陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本映画「沈まぬ太陽」

2011-02-12 | 映画──社会派・青春・恋愛
休日だからということで、四時間枠をとって地上波放映されていたのが2009年の話題の邦画「沈まぬ太陽」
原作は、山崎豊子の同名ベストセラー小説。監督は「ホワイトアウト」の若松節朗。
最初の一時間は見逃してしまいました。

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日本が高度経済成長をむかえた昭和四十年代。
国民航空の一社員にして労働組合の委員長をつとめた恩地元は、アフリカ大陸での不本意な赴任を言い渡される。家族とも離ればなれになり、孤独感を募らせる恩地だったが、十年目にして帰国命令が下る。本社に復帰した彼がみたのは、かつて同志として闘った組合員の裏切り、そして企業の腐敗した体質だった。

主人公の恩地と対照的に描かれていくのが、同僚の行天四郎。
労組を抜けだした彼は、まさにその名の示すとおり、経営陣におもねり、昇る朝日のいきおいで出世街道を歩み出します。

そんな折りに起こったのが、未曾有のジャンボジェット機墜落事故。
遺族の感情に寄り添い真摯な対応を心がける恩地に対して、国民航空の新代表取締役に就任した国見の尽力が加わります。しかし、その裏では、政界と癒着した経営陣の金満体質が明るみになっていくのです。

行天にはそれなりの天罰が下るのですが、いっぽうで恩地も国見も最後はけっして幸福な結末を迎えるとはいいきれません。
大作との誉れが高いのですが、いささか退屈すぎるかな。主演の渡辺謙、助演の三浦友和ら豪華なキャスティングに支えられているから見れはするものの。

タイトルは、恩地が最後にみたアフリカの地平線に沈まぬ真っ赤な太陽を指しているのですが、日の丸の象徴であることは容易に予想できます。ただ、日本の企業内でのごたごたから解放されてアフリカでの生活の方が満ち足りている、という描き方は首をひねりたくなるんですよね。アフリカや中東のほうが、政府高官や警察組織の賄賂の酷さは常態化していて、日本と比較にならないし。治安の悪化で日本人の誘拐や強盗も耐えないし、人種差別は横行しているし。

原始的な風景や野生の動物の生き様に癒されるという気持ちはわからないでもないのですが、日本で行われいる醜聞ドラマの数々をはるかにしのぐ現実のすさまじさを経験してきた現代にあっては、このお話にいまさら衝撃を受けるまでもないのではないでしょうか。

ただひとつ評価するとすれば、会社の理不尽に耐える日本人的サラリーマンの愚直さにあるていどは共感できることと、モデルにしたと目される日航機墜落事故の犠牲者の悲しみに添うたこと、タブー視されていた巨大企業の暗部に切り込んだもの、であったといえることですね。ただそれぞれの扱い方が紋切り型で半端な感じ。もうすこし、納得のいく解決法がとられたらいいのにと思わずにはいられませんでしたが。

作家がでっちあげたサラリーマンのドラマは、小説であれ、映画であれ、たいがい絵に描いたような大企業で現実的ではないので好きになれません。団塊の世代あたりには受けるだろうけれど、大企業に勤めたこともない人間や、若手の世代からすれば、古くさいサラリーマン映画にしか思えなくもないですね。
社会派ドラマは視聴者の人生観しだいで評価が分かれますが、そのいい例に思えます。

おなじ原作者の「白い巨塔」や「不毛地帯」のようにドラマ化したほうがよかったような気もします。ドラマにすればスポンサーがつきそうもないので厳しかったのかもしれまんせんけれどね。

(2011年2月11日)

沈まぬ太陽 - goo 映画

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