陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「バンテージ・ポイント」

2012-11-13 | 映画───サスペンス・ホラー
2001年に発生した9・11事件から九年。
それを見越しての放映だったのでしょうか。本日(2010年9月10日)の金曜ロードーショーは、2008年作の米国映画「バンテージ・ポイント」(原題 : Vantage Point)
合衆国大統領暗殺未遂事件に絡む真相を、群像劇で追ったサスペンスです。

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スペインのマヨール広場、正午過ぎ。
テロ撲滅を図り、西洋諸国とイスラム世界との和平交渉を強く誓うサミットが開かれていた。広場を埋め尽くす大観衆、壇上にあがる合衆国大統領アシュトンの姿を、中継カメラが捉えていた。
突然、大統領が狙撃され倒れ伏す。当たりはパニックとなり、逃げ惑う人びとの波を抜けて、護衛官たちが駆けつける。数秒後、広場周辺に複数回の爆発が起こり…。

さて、最初にこの事件を知らせた目撃者は、ニュース番組生中継報道によって。
第一の目撃者にして女性ディレクターのレックスの視点というのは、まさに現場にいないわれわれ視聴者の立場。
そこから、一人、二人と、事件の発生現場にいた目撃者の視点を借りて、真相が炙り出されていくのです。第一の視点が追った者の目を借りて事件が再現され、その第二者に映った第三の者で話が運んでいくといったふうに。

第二の目撃者はシークレットサービスの一員、バーンズ。
数年前の大統領狙撃事件で重傷を負い、そのトラウマも抱えながら、同僚のテイラーの口添えあって復帰を果たしたばかり。狙撃直後に壇上にあがろうとした不審な男を拘束。その男エンリケは爆発の混乱に乗じて逃亡を図ります。

第三の視点は、その男エンリケが主人公。
はたして彼は、スペインのサラマンカ市長を護衛する私服警察官だったのか。彼は自分の恋人が、怪しい男と逢引をしているのを目撃。そして、なぜか爆弾のことも知っていて、避難するように叫んでいました。

第四の視点は、バーンズが狙撃犯確認のため接触した、旅行者の黒人ハワード。
彼はホームビデオカメラで現場を撮影していました。
人の良さそうな男ですが、行動力はありそうです。広場で出会った小さな女の子を救うため、また好奇心から追いかけた逃亡犯の、意外なスクープを収めることになります。

そのハワードのカメラに映っていた、意外な人物たちが真犯人であることが分かります。そして、犯人側グループにも複雑な事情が絡み合って、事件が起きてしまったことが明らかに。

おもしろいのはその目撃者に、当事者である大統領本人の視点もあること。彼の物語は五番目となります。
彼の登場から、狙撃時点まで時間が揺り戻されていたのでもどかしかった話の輪が、いっきょに前へ前へと押し出されていきます。

最終的には、大統領無事身柄確保とバーンズの復活で帰結をみるわけですが、犯人側の末期に情状酌量できるような舞台を用意したり、黒人の父親に華をもたせているあたりは、米国がヘイトクライムに慎重になっている姿勢を伺わせますね。

構成は緻密に練られているけれど、前半部でなんとなく犯人ではないと臭わせるある人物をカモフラージュすべく、畳み掛けるように別の伏線を重ねたともいえますね。類似のような群像サスペンス劇として「クラッシュ」がありましたが、それよりは、ラストで救われた気分にはさせてくれます。


出演は、「エデンより彼方に」のデニス・クエイド、「プラトーン」のフォレスト・ウィテカー、「白いドレスの女」のウィリアム・ハート。
人種で犯人像が割れないように、イスラム系、ヒスパニック系の顔だちを多用したのではないかと思われます。

監督は、本作が銀幕デヴューとなるピート・トラヴィス。

(2010年9月10日)

バンテージ・ポイント - goo 映画

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2 Comments

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Unknown (けん)
2012-11-14 09:58:52
TBさせていただきました。
またよろしくです♪
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三歩進んで二歩下がる映画 (万葉樹)
2012-11-15 19:51:56
水前寺清子の365歩のマーチがよぎった管理人です(笑)
八人もの視点を使い分けて、重層的な謎解きにしたのがうまいと思う、センスのいい映画でしたね。もう少しヒューマニズムに根ざしたものならば、デンゼル・ワシントン主演の「戦火の勇気」かな。

この、すでに起きたひとつの出来事を複数人の視点で掘り返す手法、映画やアニメのような映像が流れていくジャンルなら許せるのですが、小説でやられると興ざめなんですね。原稿料欲しさの字数稼ぎにしかなっていなくて。サスペンスならまだいいのですが、恋愛ものでお互いの心中が分からないまま、交互に視点が移り変わっていくようなのは、たいがい片方の心境が予想されるので、構成としてはあまり意味がないと思えます。

ただし、その登場人物が魅力的で好ましいならば、おなじ出来事を繰り返されても我慢できますけどね。
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