陽出る処の書紀

忘れないこの気持ち、綴りたいあの感動──そんな想いをかたちに。葉を見て森を見ないひとの思想録。

映画「緑色の髪の少年」

2013-04-29 | 映画──SF・アクション・戦争
1949年のアメリカ映画「緑色の髪の少年」(原題:The Boy With Green Hair )は、反戦映画なのだそうですが、抽象的すぎてあまりその意図が伝わってこなかったような気がします。

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髪の毛を剃られた少年が警察に保護される。
応対にあたった児童心理学者のエヴァンズ博士は、彼から信じられない話を聞く。

ピーターと名乗る少年は、ロンドンの富裕層に生まれたが両親を戦争で失い、アメリカ人の老人に伴われて渡米。芸人であった老人の孫として可愛がられ、学校生活も楽しく過ごしていた矢先、ピーターの髪がとつじょ、緑に変化してしまう…。

戦災孤児たちに教えられて、自分の髪の変化が、知り得なかった両親の死をもたらした戦争の恐怖によるものと気づいたピーター。戦災孤児の象徴である緑髪をもった自分は、戦争の悲惨さを人びとに語り聞かせる指名があると信じこみます。ところが、周囲は聞く耳持たず。かえって迫害され、級友にも見放され、丸刈りにされてしまうのです。

最後は老人と引き合わされ、戦火にあっても身の危険を顧みずに他人を救った両親の遺言に触れて自信を取り戻します。
訴えたいところはわかるのですが、やや性急すぎるような。もうすこし主人公の立ち直りを順を追ってていねいに描いてくれたら嬉しかったのですが。

反戦映画というよりはむしろ、非常事態にともなって現れる人間の醜さがもたらす差別へのアンチテーゼのように感じました。緑髪を伝染病として忌み嫌うなどの子どもらしい残酷さは、まるまる福島からの避難された方々への風評被害を思わせます。戦争は平和主義に飼いならされた人の同情を買うことはできましょうが、疫病や貧困、二次災害にあえぐ立場の人間の窮状にはあっさりと手を差し伸べることはできにくいからです。

この映画では、単に主人公が自信を取り戻しただけであって、(老人や理解のある女教師はのぞく)周囲の偏見は払拭されていないのですね。そこまでちゃんと辿り着いていたら、もっと感動できたのに。戦争の悲惨さを訴えるならば、むしろファンタジー色を押さえたほうがいいのではないかと。戦争で手足を失ったなどの障害に比べたら、世界にたったひとりの負い目とはいえ髪が緑色になったという事実は、ヴィジュアルバンドの出立ちやアニメキャラを見慣れている身としては、どうしても悲しみにくれるほどの衝撃ではないだろうと感じざるをえないからです。

監督はジョセフ・ロージー。
出演は「お熱いのがお好き」のパット・オブライエン、「史上最大の作戦」のロバート・ライアン,子役のディーン・ストックウェル。

(2011年4月30日)

緑色の髪の少年 - goo 映画

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