陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「トロイ」

2010-02-08 | 映画──SF・アクション・戦争
2004年のアメリカ映画「トロイ」(原題 : Troy)は、ブラッド・ピット主演で古代ギリシアのトロイ戦争を扱った歴史スペクタクル。テレビで観るのは二度目になります。

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スパルタ王メネラオスの美しい妻ヘレンと密通していたトロイの第二王子パリスは、彼女を母国へ連れて行ってしまう。怒り狂ったメネラオスは、かねてからトロイの繁栄に目を付け侵略の機会をうかがっていた兄王アガメムノンと共謀して、トロイ侵略をもくろむ。ギリシアの大軍の先頭に立つのは、最強の戦士との誉れ高いアキレス。そして迎え撃つトロイの勇者は、第一王子であるヘクトル。

アキレスの健闘ぶりで初戦を制するも、奴隷にしたトロイの巫女プリアモスをめぐって、アガメムノンとアキレスが対立。アキレスを出陣させないまま、第二戦に臨んだアガメムノンは敗北を喫してしまう。アキレスが剣をとらない影には、愛してしまった女の反戦感情があったに違いない。つまり、ひとりの女を巡って生じた二国間の戦争に踊らされたアキレス自身ですら、運命の女に惚れてしまったことで人生を狂わされたといっても過言ではない。勝ち気とはいえプリアモスには魔性性はないのだけれども、気の進まない王につかえながらも戦功を立て千年刻まれる名誉を渇仰したアキレスすら、ふやけさせてしまう魅力が彼女にはあった。
さらに、アキレスの命運を決定したのが、可愛がっていた従弟の死。自分の身代わりとなって敵に討たれたパトロクロスのために、アガメムノンへの反駁から戦線離脱していたアキレスはおのずと、ヘクトルとの真剣勝負を選ばざるをえなくなります。

つまり彼にとってのアキレス腱というのは、勇猛果敢ぶりの合間にみせる愛情であって、プリセウスを救うべく身を捨てて戦ったことが命取りとなってしまいます。

ヘクトルとの勝負に勝ったあとその遺骸の扱い方などは残虐に思えるのですが、プリアモス王に乞われて、プリセウスともども帰国させてやる温情をもみせる。荒くれ者でありながら、どこか憎めない勇者像アキレスにしあがっています。
剣をふるってもよし、槍を突いても逸品、鍛え上げた肉体美を武器にブラッド・ピットの迫力のあるアクションシーンもみもの。

ところで、矢がしのつく雨のように降り注ぐシーンや、大海にところ狭しと並んだ軍船はどこかで見覚えがあるとおもったら、「レッドクリフ Part I 」でした。人妻に横恋慕して奪いたいがために起こした戦争の名分までおなじ。

監督・製作は「アウトブレイク」のウォルフガング・ペーターゼン。
助演は「ハルク」のエリック・バナ。「ロード・オブ・ザ・リング」「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズのオーランド・ブルーム。
ホメロスの大叙事詩『イリアス』にヒントを得たものとされていますが、伝承上のトロイ戦争とはかなりの異同が認められます。たとえばトロイの木馬に隠れていたアキレスが登場するシーンなど。
が、しかし。エンターテインメントとしては楽しめるのではないでしょうか。神話を扱ったからといって忠実である必要はなく、英雄の名を借りた創作と考えれば足りるのではないかと思われます。
(2010年2月7日)



【画像】
ペーテル・パウス・ルーベンス『パリスの審判』(1639年作・ロンドン・ナショナルギャラリー所蔵)

ギリシア神話上、トロイ戦争は、三人の女神の美を競わせ羊飼いだったパリスに選ばせたのが、アフロディーテだっため引き起こされたとされる。
映画ではこうした神々の意思が働いたような場面はなく、アキレスが人間界の美しさを神が妬むとつぶやくなど、人間を中心とした史実としての趣きを大事にしている。

トロイ(2004) - goo 映画


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