陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「グッド・ウィル・ハンティング」

2010-04-10 | 映画──社会派・青春・恋愛
新しい旅立ちをする季節に観ておきたい映画があります。
1997年のアメリカ映画「グッド・ウィル・ハンティング」は、心を閉ざした天才青年が、おなじ境遇の精神科医と交流することで成長するヒューマン・ドラマ。
ただし、彼を一回り大きくしたのは、その精神分析医のみならず、男友達の存在も大きいという描き方。上流階級、インテリ階級へのそれなりの皮肉も籠められています。これはハーバード大学中退という主演のマット・デイモンの生い立ちからくる劣等感の裏返しと思われますが、いかがでしょうか。

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ウィル・ハンティングは、MIT(マサチューセッツ工科大学)で掃除夫をしているしがない青年だったが、じつはアインシュタインに劣らぬ数学の天才だった。
いつものように親友たちとつるんで警察沙汰を起こした彼は、MITの天才と謳われるランボー教授に身柄を預けられる。
だが、ウィルは横柄な態度で改心の意思は見られない。スラム街での育ち、両親からの愛情に恵まれなかったこと、そして数々の虐待が、彼のこころを閉ざしていた。
才媛の女性スカイラーとも付き合うが、ほんとうの自分を恥じて嘘で塗り固めてしまう。

ウィルの才能に惚れた教授は、彼を更生させたい一心で、旧友のセラピスト、ショーン・マグワイアの療法を受けさせる。ショーンもかつては才能あふれる人間だったが、妻を亡くしてからは誰も愛さずにいた。
そんなふたりが、衝突しながらも、次第に互いの胸の内を明かしあい、ついにウィルは新しい人生への旅立ちを決意する。


メインとなるのは、このふたりの年の差をこえた交流。父子の情のようなものを感じさせますね。
「太陽と月に背いて」のふたりの詩人のような関係とまでは至らないですが、それに近い精神愛を感じます。

そこに絡んでくるのが、ウィルの不良仲間だったチャッキーたち。
ウィルの才能を妬むことなく、掴んだ大きな幸福にとまどって踏み出せない臆病な彼の後押しをしてくれます。
さらに、ショーンとかつての親友だったランボー教授との友情のもつれ。ウィルの将来をめぐっての彼らの諍いが、ウィル自身を変えていくことに。

この作品がいちばん言いたかったのは、若者の成長には千もの万もの書物や情報ではなく、ひとりの理解ある人生の師がいればいい、ということではないでしょうか。
21歳という、大人と認められる年齢に達したウィルは、それを得ることもできた。なんとも喜ばしいことです。

さて、ウィルは最後にどんな旅立ちをするのか。結末はなかなか意外性を狙ったものでしたが。
ウィルがショーンの部屋に飾られた絵をネタにする心理学的な口舌は、なかなかおもしろく、美術史ファンには必見。恋人スカイラーの部屋には、マティスの「ダンス」が飾られていましたね。

主演は、青年ウィルに、知性と野性味とを不思議なバランスで併せ持つマット・デイモン。精神科医ショーンに、「レナードの朝」でも痴呆症の青年を蘇らせた恋に疎い精神科医を演じたロビン・ウィリアムズ。
ウィルの親友チャッキーに、「世界で一番パパが好き!」「ペイチェック 消された記憶」のベン・アフレック。
脚本は、マット・デイモンとベン・アフレックの共作。
監督はガス・ヴァン・サント。
本作は1998年度アカデミー賞最優秀助演男優賞(ロビン・ウィリアムズ)、最優秀脚本賞を受賞しました。

グッド・ウィル・ハンティング(1997) - goo 映画


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