(政教一体)公明党・創価学会 政権参加を問う③ しんぶん赤旗・特別取材班
新日本出版社 750- 2000/4
第五部 抑圧体質は改められたか
池田大作会長(当時)は言論出版妨害事件の「おわび講演」(一九七〇年五月)で、創価学会と公明党の「分雜」、「かたくなな反共主義」の是正、「信教の自由を遵守し」「退会したい人」を「決して執拗にとめてはならない」などを公約し、「再出発」を誓いました。
これらは民主主義や基本的人権を守る上で、避けてはならない課題。私たちは第四部で、そのうち「分離」公約について事実にもとづく検証をしました。第五部では、残る公約のその後を追います。まず、今年(二〇〇〇年)二月六日投票でおこなわれた大阪府知事選挙と京都市長選挙のリポートから--。
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大阪・京都で何が起きたか
“政教分離なんていつてられへん”
“常勝開西”--創価学会がそう位置づける大阪と京都で熱い選挙戦が展開されました。
公明党政権入りのもとでの大阪府知事選挙と京都市長選挙。創価学会・公明党がどんな役割を果たしているか、現地からの緊急リポートです。
「まさに創価学会主導」。太田房江知事候補(自・自・公・民)陣営の大阪財界人がそういいます。「(太田陣営で)一番力の入っているのは公明党だ」とは石垣一夫公明党衆院議員(二〇〇〇年一月二十四日、吹田市)。
学会主導--。それは告示翌日(一月二十一日)の動きにも顕著でした。
◆学会婦人部にうかがって
昼から大阪市内のホテルで開かれた「女性のつどい」。太田候補の演説は、「学会の婦人部にもうかがって、たくさん話をさせてもらいました」と、壇上の公明党幹部や会場の学会員を意識したものでした。
この日の締めくくりは夜八時半、堺市の教育文化センタ-での公明党政談演説会。会場では「政教分離なんて、いってられへんで」というささやきも聞こえてきます。
北側一雄公明党衆院議貝が、「共産府政なんかにしてはならん、大阪の経済も財政再建もだめになってしまう」と絶叫すると,われんばかりの拍手がおこりました。
選挙序盤から一日に二度も創価学会中心の集会で支援を訴える……。太田陣営の主力がどこにあるのかを印象づけました。
各地の創価学会の「会館」も出入りが激しくなつています。告示前日(一月十九日)、松原市文化会館では午後、女性学会員が集結。夜になると誘導棒を手にした会館職員が門前に立ち、車、バイク、徒歩で学会員がつめかけました。
「この時期の集まりは、選挙の意思統一と『Fどり』(支持拡大)の集計報告」と、選対経験のある元学会幹部。別の現役学会役員によると、府下の有力学会員宅などには「企画室」と呼ぶ選対拠点も設置したといいます。
ノック前知事のわいせつ辞任を受けた大阪府知事選。「自民党本部は、創価・公明が乗りやすいことを最優先して候補者選びに動いた」--『自民党府連がかつぐ平岡竜人陣営幹部がいいます。
◆「公明新聞」で親密さアビール
太田氏自身も、告示直前(一月一七日)の「公明新聞」大型インタビューに出て「浜四津敏子代表代行から…….、福祉の在り方を学習させてもらいました」と、親密ぶりをアビールしています。
太田候補応援は、府政刷新を願う府民や日本共産党への攻撃と一体になっています。
「日本共産党の街頭宣伝に、創価学会の『文化会館』から出てきたニ十人ほどの会員が激しいヤジを浴びせた」(大阪市西成区)などという動きが、各地に出ています。
松原市の日本共産党市議.森田夏江さん(37)は、こう語ります。
「私たちの宣伝活動にたいして、最初のころは、『ノック知事のセクハラ事件は共産党の陰謀』というヤジがほとんどだった。選挙本番になると『共産府政になると公共事業がなくなって経済が衰退する』ともいいだしている」
選挙対策中枢にかかわる創価学会幹部が、知人にこう語っています。
「大阪府知事選と京都市長選は特例的に重視して応援する選挙。その理由の一つは、自自公政権の枠組みでたたかう選挙として絶対に負けられないということ。二つは『共産府市政許すまじ』だ!!」
千六百人を集めた吹田市の演説会で公明党の石垣議員はこう叫びました--。
