陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「ベルサイユの子」

2016-04-23 | 映画──社会派・青春・恋愛
2008年のフランス映画「ベルサイユの子」は、ホームレスの母親と暮らす幼い男の子が主人公のお話です。試写会などもあって期待して観ていたのですが、ちょっと裏切られました。同じフランス映画で孤児ものの「モンド ~海をみたことがなかった少年」に比べると見劣りがします。しかもタイトルにあまり意味がないような。「大地の子」みたいな感覚でつけたんでしょうけれど。

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職もなく家もない母のニーナに連れられて路上生活を送る少年エンゾ。
母は福祉施設での保護を頑に拒み続け、ふたりは日夜、あてもなく凍てつく街をさまよってばかりいる。ベルサイユ宮殿近くの施設にいったん預けられた母子は、その森で野宿をする風変わりな男ダミアンと出会う。ニーナと一夜の関係を持ったダミアンは翌朝、彼女が息子を残して忽然とすがたを消してしまったことに気づく…。

うーん。この手の棚からぼた餅式に子どもがやってきて、育児に慣れない大の大人が子どもの親代わりになるストーリってもう使い古されまくっているんですよね。古くはジョン・ウェイン主演の西部劇の傑作「三人の名付け親」あたりで。

厄介な荷物を背負わされたもんだと時に癇癪を爆発させながら、ダミアンはホームレス仲間と共にエンゾの面倒をみはじめます。父性を募らせていくダミアンは、家出していたはずの両親の元へと戻り、親権の認定をしようとまで思い至る。

ドラマとしてはあまり大胆なしかけはないのですが、おそらくドキュメンタリーに極めて近い虚飾をまじえずに、社会からはみ出して行き場のない人間の悲哀を訴えたものでしょう。
子を捨てたニーナは母親としては最低といえるけれども、介護施設で誠実に働きはじめて迎えにきた彼女を見ていると無碍に非難もできない。いっぽう、エンゾの頼る先を見つけたダミアンはけっきょくもとの放浪暮らしから抜けだすことはできないでいます。

よくよく考えたらこの筋書き、アニメの「アルプスの少女ハイジ」に似ていますよね。ハイジを預けたのはいじわるな小母さんでしたけど。女性にとって子どもが重荷になる気持ち、わからないでもないですが、ちょっとひどい…。

監督・脚本はピエール・ショレール。
主演のギョーム・ドパルデュー(ジェラール・ドパルデューの息子)の渋い演技がなかなかいい味を出してはいるのですが、公開年に37歳で他界しているんですよね。

(2011年1月2日)

ベルサイユの子 - goo 映画

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