陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「僕はラジオ」

2017-08-30 | 映画──社会派・青春・恋愛
ひと足早く二学期がはじまった地域もあるようですが、夏休み明けはもうすぐ。
学校に行くのがなんとなく憂うつだなというお子さんも、やや涼しくなって体調の狂いが生じてしまったお疲れ大人の皆さんも、こころ癒されそうな、こんな一作を。

2003年のアメリカ映画「僕はラジオ」は、ヒューマンコメディ。
軽度の知的障害のある黒人青年と名コーチとの交流を描く、実話を元にした感動作です。

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1976年、サウスカロライナ州アンダーソン。
地元の名門ハナ高校で運動部の主任をしている教師ハロルド・ジョーンズは、フットボールの練習場を覗く黒人青年に気づく。

ある日、ラグビーボールをくすねた彼が部員たちに手ひどい仕返しをされる。
青年を救ったハロルドは、その日から毎日コートに駆けつける彼に興味をいだきます。青年は軽度の知的障害があり、ラジオに強い関心を寄せているようです。ハロルドはラジオと名づけ、練習を手伝わせることにしますが、それがチームメイトのペースを乱し信頼を損なうことに。ライバル校との試合にも負けてしまいます。しかし、その後、チームとは打ち解けるように。

しかし、名門であったフットボールの戦績はがた落ち。
ラジオに気をとられているハロルドに対し、生徒の親など町の支援者たちや学校関係者からの風当たりは強くなります。
しかし、教育を受けた事のない貧しい生まれのラジオを高校生として扱い、育てようとする。その情熱にいつしか校長も折れ、協力してくれるように。校内放送も担当し、町中で知られた存在になります。

周囲も好意我集まってくるようにはなりますが、思春期の娘メアリーとは疎遠になったり、有力者の息子といざこざがあったり。ラジオの存在はやがて保護者たちの会合にかけられて、その処遇が争われることに。
そこでハロルドは自分の教師生命をかけて、ラジオの未来を開く道へと導いてやるのです。彼がそこまでラジオに入れこむのは少年時代の後悔があったからでした。

構造としては「グッド・ウィル・ハンティング」に近いのですが、障害に対する無理解、そしてアメリカ社会特有の有色人種への偏見という二重差別をあつかった社会派ドラマであり、かつ実話であることで説得力を増しているのが魅力的です。
日本でもとりわけ精神薄弱者に関する偏見は根強く、なにかあれば、問題児として扱われてしまいます。取り締まり監視をするよりも、彼らなりのやり方で社会で受け入れられる場をつくることが大事だと訴えています。

知的障害者が、健常者にはない純朴さと優しさを持っているという描き方はオーソドックスなのですが、人間の知能と悪意とは表裏一体であることをひしひしと感じさせてくれます。
異端者を受け入れて大きく成長した若者の態度がさわやかで、印象に残ります。

ラストに実在のラジオことジョーンズ・ロバート・ケネディ氏が登場しますが、ひとりの良心的な教育者の力なくば、この名物コーチが生まれなかった。それを思えば、なんともいえぬ深い感動に浸ってしまわざるをえません。

監督はマイク・トーリン。
主演はキューバ・グッディング・ジュニアと、「プレイス・イン・ザ・ハート」「アポロ13」のエド・ハリス。

僕はラジオ-goo映画

(2011年1月29日)

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