々と流れる水に反射する。
思わず「いい景色だ~」とつぶやいた。現場監督の先生もうれしそう。
お昼ごはんに現地の方が作って下さったカレーライスを私達までご馳走になり、一足お先に田んぼへ戻ってきてみたら、男の子が満面の笑みでそこに立っていた。あっという間に水が満ちたビオトープにいてもたってもいられない様子で、長靴でばしゃばしゃと水に踏み込む。ずぼ。うあー落とし穴だー。長靴に水が入っても楽しそう。
屈託のない笑顔を見せてくれたこの少年君は、「冬水田んぼの活動で学んだこと」という作文を書いて「2010年地球にやさしい作文・活動報告コンテスト」(読売新聞社主催)」で内閣総理大臣賞を受賞したそう。素晴らしい栄誉だ。
http://www.yomiuri.co.jp/adv/sakubun/prize.htm
しかし彼の家は津波で全壊、祖父を失ったとのこと。屈託がないわけはない。
そもそも、このふゆみずたんぼ復旧を思い立ったのは彼の「また田んぼやりたい」という一言が発端だそう。

あぜ道できれいに縁取られた田んぼに水が満ちる。復旧して本当に良かった。
その周囲はまだまだガレキの散乱している風景だけど、この田んぼでこの土地の子供達が稲を育て、穂が伸び米が実るその様子をこの土地の大人の人達も眺めることが出来れば、それだけで復旧のシンボルになるかもしれない。そうなってほしいと願う。

今回私がやらせて頂いたボランティアが「いいとこどり」だと思ったのは、復旧作業を終え、田んぼに水が行きわたるまで見届けることが出来たこと。
それと、6日が本来作業お休みだったことで他の人がおらず、ふゆみずたんぼ担当の先生と直接色々お話することが出来たこと。
「やろう」と先生が決断して、ボランティア募集をかけて、大勢のボランティアが集まって、地元の人達も参加して、結果として予定よりも早く予定よりも広い範囲を復旧させることが出来て大成功だ。
しかし、先生の御苦労とプレッシャーは決して小さくなかったと思う。赤の他人同士のボランティア。県外からバスや電車で来た人達を車で送迎し(最寄の大谷海岸駅は被災したので、数キロ離れた気仙沼駅まで送迎された)、学校の教室に宿泊出来るよう手配し、老若男女取り混ぜた大勢の人に説明して作業の指示を出しながら、自分も現場で手を動かし体を動かして労働する。その上この先生ご自身も津波でご自宅に被害を受けていた。
もし私が先生の立場だったら、怪我やトラブルの可能性を考えただけで、知らない人にボランティアを頼むなんて二の足を踏んでしまいそうだ。
しかし、先生の「やろう」というご決断は偉大だった。
今回ボランティアとして参加させて頂いて、そして他のボランティアさんの話を聞いたりして思った。
もしも今後自分が、例えば東海地震が起きたりして自宅が津波に流されて(うちは海まで徒歩数分)自分が被災者の立場になることがあったら。本当に困ったことになったとしたら。
意地をはらず怖がらず、素直に他人に手助けを求めようと思った。
困った時はお互い様。「人の役に立ちたい」「人の手助けしたい」邪心なくそう思っている人は、この世の中けっこうたくさんいるもんなんだな~と今回参加してあらためて知った。またそういうボランティアしたい人は、人の手助けをすることで自分の心も満足し幸せになれる。
ただひと口に「ボランティア」と言っても、状況、作業内容、人の性格などピンキリで、簡単に言い尽くせないことは百も承知だが、今回のこのボランティア作業は、強い意志と采配力をお持ちのこの先生のおかげで、とても恵まれたやりやすい現場だったと思う。

他人が困ってる時に手を貸し、自分が困っている時は人の手を借りる、ということ。
そんなお互い様の手助けが昔の日本にはどこにでもあった。「結い」という名で。
しかし昔の結いは、狭い範囲の集落や同じ村内など限られた地域の顔見知り同士のものだった。なので今回の大震災のように、広い範囲の大勢の人が同時に被害を受けた場合、地元の人同士の結いで助け合うことは難しい。
インターネットが発達した現代は、ネットでの呼びかけに対して全国から一ヶ所に見知らぬ者同士が集まることが出来るようになった。道具としてのネットは大いに活用し、そして実際やることは昔の「結い」さながらの体を動かす労働。それがいい。

自分がいざ困った時に遠慮や我慢をせずに見知らぬ人に手助けを乞うためにも、自分が元気な時に出来るだけの力で他人の手助けをしたいと思った。
自分が手助けした人に、自分を手助けすることを求めるという訳では決してない。
「手助けされた人→別の他人を手助けする→手助けされた人→また別の他人を手助けする」
という感じ。大勢の見知らぬ人同士がずらーーっと横長に並んで手をつなぐイメージで、「手助けのつながり」が連鎖となって、長い長い先の方、人の列が見えないくらい先の未来にまでもつながって行けばいいなと思う。
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