「公明党と共産党のたたかいだ!」
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一夜でまかれたビラの出所は……
「もうすぐ市長(桝本頼兼候補)がお見えになるので、ぜひ三色旗(創価学会旗)を元気いっぱい振つていただきたい!」
◆三色旗、うちわが打ち振られ……
二〇〇〇年一月二十四日夜、京都市北区の演説会。大小の三色旗や三色のうちわが打ち振られ、まさに創価学会の内部集会の様相を見せました。
演説会で公明党の森本晃司参院議員は、「今回は(公明党が)一番早く選挙をしている」、しかし「あなどれるたたかいではない」。
前回市長選で公明党は、選挙本番後に創価学会関西長が直接乗り込んで桝本支持を表明。今回は違いました。九九年十二月、早々と「支援対策本部」を設置。桝本陣営関係者は「各地から(学会員が)驚くほどたくさんきてくれている」といいます。「学会さんが、がんばつてビラをまいてくれる」というのは自民党府連役員。
「共産党の公約ウソとスリカエだらけ」--桝本陣営の機関紙「健康京都」が市内全域にまかれました。保守系を含めた広範な市民・団体が推す井上吉郎陣営を「共産党」にすりかえ、ゴミ、交通など項目ごとに井上候補の政策に「反論」をこころみたもの。
このビラがまかれたのは一月二十二日(二〇〇〇年)深夜から二十三日未明にかけて、しかも市内全域いっせいにでした。こんな芸当がなぜできたのか。深夜、地理不案内の様子で懐中電灯を手にして配布するグループの姿も目撃されています。
ところがそれ以前から、ビラとまったく同じ内容の文書を使って票よみする人々がいま
した。
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「内部討議資料」と書かれたB5判三枚つづりのもの。全戸配布したビラとは、形式は違うものの、文章の構成から句読点まで、うり二つです。
ビラ配布前日、市民の一人にこの文書を渡し、「共産党はうそばっかりやから、桝本さんに」と依頼したのは知り合いの創価学会員。以前、この人を折伏(入信勧誘)したこともあります。
◆「学会が丸ごと関西にきた」
公明党の元国会議員は、「今どき、こんな反共攻撃一辺倒では逆に反感を買うのではないか」といいます。
「創価学会が丸ごと関西にきたんとちがうか」--そんな話題が市民に広がるほど。「自民党は業界団体や行政ルートを押さえにかかつている。学会,公明がこんなに表面に出るのは珍しい」とは地元関西マスコミ関係者。
京都は宗教都市。大阪にも多くの寺社教会があります。それだけに、政権入り後の創価学会・公明党の動きには、関心が大きい。世界遺産都市の文化や自然を守ろうという声は、宗教界にも広がっています。
本山修験宗の宮城泰年宗務総長はこう語ります。
「創価学会は勢力拡大に政治を利用してきた。それだけに市長選での動きには、由々しき事態だという声が宗教界に広がっている。これは大阪でも同じだろう。信教の自由、政教分離原則をはじめ、民主主義を守るうえで避けて通れない問題だ」
さきの演説会で森本議員は「政治の流れを逆戻りさせてはならない」といいました。
「政治の流れ」とは--。公明党.創価学会だのみの“自自公”の流れか、“府市民が主人公”の流れか。
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“学会の三色旗が正面に出た”
「三色旗を振つて何が悪い!」
二月二日(二〇〇〇年)、京都市下京区で開かれた演説会で、山名靖英公明党府本部代表は、こういい放ちました。
市長選告示翌日の一月二十四日、桝本頼兼候補の演説会(北区)は超満員。四~五人に一入が三色旗や三色のうちわを持ち、ウォーと声を上げて打ち振りました。
同二十六日の公明党内部集会(伏見区)では、三色旗のほか「共産党打倒」などのノボリが林立。公明党でなく創価学会の組織名入りでした。
最終日の演説会には、井上吉郎候補をもじった赤鬼「鬼血」郎まで登場。これを退治した 「桝本侍」が扇子を広げると、これも三色に塗り分けられていました。
◆政権をバックに 力を社会に誇示
