陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

氷上のニューエイジ、蒼き舞

2012-11-07 | フィギュアスケート・スポーツ
例年、わりと大会ごとに選手の演技を報告していたのですが、今年は趣向を変えて、選手個々人に焦点をあててレポートしてみます。なぜかというに、フィギュアスケートは基本的に、シーズン通して同一のプログラムなわけですし。

今季のGPシリーズ、初回から話題をさらったのは、羽生結弦選手でしたね。
昨季は東日本大震災の被災地となった仙台の希望を背負って大躍進を遂げた十七歳。今季からは新天地カナダを舞台に国際派スケーターとしての飛躍が期待されるところ。GPファイナルでの表彰台を狙います。スケートアメリカ2012では、結果として準優勝に落ち着きましたが、その演技を掘りさげてみましょう。

ショートプログラムの曲目はゲイリー・ムーアの「パリの散歩道」。高橋大輔選手に似たワイルドさがあるウェアで登場。冒頭からあっさりと決めてくれます四回転ジャンプ。かなり難易度の高いしぐさからのトリプルアクセルで得点稼ぎ。ばねのあるジャンプの迫力と、氷上でのしなやかさが持ち味のスケーティング。膝の屈伸のやわらかさを生かした風変わりなしぐさでひと目をひきます。二年前のシニアデビューから考えると、かなりの成長度を感じますね。この時点で最終滑走ながらも、小塚選手を抜いてのトップに。スコアは95.07点。自己記録を12点も更新するという驚異のハイスコア。

文句なしだったSPに比べて、いささかペースを崩してしまったかに思えたのがフリーの演技。曲目はリシャール・コッシアンテ  ミュージカル「ノートルダム・ド・パリ」より。メロウな曲調にあわせて感情をこめた滑り、しかし、前半部に用意していた四回転をはじめ二度ほどミスがあり転倒。後半のダブルアクセル、トリプルループはきれいに決めるのですが、その後のジャンプで手を氷上に着くアクシデントや、さらに勢い余って三度の大きな転倒があり、なんとなく自分のエネルギーをコントロールできていない印象。SPのダイナミックさと比べると、脆さが目立ってしまったのが残念でしょうか。

スコアは148.67点と伸び悩み、フリーでは三位。最終的には243.74点。先輩格の小塚選手の逆転を許してしまいましたね。それでも、なかなかすばらしい得点ではないでしょうか。若さゆえの大胆さといいますか、果敢に大技に挑むエネルギッシュさは買われていいでしょうね。リンクのような固い舞台で劇的に回転するというのはわかるのですが、それとあの柔らかなリズムの運動を組み合わせる妙技というのが、もはや達人級といえますね。どうしたって、固いもののうえであんなに優雅に踊るという所作が信じられないわけで。

さて、その羽生選手のエキジビションの演目は、ドアーズ 「ハロー・アイ・ラヴ・ユー」。羽生選手といえば、なんとなくまだ幼さの残る中性的な雰囲気なのですが、ダーティな曲調とあいまってきびきびとした動きで、観客を魅了しています。大輔ワールドとはまたちょっと異なる色気なのかも。若干、背伸びしてる感じも否めないですが、自分の世界観をステージ上で色濃く演出できるタイプですね。日本人離れしたスタイルの良さも、演技を大きく見せてくれます。十代ながら、すでに大物の風格を備えたスケーター羽生結弦選手の次なる参戦は、NHK杯。地元宮城で開催され、浅田真央、鈴木明子、今井遥、高橋大輔、村上大介のほか日本人選手もエントリー。GPシリーズの最終戦となりますので、この大会でファイナル進出者が最終決定されることになります。


【関連サイト】
フィギュアスケートGPシリーズ世界一決定戦2012(テレビ朝日)


【過去のフィギュアスケート記事一覧】


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