陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

日本映画「霧笛が俺を呼んでいる」

2016-06-09 | 映画───サスペンス・ホラー
1960年の映画「霧笛が俺を呼んでいる」は、孤高の船乗りが連続殺人事件に巻き込まれるサスペンス・アクション。和製ジェームス・ディーンこと赤木圭一郎の主演作というので興味があって手にとってみたのですが、開始三〇分ぐらいで薄々展開が読めてしまうので飽きてきました。
石原裕次郎の作品とおなじで、主演の売り出し若手スターが派手に喧嘩して、主題歌を歌ってという、日活おなじみのパターンですね。

霧笛が俺を呼んでいる [DVD]
霧笛が俺を呼んでいる [DVD]熊井啓 おすすめ平均 stars横浜が舞台のスタイリッシュなアクションAmazonで詳しく見る by G-Tools



エンジントラブルで出航できなくなくなったため、横浜の街に降り立った航海士の杉敬一は、バーで乱闘騒ぎを起こし警察に事情聴取された。釈放されて、旧友の航海士浜崎を訪ねたところ、海に身投げした浜崎が水死体であがったときいて驚く。
浜崎の愛人だった美也子や妹のゆき子の証言から、杉は友人の死に疑問を抱く。その裏で杉は警察にマークされつづけていた。
そして、浜崎に面識のあるウェイトレスが殺され、杉も謎の一味に狙われる羽目に…。

前半で浜崎が麻薬の売人をしていた事実が露見したあたりから、もうお気づきでしょうが、大筋は「第三の男」を真似ています。眼光鋭いオーソン・ウェルズ演ずるところの「真犯人」にあたるのは葉山良二なんですが、お坊っちゃん顔で適してはいないような。地下道での逃亡シーンまでパロっています。

しかし、「第三の男」だけでなく、そもそも海の男を主役に据え桟橋での喧嘩シーンを取り入れたところからしてエリア・カザンの「波止場」、さらには潜伏中の「真犯人」が鏡をのぞくシーンも同監督の「エデンの東」にインスパイアされたのだと勘づきましょう。

やたらと洋物のインテリアが多い部屋や、ネイビーブルーの壁紙が多いつくりもヒッチコック作品を意識してるなと感じますし、船のトリックも「レベッカ」なのかしらん、などと考えてしまいます。

失礼ながら筋書きでは興ざめなんですが、あくまで今は亡きスター赤木圭一郎(しかし、ディーンと比べられるほどかっこいいとは思わないし、裕次郎よりは台詞回しははっきりしているがさほど演技力があるほうではないし、歌唱力はない)や、他の懐かしの銀幕スターを拝むためだけの作品といっていいでしょう。

共演は、当時の日活のトップ女優だった「嵐を呼ぶ男」で助演の芦川いづみ
新人時代の吉永小百合が浜崎の妹役を可憐に演じています。

監督は山崎徳次郎。
撮影の姫田真佐久は、日本を代表する映画カメラマンです。「ハチ公物語」を担当し、本作ではなかなかスタイリッシュなカメラワークをみせています。

(2010年3月16日)


霧笛が俺を呼んでいる(1960) - goo 映画


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 無駄に多い鉛筆の使い道 | TOP | ひとに笑われた歴史があって... »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 映画───サスペンス・ホラー