青黄赤の三色旗は創価学会の旗。まさに選挙戦で「学会が正面に出てきた」を象徴する場面でした。
「政権党のおごりだ」と、この動きを批判するのは公明党元国会議員。「私のころは政教分離の手前、演説会では『公明新聞」の旗しか使わなかった。政権をバックにした創価学会の力を社会に誇示したのだろう」といいます。
大阪--。公明党が受け持った地域の「ターミナル・ビラ実施計画表」。日付ごとに駅頭ごとのビラ配りの動員人数を記入しています。
「〇月〇日錦城5、本陣5、創価5」……。
この名前でも明らかなように、ここでも創価学会の組織が正面に出ています。
「とにかく、創価学会は攻勢的だった」と大阪の自民党幹部。「今回は、自民党に近い業界団体にも『自民党の親せきです』と、堂々と乗り込んできた」といいます。
鰺坂(大阪》、井上(京都)陣営や日本共産党の街頭宣伝にたいする妨害も続発しました。
◆ば声、体当たり ビラ配布を妨害
大阪市西成区で、パンフレット宣伝中に五、六人の創価学会員に取り囲まれた大山隆さん(仮名)は、その体験を語ります。
「近所の顔見知りで、ふだんはあいさつをかわす仲の人たち。それが「ウソをつくな』『アホちがうか』とすごい形相で怒鳴りちらす。なにかにとりつかれたみたいで、殴られるかと思った」
東淀川区では二月五日、「善良な一市民」を名乗る二十人近い集団が、日本共産党の正当なビラ配布を妨害しました。「こんなビラまきやがって!」と、ば声をあびせながら体当たりし、ビラを奪って足で踏みつける……。彼らが乗ってきた車の持ち主は同区内在住で、公明党や創価学会の活動に参加する男性であることがわかりました。
京都市伏見区の団地でパンフレット宣伝中、話が政教分離問題に入ると突然、高層階から怒声が聞こえ、ビールびん二本が落ちてきました。
「今回の選挙に二つの特徴があった」--選挙後、自民党幹部がこう語りました。一つは「三色旗が初めて正面に出た」こと。もう一つは「学会員が一人で票取りや宣伝に歩いた」こと。「以前は二人連れだったが、政権入りで(譬察に気がねすることなく)安心して歩けたのだろう」と。
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謀略的作戦を主導したのは……
京都市長選開票結果の出た二月六日(二〇〇〇年)夜の桝本頼兼市長の選挙事務所。山名靖英公明党府本部代表の誇らしげな顔がありました。
「公明党さんのおかげです」と、腰をかがめんばかりに握手を求める自民党幹部らにこたえた山名氏、マスコミ記者の質問に「確かに前回より力が入りましたね」。
創価学会・公明党の動きは「表」の部分だけでなく、有権者には見えない「裏」の部分でも顕著だったようです。
◆反共ビラ作成をリードしたのも
関西の創価学会幹部が「自自公路線を守り、共産党の躍進を許さないたたかい」という二つの選挙。なりふりかまわぬ謀略的な作戦が水面下で繰り広げられました。
「反対だけが実績」「一党独裁がビジョン」--市長選では、日本共産党を中傷する反共ビラが連続して大量配布されました。それも桝本陣営の機関紙としてです。
この、日本共産党を誹謗、中傷するビラ作成と配布の過程は、複数の桝本陣営関係者によると、こうです。
従来の桝本陣営の宣伝物は、自民党議員秘書らが中心になつて作成していたといいます。しかし、一連の反共ビラについては、各党代表者による会議で完成間近のゲラが公明党サイドから提示され、他党は事後承認するかたちになった、といいます。
反共ビラは,日本共産党京都府委員会が党員向けに発行した「府党二ュース」を転載し、趣旨をゆがめて攻撃するところまでエスカレートしました。桝本陣営開係者は、「これには他党から『やりすぎではないか』との声が上がった」と語ります。
これらのビラの配布も「学会ががんばってくれる」(自民党関係者)と、公明党・創価学会に頼りきったのが実際でした。
大阪府知事選は、自民党が党本部と府連に分裂してたたかいました。それだけに太田房江候補を推した公明党の存在感が際立ちました。
候補者擁立の過程からしてそうです。月刊『文芸春秋』三月号の政界コラムは、「常勝関西」を仕切る創価学会の西口良三副会長が、民主党と一緒になって太田房江氏を引っ張りだし、西口氏と昵懇の野中広務自民党幹事長代理を通じて自民党本部の了解を得た、と指摘しています。
