陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「252 生存者あり」

2011-02-22 | 映画──SF・アクション・戦争
邦画にはあまり本格的な災害パニックムービーはないのかしら、と思っていましたが、その考えを改めたくなる一作を視聴しました。
2008年作の「252 生存者あり」です。

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関東に大地震が発生して数週間のち、東京上空を巨大にふくれあがった台風が通過。銀座一帯に、激しい雹(ひょう)が降り負傷者が続出。海際では、大規模な高潮が発生し街を飲み込む。パニック状態に陥った人びとは地下鉄構内へと逃げていく。
七歳の娘しおりの誕生日を祝うため、妻子の待つであろう銀座へと急いでいた篠原祐司も現場に居合わせていた。母親とはぐれたしおりは、地下鉄新橋駅に取り残されていたところを、祐司に発見される。だが、そのとき、駅構内に流れ込んだ大量の水によって親子ともども押し流されてしまう。
新橋駅は崩落し、祐司父娘を含めた五人が地下に閉じ込められてしまった…。

SFXでかなりつくりこんである映像も迫力がありますが、そのドラマにも注目。
閉鎖的な場所に取り残された五人が、勇気と知恵をしぼって生き延びようとする。これまで観てきたあまたのサバイバル物の域は出ていませんが、祐司父娘をのぞく三人──研修医から落ちぶれた青年・重村、大阪のしがない中小企業の社長で営業中の藤井、そして韓国人でホステスのスミンにも、それぞれの負い目があって、その裏話にもほろりとさせられます。
じつは祐司を含めた大人たち四人ともが、それぞれ崖っぷちの追いこまれた人生を迎えようとしていたのですね。そこをまさかの災害に見舞われてしまう。

しかし、主軸にあるのは、かつて東京消防庁の消防救助機動部隊の隊員でありながら、苦い挫折体験をもっていた祐司の物語。そして、難航する救助活動に業を煮やしている、兄の静馬をふくむレスキュー隊のメンバーたち。台風の予測を立てて、被害を最小限に食い止めようとする気象庁の若手職員も加わってきます。
家族を救うために、身近な一人を救うために、あともう少し手を伸ばせた救えたはずの人命を見殺しにしてもいいのか。だが、しかし、ひとりの命にこだわるあまりに、被害を拡大させてもよいのか。そんなよく耳にするけれども、決して問うことを忘れてはならないジレンマが、救助を信じてあらゆる手段を尽くす地下の生き残り組と、地上で対策を練る隊員たちのあいだに投げかけられ、そのたびに、人びとは衝突し、そして結ばれていきます。

252というのは、レスキュー隊仕込みの祐司が試みた、壁を叩く無線の救難信号のこと。
本作でいちばんいい役どころを担っているのは、子役のしおりで、彼女は生まれつき耳が不自由で声を発することがほとんでできません。しかし、それがために、この少女こそが、地下ではもっとも冷静だったともいえる。
いまや地上へは声の届けられない者に等しい祐司たちは、時に、浅ましく罵り合い、時に絶望に打ちひしがれしまう。特に、最初はリーダーシップを発揮していた祐司が、まさかの落盤でしおりを失いそうになる場面での慟哭ぶりは、聞くに堪えません。

大規模な災害だったのに、局所的な救助活動に絞られてしまうなどの難点を目をつぶればまま、楽しめるのではないでしょうか。ただし、私は「海猿」などを観たことがないので、すなおに感動できましたけど、免疫がある方には評判は悪いかも…。

洋画の災害パニックに比べれば、かなりのご都合主義で結果は分かりきってはいるものの、やはり日本を舞台にしたパニックムービーで、家族の絆や、その場に顔合わせした被災者が協力し合うこころ温まる作品は、今後も製作されてほしいと願います。

出演は、「海猿」シリーズの伊藤英明、内野聖陽、山田孝之、木村祐一、大森絢音(子役)など。
監督は、「花田少年史 幽霊と秘密のトンネル」の水田伸生。「Mother」の演出もされてるんですね。どおりで、子役が輝いていると思いました。

ちなみに公開直前に、「252 生存者あり episode.ZERO」というスピンオフドラマが放映されていたようです。


252 生存者あり - goo 映画

(2010年10月1日)


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