陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

マリア様がみてる 2014→2004

2014-08-25 | 感想・二次創作──マリア様がみてる

2004年という年は、百合作品が放出した年として語られることが多いのですが、そのトップバッターというべき作品が、「マリア様がみてる」。
原作のライトノベルは集英社のコバルト文庫。1997年に読み切りとして発表されたものが、その後、1998年に単行本シリーズとして書き下ろしされたのがはじまり。刊行数39巻を数え、ロングセラーとなりました。


マリア様がみてる37 フェアウェル ブーケ (集英社コバルト文庫)
マリア様がみてる37 フェアウェル ブーケ (集英社コバルト文庫)今野緒雪 ひびき玲音 集英社 2012-04-28売り上げランキング : 23237Amazonで詳しく見る by G-Tools



アニメは2004年の一期のあと、第二期も同年中に。OVAとして第三期が2006年に。そして第四期はふたたびテレビアニメとして、2009年に放映されました。原作のストックが豊富なので当然ですが、四期まで制作されるラノベもなかなかないのでは。ライトノベルの有名作シリーズでは「精霊の守り人」シリーズや、「十二国記」シリーズが挙げられますが、ここまで刊行されていませんし、メディア展開もされていないでしょう。(私が知らないだけで、他にあるかもしれませんが…)

学園ものなので、作画しやすいという事情もありそうですね。またドラマCDやWebラジオもあり、漫画版(ノベルの挿絵と印象が違うので評判よろしくなかったとも聞きますが)もあります。

2008年には、ヒロイン福沢祐巳の弟を主人公に据えたスピンオフ『お釈迦様もみてる』シリーズもはじまり、こちらは本編のGLに比べると、いくぶんBL風味。本編と並行して発表はされていたので、いつか「マリみて」のほうも、なんとなく続くと思っていたんですよね。

お釈迦様もみてる―紅か白か (コバルト文庫)
お釈迦様もみてる―紅か白か (コバルト文庫)今野 緒雪 ひびき 玲音 集英社 2008-08-01売り上げランキング : 411788Amazonで詳しく見る by G-Tools



が、しかし。
イラスト担当のひびき玲音先生がツイッターで明かしたところによれば、2013年11月30日発売の「シャカみて」最終巻をもって、このシリーズ打ち止めらしい。しかも、このニュース知ったのが、つい最近(2014年5月)だったので、びっくりどっきり驚きでした。「シャカみて」は「スクールフェスティバル」以来、追いかけていませんで。今野緒雪先生は、最近、旧作の「夢の宮シリーズ」をリメイクしたり(マリア様がみてるシリーズ最新刊、その前に)、一般小説向けを書かれたり(小説『いつか、君へ Girls』)しているので、ラノベから遠のこうとしているのかもしれませんが、このシリーズ愛着があっただけに残念ですね。いまでも、マリみての新巻を待ち望んでいるひと多いはず。

基本的にライトノベルはほとんど読まないのですが、管理人史上、同一作家の関連作ふくめて40巻以上も集めたのは、この「マリみて」シリーズぐらいですね。(ラノベで集めたのって、氷室冴子のジャバネスクシリーズぐらいだと思う。漫画だと「ドラゴンボール」)

ちなみに2010年秋には実写映画も公開されました。
二次元を三次元にするのはいかがなものか、という向きもあったでしょうが、見たところ、そんなに悪くはない出来映えでしたね。

この「マリア様がみてる」という作品は、ファンタジーなのですが、あくまで日常劇のため、ひじょうに読みやすかったです。思春期ならば思い当たるであろうセンチメンタルな学園風景。ほんらいは少女向けであったろうに、なぜか男性陣に好評を博し、百合というジャンルを盛大に剃らしめた記念碑的作品。吉屋信子、川端康成、松田瓊子らが手がけていた少女小説の世界にあったエス文化に、池田理代子の『おにいさまへ…』に描かれたハイソサエティを導入したようなつくり。ここ近年とみに、百年前への憧憬なのかわからないけども、やたらと大正浪漫への関心がすすみ、ドラマ化(NHK朝ドラ「花子とアン」)やコミック化があったりしますが、あれは、期間限定の、女学校出たらすぐお嫁にいくという女性に許された、ある意味「処女連祷」みたいなものですよね。「マリみて」でも在学中だけの絆と、卒業してのちの自立や姉としての成長が描かれています。

上級生を「さま」付けで呼び敬うという乙女の園であり、薔薇ファミリーという特権的な役職もあるのですが、俗にいうスクールカーストみたいな格差は見られません。いわゆる、生家の財力や親の学歴、本人の外見や能力、さらには恋人や配偶者のステータスで、お互いを値踏みしマウンティングしあわなくていい世界。彼女たちはただひたすら友だちや先輩、教師たちとのすれ違いや想い合いによって、ざわめいてればよろしい。いざこざはあるけれど、読後感爽やかなのはいいですね。現代ストーリーですが、あまり流行を追ったような持ちものを持たせてはいないので、「セーラームーン」のように、親子で楽しめる小説といえるでしょうね。いかがわしい描写もないので。

もう続きが見られない(かもしれない)のが惜しいですが、折りを見て、読み返してみたい名作です。



【関連記事】
ふりさけみれば、このディケイド 2014→2004
あのとき、あの年が日本のピークだった?! 十年ひと昔過ぎてみれば。大好きなあの作品はいま、こうなっていました。



この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 映画「アビエイター」 | TOP | 2014年の残暑見舞い »
最新の画像もっと見る

Recent Entries | 感想・二次創作──マリア様がみてる