陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

神無月の巫女公式小説集(二)

2011-11-10 | 感想・二次創作──神無月の巫女・京四郎と永遠の空・姫神の巫女



神無月の巫女公式小説シリーズご案内の二回目。
今回はDVD五巻、六巻のブックレットより。姫千歌づくしの公式小説です。なぜ、ブックレットを読むのか。なぜ、アニメを観るのか。そこにいけば純愛が描かれているからなのです。



「その頃の二人(大神神社、御神前にて)」(DVD五巻ブックレット所収)
神無月の巫女_特別映像(Part.5)&神無月の巫女_特別映像(Part.4)の前半
五巻といえば、プレ修羅場中の第九話、十話。この時期ならありえない、姫子と千歌音が二人して仲良くアメノムラクモ復活の儀式にいどむ場面。アニメ本編だと三話あたりでしょうか。

本編の苦行に近しい雰囲気はなく、ふたりの睦まじさに終始ニヤニヤすることうけあい。姫子のぐぅ、を「可愛いお昼のチャイム」と表してしまえる千歌音ちゃんには惚れること、なおうけあい。これもひょっとしたら初期稿の没ネタだったのでしょうかね。最後によけいなひと言を洩らす姫子は、もういちど千歌音ちゃんにたっぷり可愛がってもらえばいいと思います!(爆・爆・爆)

こういう手をとり合って肩貸しあって儀式に励んだことがあって、その想い出を胸に刻みながら、姫子はひとり逞しく祝詞を読み上げ、みごとアメノムラクモ覚醒に至ったのでしょう。それまでに千歌音ちゃんといっしょに頑張った積みあげがあってこその、強い絆あってこその封印解除。姫子にしてみれば二人でやり遂げたことなのです。ゆえに、アメノムラクモ復活=巫女の強い愛の証なので、オロチ化したとうそぶく千歌音のほんとうの想いをつゆ疑うこともなかったのでしょう。人を好きになってはいけないと思っていた姫子が、はじめて本気で好きになったとき、その真価が問われるのは最終回にて。



「輪廻の花園~あり得ざるもう一つのかたち~」(DVD六巻ブックレット所収)
神無月の巫女_特別映像(Part.6)
なんと、最終話のあの感涙エピソードの別ヴァージョン!!
プロット段階のものをブックレット用に再構成したものです。これぞ元祖姫千歌SS(公式なんだからあたりまえなのですが)とでもいうべき珠玉の一編。すばらしい! これぞ、ファビュラス!

アニメ本編ですと、アメノムラクモ内で怒濤の愛の告白→オロチ神大撃破(とってつけた感のあるソウマ最後の見せ場(笑))→のどかに別れ惜しむ最後の花園とつづきます。
ここはいわば現実には事切れた千歌音の精神世界なんでしょうね。このアニメの花園での会話はさほど長くはないのですが、こちらの小説ではついつい脚本家先生の筆が進みすぎたのか、映像にするとすこし尺がはみ出るのでは、と危ぶむほど長くてボリュームたっぷりで嬉しい。というか、薔薇園だけの構成にまとめたのでしょうかね。おそらく、出逢ってからの半年間でもっとも濃密な二人だけの時間を共にしたことでしょう。





やっとやっと想い相通じあえた、わかりあえた姫子と千歌音が、未来のプランを立てるわけですね。
その約束がやがて迫るアメノムラクモの無情なる発光の宣告によって潰えるのだとわかっているのだとしても、二人はそう結ばずにはおられない。二人は昨日とおなじ幸福な明日を語ってみずにはいられない。季節の巡りごとに足跡を残そうとする、たしかな想い出を紡ごうとするその心意気。千歌音が提案する計画もろもろに、のんびり屋の姫子ときたら、そのラインナップを聞いただけでもうお腹いっぱい。聞いているこちらもまた、もし、それがすべて実現したらと興奮しきりというものです。それすべてまるごと映像化してください、お願いします。さてもさても、この二人、リアクションの差がいいですよね。まったくもって、このふたりの時間の使いかたを象徴するような、性格の違いをあらわにするようなエピソードですよね。




ここでの千歌音の心境は姫子に対してもはや無防備に開かれていて、忖度することはたやすいことでしょう。
姫子を喜ばせたいがためのもろもろのこの思いつき。裏を返すと、あれだけ駆け足で十六年の人生をひた走りに走り抜いてきた千歌音でさえも、もっともっとやり残したいことがいっぱいあった。それはすべて姫子といっしょに成し遂げたいことだった。その虚しさ、その苦しさ、その切なさがいやというほど感じられる言葉なのです。これも映像化されていたら、ずいぶんと泣ける部分ですよね。そして、その計画を姫子に遠慮して、最初は語りたがろうとしなかったあたりが、なんとも千歌音ちゃんらしい優しさ、いじらしい心配りというべきか。それを伝えてしまうと未練が募ってしまうだろうから。それを口にするとまた姫子の主体性を奪ってしまうから。だから、千歌音は言い渋っていたのですね。





そして、千歌音の自虐心からくる台詞がいささか重いですね。
姫子を騙すためとはいえ、自分の犯した一夜の過ちが許せないと。そしてまた、ほんとうを伝えてはいけなかったのに、うっかり吐露してしまい、それが姫子の未来まで縛ることを何よりも罪深いのだと、こころを竦めているのだと。そこで、後半いささかテンポが鈍くなってしまう。このプロットだと千歌音は月の社の扉の奥までいってもまだまだ後悔していそうなんだな。闇のなかでさめざめと忍び泣いていそうなんだな。とりどりの美しい薔薇にかしづかれている花園で、それを言ってしまうと、翠のまぶしさも花の薫りもくすむというものか。

この自虐でひたすら自分を追いこもうとする一連の会話は、アニメだと薔薇園手前のムラクモ黄金空間内で交わされています。そこでは千歌音が自分を責めるのはもっぱら前世で姫子を手にかけたことについて、なのですよね。姫子が千歌音のほんとうを受けとめるのも、神機の胎内に抱かれてのみ。ひょっとしたら、ムラクモ内では巫女はほんらいの性格(陽の巫女の陽性、月の巫女の陰性)に戻るのかも…。

(無駄に長くなったので次回に続く)


【関連記事】
神無月の巫女小説集 まとめ

【アニメ「神無月の巫女」 レヴュー一覧】


【追記】
11/8
ウェブノベル「姫神の巫女」がミニ更新されています。
繰り返すのか、飛び抜けるのか、漸進するのか、それが問題だ。
しかし、待遠しい…。


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