陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「JSA」

2015-03-15 | 映画──SF・アクション・戦争
2000年の韓国映画「JSA」は、韓国と北朝鮮との境界線でおきた事件をめぐって緊張の走る半島を舞台にした社会派サスペンス。ややネタバレ気味なので要注意。

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朝鮮半島の南北を分断する共同警備区域(JSA)で、銃撃事件が起きる。容疑者は境界線上に倒れていた南のスヒョク兵長、射殺されたのは北の兵士二名、負傷したのが一名。
北へ拉致された兵士が脱出を図ったと主張する韓国、軍事境界線を侵そうとした南のテロ疑惑だと言い張る北朝鮮──双方でまったく異なる陳述書が提出された。事件の解明のために、中立国監査委員会からは韓国系スイス人の女性将校ソフィー・E・チャンが派遣される。

入院中の北朝鮮側の生き残り将校オ・ギョンビル大尉から事情徴収するも、口を割らない。
しかも被害者のうち、上尉ではなく下等兵のほうに私怨のあるような執拗な殺し方。さらには銃弾の数から現場には撃たれた三人と犯人以外の第三者がいたことが浮かび上がってくる…。さらに容疑者の知人として尋問を受けた男が自殺を図り、事件は迷宮入りの様相を帯びてきて。

話は事件発生の八箇月前に遡ります。
地雷原にはまった南のスヒョクを警邏中の北のオ・ギョンビル大尉、部下のチョン・ウジンが救ったことから、彼らは国の分断を越えて仲良くなります。シリアスかと思えば、妙にコメディさながらの微笑ましいシーンもあるのですね。ヒョンスクは同僚のソンシク一等兵にギョンビル大尉を紹介します。

二国間を隔てるものは一本の橋の真ん中に引かれたラインだけ。
勇気を持ってまたげばいいだけ。しかし、それはベルリンの壁よりも精神的に高い壁です。南北の兵士四人は夜な夜な交流を深め、互いの家族のことまで打ち明けるほどの仲に。ヒョンスクはギョンビル大尉に南への亡命を持ちかけますが、国への忠誠を誓うその心を動かすことはできない。
しかし、やがてある人物が登場したことで、四人のあいだに緊張が高まってしまいます。

事件が生じた背景には個人の友愛だけではどうにもならない、かたくなに骨の髄に染み込まれた愛国心があるわけですが、単に南北問題のみならず、その南北双方に属さず祖国を失った者に対する人道主義にあるまじき中立国スイスの偽善も明らかになっていきます。

南北の証言が食い違っているようで、実は口裏合わせだったのかもと思われる。
北朝鮮側を好意的に描いたことで韓国側の祖国統一への切なる願いが垣間見えます。ミステリー要素としてはやや弱いのですが、哀しくも美しい男の友情を描いたものとしては秀逸なように思われます。

監督はパク・チャヌク。
出演はソン・ガンホ、イ・ヨンエ。スヒョン役があのイ・ビョンホンなんですね。


(2011年7月17日)

JSA - goo 映画

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