1955年のアメリカ映画「理由なき反抗」(原題 : Rebel Without A Cause)は、夭折したアメリカの男優ジェームズ・ディーンの名を不朽のものとした最後の代表作。白いTシャツのうえに赤いジャケットを羽織り、ジーンズ姿の若者は、まさにディーンの典型イメージ。
本作で描かれるディーンの役どころは、精悍な顔つきをしているが、繊細で脆さをもち、時にはひょうきんぶりをも見せる青年です。
青春ドラマにつきものの、恋と喧嘩のシーンはでてきますが、ディーンはすれっからしのヤクザ者ではなく、どちらかといえばお坊ちゃん。現代アメリカ洋画の、刺青したり、麻薬やったり、経験豊富だったりのティーンエンジャーから比べたらかわいいものです。
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引っ越してきた早々、酔いつぶれて警察に連行されてしまった17歳のジム・スターク。同じ夜、署内には夜間外出で補導されたジュディと、仔犬を射殺して注意された少年プラトーことサムがいた。
この二人、じつはジムの転入先のハイスクールの同級生。前の学校で憶病者呼ばわりした級友を殴ったため、転校したジムは人づきあいが苦手。クラスで孤立したサムと仲良くなるも、ジュディが付き合う不良仲間に因縁をつけられてしまう。
「エデンの東」同様、本作も父と子の葛藤と和解を描き、三人の同世代の男女を軸に物語が展開します。ただし奇妙な三角関係によって。
ジムの父フランクは気弱で、神経質な祖母と、勝ち気な母親の尻に敷かれています。ジムは気だての優しい父を愛してはいるけれど、雄々しい父親であってほしいと願っています。
我がままなジュディは、厳格な父から愛されたいと望むが、色気づいていく娘を父は見放しています。その反動から、素行の悪い男たちと親しくなっています。
サムは両親が離婚し、そもそも父親が不在。母は育児を放棄して送金してくるだけ。身の回りの世話をしてくれるのは、黒人のメイドのみ。
不良仲間のリーダー格、バズと車でチキンレースを行ったことが思わぬ結果に。責任を感じたジムがみずから出頭しようとする姿勢に心うたれたジュディは、彼に惹かれていきます。サムの教えてくれた空き家で、秘密の逢瀬。そこへ、サムも合流。
サムは、男らしくなった兄貴分のジムを、自分のいなくなった父の代わりと見ていたフシがあります。しかし、その注がれすぎた重い友情が、悲劇をもたらしてしまうことに。
ジムが友情を結んだのに失ってしまった男たち、バズは向こう見ずな勇気の権化、サムは理想の父親像を求めるあまり力や武器に依存した臆病さの象徴であったといえるかもしれません。サムの死は可哀想ですが、それを土台にして、ジムが父との葛藤にケリをつけ、共に歩もうとした終わり方は、「エデンの東」とやはり似てはいますね。
演じたのは17歳の少年ですが、精神的には父に甘えながらも反抗期の十代から、三〇代くらいまでの貫禄ある男を演じたディーン。本作がくしくも遺作となりました。動物の鳴きまねもうまいので、今に生きていたら、声優でも活躍していたんじゃないでしょうか。惜しい才能をなくしたものですね。
監督・原作は、義和団事変を壮大なスケールで映画化した「北京の55日」のニコラス・レイ。
出演はジュディ役に、 「ウエスト・サイド物語」 のナタリー・ウッド。
不良仲間のひとりを、若きデニス・ホッパーが演じています。
(2010年2月26日)
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