陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

いたずらな聖職者

2009-06-04 | 教育・資格・学問・子ども



最近TVではニュースをあまり観なくなったので世情にうといのだが、この話題のネットでの盛り上がりには驚いた。
京都教育大学の学生が、今年二月にコンパで女子大生を集団暴行した一件だ。

事件が立件されて判明したのは今月一日だが、ネットでの批判は犯人ではなく、この大学の学長に集中している。
それもそのはず、この学長が事件を知りながら、警察に通報もせず、隠蔽しようとしたからだ。学長の会見を報道で知らないので人となりはよくわからないが、よほど世論の怒りを買うような無神経な態度だったのかもしれない。
学長は「教育的配慮」によって、あきらかな強姦ではなく、公然わいせつの類として軽く片づけようとした。警察に知らせなかったのは加害者の心情を案じてとある。では、被害者の心情はどうなるのだ、と怒りたくなる理由もわかる。加害者の心情どころか、その実、評判を落として学生離れが起きるのをふせぐしたたかさがあった、と責められてもしかたないだろう。

しかし、いま声たかくして叫ばれている学長への人格攻撃こそ逆説的に事件の核心を隠蔽しているというか、歪めているような気もしてならない。
沖縄の米兵少女暴行事件でも、いろいろな事情をとって払えば、好意を勘違いした男が女を手篭めにするという犯罪にしかすぎない。なのに、やれ軍事基地問題だの、ついていった少女に問題があっただの、はてはその少女の親の教育が悪かっただの、と枝葉を広げすぎて、けっきょくいちばん傷ついたのは被害者だった。

まぎれもなく、この事件でいちばん憤慨しなければならないのは、行為におよんだ、あるいは加担していた六名だ。主犯格は容疑をみとめているが、他五人は「合意だった」と否認している。詳細がまだよくわからないので断定できないが、数人が事をはたらいたのは事実だろう。それを合意だといえるのだろうか?しかも、酒に酔った状態の相手で。
この犯人たちに対する大学側の懲罰は、実行犯四人には復学もできる無期停学処分、傍観者の二人は訓告というきわめて軽いもの。
退学処分になったとしてもおかしくはない刑事事件だ。しかも、そのうちひとりはすでに卒業している。今からでも学士号を奪ってくれ、といいたい。被害者の女性はまだ十九歳だから、あと二、三年は在学していなければならないのに、復学してきた犯罪者とおなじキャンバスに通うなど耐えられないだろう。

主犯格の男は二十五歳で四年ということは、浪人してまで入学した大学だったのだろうが、こんな犯罪者に温情措置なんてしてやる必要はない。
早稲田大学のスーパーフリー事件を思わせる、忌まわしい事件だ。
おそらく、こんなのは氷山の一角。これまで泣き寝入りしてきた被害者学生は多いはずだ。じつは私が在学時にも、ある同級生にそういう噂が流れたことがある。その頃はセクハラ対策など設けられなかったから、彼女も相談しようがなかったのだろう。

この犯人たちを「教育的配慮」で大目にみてやろうとした学長も、婦女暴行罪が若気の至りのあやまちみたいなものとでも考えていたのだろう。
学生運動などをしていて教官になっている人もいるから、こういう過失に寛容だったりするのかもしれない。たとえば、クラスで物を盗んだ子をさげずむ児童を「罪を憎んで人を憎まず」と諭す小学校教師のように。しかし、いじめにしたってそうだが、教育現場というのはじつは犯罪がありながら、匿う体質があるのかもしれない。だが、婦女暴行はかなり重い罪だ。しかも痴情の縺れと判別しがたいために、たいがい被害者がいわれのない中傷をうけたりもする、二次被害もおこりうる。
男は女をモノにして当然だ。こういう傲慢な勘違い野郎は、べつに教育大学だろうが、教師だろうが関係なく、どこにでもいるので事件がおこった大学の特徴だけをつついているのもおかしい。ついでに教育大学生というとかならず教師の卵といわれるが、じつは教育大出身の教員採用はここ数年とみに減りつづけている。教員をめざしてではなく、第二、第三志望で入学してきた者すら多い。教員免許もただの卒業用件資格にすぎないのだ。
教員になった者ですら、子どもかわいさでなく、公務員試験の一環として受けたという者が多い。
ともあれ、昨今、ただでさえ聖職とされた教師の権威は失墜してるのだから、各教員養成大学は仕切り直しを迫られるだろう。教員免許更新制だってスタートしたのに、肝心の免許認定機関がこれでは教員の質の回復など望むべくもない。

被害者は言うまでもないが、かわいそうなのは、この大学にまじめに通って勉学にいそしんでいる在学生たちだ。不憫でならない。

婦女暴行罪は被害者のその後の精神にあたえる負荷が大きい。
殺人事件とおなじぐらいに刑を重くしてもいいとすら願う。

ついでにひとつ心配なのは、この犯人たちの部屋からアニメのDVDやらゲームやらが出てくれば、またしてもよからぬ批判がとびだしそうなこと(苦笑)
にしても、中央大学の教官殺人事件といい、麻薬の密売で逮捕されたことといい、最近の大学は荒廃してるね。
学生運動みたいに政治性がなくなったのも。


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