一九八四年の映画「ホテル・ニューハンプシャー」は、ホテルを経営する八人家族の数奇な運命を描いた物語です。家族のつながりを描いた名作アメリカドラマといえば「大草原の小さな家」を思い浮かべますが、このシネマ、それほどの感動は期待できません。
以下、絶妙にネタバレありです、要注意!!
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学生時代にホテルのバイトをして知り合った妻とともに暮らすベリーは、高校教師。五人の子どもは個性派ぞろい、長男はなよっとしたゲイ、長女フラニーはしっかり者の美人、次男のジョンはイケメンだけどシスコン、次女のリリーは成長が止まっているけれど文学少女で大人びている、末っ子の三男は耳が不自由だけれどやんちゃざかり。これに、祖父を加えた八人が仲良く暮らしていましたが、ウィンは家族がいつまでもいっしょに暮らしていけるように、ホテル経営を夢見ていました。
廃校になった妻の母校の校舎を買い取って改装し、「ホテル・ニューハンプシャー」としてオープン。子どもたちも手伝ってくれますが、長男や次男がハイスクールでいじめられたり、フラニーがたいへんな目に遭ったりします。祖父が亡くなり、愛犬も失い、フラニーの失恋や事件もあってか、一家はオーストリアに住む旧知のホテルオーナーの誘いをうけ、移住することに。
アメリカのホテルを売却し、新天地で二番目の「ホテル・ニューハンプシャー」を開きますが、そこでも過酷な運命が待っていました。飛行機事故で妻と末っ子が墜落死。残った家族と旧友、その娘スージーと切り盛りしていたホテルには、娼婦や過激派など怪しい客層が。
過激派のテロに巻き込まれそうになりながらも、阻止した功績で、帰国したアメリカでは一家は英雄扱い。ベリーは失明してしまいますが、次女のリリーの書いた小説がベストセラーになって一躍有名人に。映画化もされて、フラニーは女優デヴュー。あくせく働かなくていい暮らしを約束されていたけれど、ベリーは道楽で三番目のホテル経営に乗り出す。
しかし、そのあともさらなる悲劇が、一家を襲います。
コミカルな雰囲気でごまかしているのですが、この家族に次々におこる事件は重いものです。あと、近親相姦や同性愛など禁断の愛が描かれているのですが、なにかネタとして描かれすぎていますね。
前半部のフラニーの身の上におこる事件というのが、あまり口にしたくないもので正直観るのをやめようかと思いましたが…、彼女を救った黒人青年の台詞は、なかなか胸をうつものがありますね。
ただ、運命の荒波に翻弄される家族に、あまり悲愴感をもたせないための、あえてテンポのいい話運びなのですが。そのため彼らの難局が軽く感じられすぎて、最後に示された生きる決意というのが、胸に響いてきませんでした。
しかし、おおかたの意見では、この暗くなりすぎない不幸が後味がよかったとのことです。
なお、主役はおそらく長女役のジョディ・フォスター。映画「コンタクト」(拙稿「エイリアン Not Found ? ─映画「コンタクト」評─」参照)で見かけて以来、ずっとスレンダーで知的な女性だとばっかり思っていましたが、およそかけ離れたイメージですね。この頃二十歳弱ですが、ちょっとぽっちゃりしてました(笑)彼女が女の子とイイ仲になるのですが、…百合を期待すると失望することうけあいです。
原作は、現代アメリカ文学の代表的作家ジョン・アーヴィングの小説。ジェットコースター展開に定評のある物語の力学をもった作家です。ニューハンプシャー州は彼の生地だそうで。
(〇九年二月七日)
ジョディ・フォスターとロブ・ロウが出ていたのは覚えてます。二人が姉弟で近親相姦関係になるんでしたっけ?
アーヴィング原作の映画は「ガープの世界」と「サイダー・ハウス・ルール」も観てまして、これらは記事にしました。どちらも面白かったけど・・。
“ニューハンプシャー”もいつか観てみよ。
コメントありがとうございました。
すごくクセのある映画でしたね。
>二人が姉弟で近親相姦関係になるんでしたっけ?
そうです。でも、ふたりとも別のところに落ち着くんですよね。
そのあたりまでの葛藤みたいなものがあまりなくて。けっきょく、好奇心だっただけ、みたいな。
へたな不倫ドラマよりタチの悪い恋愛ものであろうかと、思われてならなかったです。
>アーヴィング原作の映画は「ガープの世界」と「サイダー・ハウス・ルール」も観てまして、これらは記事にしました。どちらも面白かったけど・・。
すみません。未見のものはなるべく深く読まないようにしております(汗)そちらの作のほうが代表作なんでしょうね。
タイトルだけは知っているけれど、観たことがないというのが、たくさん。
レヴューを書くのは早いのですが、鑑賞時間がゆうに二時間はとられるのが、映画レヴューのつらいところですね。とくに観終わってなにも残らなかったときは、むだに疲労感が…(苦笑)
もし観る時期が違えば、これもまた良作に思えるんでしょうけれど。