実際、一月二十一日の界市での演説会では「侯補者人選は(九九年)十二月二十一日から」(北側一雄公明党衆院議員)などと、擁立経過を詳細に説明し、同党主導ぶりを示しました。
それだけに大阪、京都とも候補者は、「公明党が大好きです」(桝本市長)、「(公明党の)みなさまのおかげです」(太田知事)と平身低頭でした。
なぜこのような事態になったのか、ある自民党幹部は、こう語ります。
◆天の声々として現地に伝えられ
「自民党には、大阪や京都で自力で勝てる力がなくなってきた。そこで野中さんらは、創価学会に頼った。その自民党執行部の意向が“天の声”として現地に伝えられている。
だから公明党のやり方が議会制民主主義の常識からみてどうかなと思っても、文句はいえなかつた」
霊感商法の団体まで引き入れ
大阪府知事選最終盤の二月三日(二〇〇〇年)深夜から、「共産政治になったらえらいこつちゃ」と、日本共産党を誹謗、中傷するだけのビラがいっせいに配られました。住所も電話番号もない出所不明のビラです。
◆深夜から早朝府下全域で
市街地から府県境の農村地域まで府下全域。推定二百万枚にも及びました。しかも大半は三日深夜から四日早朝までの時間です。
ビラはタブロイド判大のカラー刷り六ぺージ、中面はのり付けまでしてあります。印刷業界関係者によると、安く見積もっても一部十五円以上はかかるといいます。
配布の仕方も、日本共産党の事務所や党員宅に、数十枚も放り込んだり、玄関にテープでビラを張りつけるという、敵意がにじむものでした。
短時間で大量配布できる動員力。少なくとも、数千万円を投入できる資金力巨大な組織力を持ち、しかも反共
意識で固まつた団体がやつたことは間違いありません。
自民党本部に同調せず、平岡竜人候補を擁立した自民党府連幹部はこう語ります。「自自公路線に反旗をひるがえしたわれわれが日本共産党を批判しても、まったくメリットがない。だいたい、そんな大掛かりなことができる団体は一つしかないやろ」。
日本共産党の不破哲三委員長は二月五日、大阪市内での演説で、ビラの中に統一協会(国際勝共連合)の使う「フロント組織」という用語や勝共連合機関紙号外とうり二つの図表が使われていると指摘。自自公勢力が霊感商法の反社会的団体まで引き入れた謀略であることを解明しました。
鰺坂陣営は、不破委員長の演説内容を紹介する「大阪民主新報」緊急号外を配り、反撃にでました。すると各所でさらに奇怪なことが--。
◆連絡とリあい十人、二十人と
正当なビラ配布活動にたいする暴力的な妨害。携帯電話で連絡をとりあい、十人、二十人とかけつけてくるという組織的妨害です。
「こらあ、なにやっとんねん」「こんなビラまきやがつて」ば声だけでなく、蹴飛ばしたり、体当たりで号外を奪い、踏みつける……。威圧的な行為が続発しました。
大阪市東淀川区で妨害をうけた民主商工会の会員は証言します。
「六人に取り囲まれ蹴飛ばされたのですが、そのうちの一人の若い女性の持っていた紙袋に、例の謀略ビラが束で入っていた」
妨害集団のなかに、日ごろ公明党の支持拡大や創価学会の勧誘で活動する人物が加わっていたことも、氏名、住所ともに確認されています。
号外配布が開始されると、「大阪民主新報」編集部には、組織的と思われる嫌がらせ電話やファクスが集中しました。さらに投票日の昼前から特徴的な変化が起こりました。
「創価学会はやっていない」「平岡陣営の仕業だ」などという“弁明”で、それが口裏をあわせたように始まりました。
同時に、「大阪民主新報」号外への激励や謀略ビラにたいする批判も寄せられました。
豊中市のクリスチャンの女性(42)は「選挙妨害だ。気分が悪い。住所も電話も出していない。私たちの権利を侵害している。民主主義が壊れていく」と語りました。
京都でも同じ。公明党・創価学会批判のビラを読んで知り合いの日本共産党員に電話をかけてきた京都市左京区の現役学会員は、暗い声でこう語りました。
「このビラに書いてあるとおりや。政権についてからの創価学会は怖い。もうついていけへん」
---------(23P)-------つづく--