陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本映画「恋空」

2008-12-30 | 映画──社会派・青春・恋愛
前回の「初恋」もそうですけれど、タイトルに恋とつく邦画はおもしろくないのだろうか、と疑ってしまう年末です。
千二百万人が泣いた感動の名作、という触れ込みはじつはギャグだったのでしょうか。

ここ最近涙腺がすっかり緩んでしまったのか、じつはけっこうなドラマとか映画とかドキュメンタリーを拝見しては、涙があふれてきたりする私なのですが。この一作だけは、どうしても泣けませんでした。

と、出だしからさんざんに酷評してしまった映画です。お好きな方、ごめんなさい。
ネットでも悪い意見ばかりがめだちますね。元がケータイ小説であきらかにおかしな文章表現があるから、とのことです。自分もまれにおかしな言い回しになっていたりするので、他人様の批判はできませんけれど、…それらを読むかぎり開いた口が塞がらない。ただの誤字脱字というレベルをこえて、慣用句のほんらいの意味をまったく無視して用いてるために、意味が通じないものになっているようです。

映画のレヴューですので、原作小説の批判はここまでに。
〇七年公開のこの映画版は、原作にあったふつごうな部分を若干補っているようですけれど。やっぱりそれでも、違和感がぬぐえませんでした。

さいしょの美嘉とヒロの出会いのあたりは、すなおに感動したんですが…。そのあとに美嘉を襲う事件、安易すぎます。もっと、他のエピソードでもよかったのでは。そもそも、このヒロという男子の性格が、すぐ切れやすくて。すぐに腹の立つ相手にぶっ殺すとか悪態ついて。いつも肝心なときにどっかに行ってしまって、頼りない感じがします。腕っぷしは強いらしいですが、中途半端な不良すぎます。美嘉が流産したとたん、退学して働くという決意をくつがえしたり。
この彼に感情移入できないので、好きを告げる美嘉の気持ちがやはり理解できません。

ふたりを結びつけるエピソードもほのぼのするんですけれど、どこかお約束なことばかり。しかも、毎年まいねん、クリスマスあたりのエピソード(その日がふたりにとって特別な意味をもつから仕方がないとしても)ばかりをくり返すので、新鮮味に欠ける。しかもぜったい雪が降っている。恋愛をイベントでかたづけているふしがみられます。

あと、よく批判されるのは、性のモラルと癌に対する理解不足。前者はべつに構わないと思うのですが(十代ではないけれどトレンディドラマでその手の描写はよくあるので)、早いですよね。ヒロインが軽い女にみえる。十代がよく冬休み、ゴールデンタイムに放送すべき内容ではやはりないと思いますし。
後者のほうは、たしかに癌の罹患者から見たら理不尽な部分はいっぱいあるでしょうね。
ネットで言われてるように専門の医療用語まではつかったりしなくてもいいとは思います。ただ、やはりあるていどのリアリティは欲しい。癌といっても、なんの癌なのか触れていないし、病人っぽいメイクもしていないので、悲愴感が漂いません。髪の毛が抜けたというのも、ニット帽でごまかしているだけ。
原作では無菌室でキスしたとか、お菓子持ちこんだとかというありえない設定で、さんざん叩かれたようです。さすがに映画ではそんなトンデモ演出は省かれていましたけれど。どうせ不治の病にするなら、白血病とかもっとそれらしい病気のほうがよかったのでは。

それから原作が少女の一人称視点だからしょうがないけれど。脇役のキャラがあまり立っていなくてがっかり。ゆいいつ好演が光ったのは、優を演じた小出恵介氏。ヒロを進んでかえりみない川にたとえ、包容力のある優を海と表して、ふたりの男を対比させるあたりはおもしろかったのですが。せっかくの二番目の彼氏もつごうよく退場。
それにヒロが死んだ後、葬式にもいかず、回想シーンもなく、茫然自失になっているヒロインは、やはり共感できませんでした。

これ、実写ドラマにもなったけど評判芳しくなかったようですね。実写ではなくて、いっそアニメにして、実話ですなんて売りこまずにいれば、多少の矛盾点も見のがしてもらって、ふたりの淡い恋路も楽しめると思うのですが。

にしても、わざわざこれを年末に堂々と放映するTBSの意図がわかりません。わざと話題を蒸し返して、じつは反面教師として正しい恋愛のなんたるか、を訴えたかったとか、なんでしょうか?

恋空(2007) - goo 映画恋空(2007) - goo 映画

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