万葉短歌-悠山人編

万葉短歌…万葉集全4516歌(長短)のうち、短歌をすべてJPG&TXTで紹介する。→日本初!

万葉短歌4344 忘らむて4020

2022年04月30日 | 万葉短歌

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万葉短歌4344 忘らむて4020

忘らむて 野行き山行き 我れ来れど
我が父母は 忘れせのかも  商長首麻呂

4020     万葉短歌4344 ShuJ459 2022-0430-man4344

□わすらむて のゆきやまゆき われくれど
 わがちちははは わすれせのかも
○商長首麻呂(あきのをさの おびとまろ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第52首。4346歌第二左注<十首>の第8首。左注に、「右一首商長首麻呂」。
【訓注】[以下、すべて訛り。順に、わすらむと・わすれせぬかも]忘らむて(わすらむて=和須良牟弖)。忘れせのかも(わすれせのかも=和須例勢努加毛)。


万葉短歌4343 我ろ旅は4019

2022年04月29日 | 万葉短歌

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万葉短歌4343 我ろ旅は4019

我ろ旅は 旅と思ほど 家にして
子持ち痩すらむ 我が妻悲しも  玉作部広目

4019     万葉短歌4343 ShuJ459 2022-0429-man4343

□わろたびは たびとおめほど いひにして
 こめちやすらむ わがみかなしも
○玉作部広目(たまつくりべの ひろめ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第51首。4346歌第二左注<十首>の第7首。左注に、「右一首玉作部広目」。
【訓注】[以下、すべて訛り。順に、われ・おもへど・いへ・こもち・わがめ]我ろ(わろ=和呂)。思ほど(おめほど=於米保等)。家(いひ=已比)。子持ち(こめち=古米知)。我が妻(わがみ=和加美)。


万葉短歌4342 真木柱4018

2022年04月28日 | 万葉短歌

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万葉短歌4342 真木柱4018

真木柱 ほめて造れる 殿のごと
いませ母刀自 面変りせず  坂田部首麻呂

4018     万葉短歌4342 ShuJ459 2022-0428-man4342

□まけはしら ほめてつくれる とののごと
 いませははとじ おめがはりせず
○坂田部首麻呂(さかたべの おびとまろ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第50首。4346歌第二左注<十首>の第6首。左注に、「右一首坂田部首麻呂」。
【訓注】真木柱(まけはしら=麻気波之良)[「<真木柱(まきばし)>の訛り。桧や杉など建築の良材で作った立派な柱」。02-0190真木柱(まきまきばしら)]。母刀自(ははとじ=波々刀自)[「<刀自>は家の内をとりしきる主婦の尊称。戸主(とぬし)」。04-0723(長歌)吾児乃刀自緒(あがこのとじを)、など<刀自>出現は集中7か所]。


万葉短歌4341 橘の4017

2022年04月27日 | 万葉短歌

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万葉短歌4341 橘の4017

橘の 美袁利の里に 父を置きて
道の長道は 行きかてのかも  丈部足麻呂

4017     万葉短歌4341 ShuJ458 2022-0427-man4341

□たちばなの みをりのさとに ちちをおきて
 みちのながちは ゆきかてのかも
○丈部足麻呂(はせつかべの たりまろ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第49首。4346歌第二左注<十首>の第5首。左注に、「右一首丈部足麻呂」。
【訓注】橘の美袁利の里(たちばなの みをりのさと=多知波奈能 美袁利乃佐刀)[<橘>は大地名、<美袁利>は小地名であろう。いずれも所在不明。<橘>を清水市〔現・静岡市清水区〕小鳥町立花に擬する説がある]。父(ちち)。行きかての(ゆきかての=由伎加弖努)[「行きかてぬ」の訛り」。<努>は<ノ><ヌ>の両説あり]。


万葉短歌4340 父母え4016

2022年04月26日 | 万葉短歌

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万葉短歌4340 父母え4016

父母え 斎ひて待たね 筑紫なる 
水漬く白玉 取りて来までに  川原虫麻呂

4016     万葉短歌4340 ShuJ458 2022-0426-man4340

□とちははえ いはひてまたね つくしなる
 みづつくしらたま とりてくまでに
○川原虫麻呂(かはらの むしまろ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第48首。4346歌第二左注<十首>の第4首。左注に、「右一首川原虫麻呂」。
【訓注】父母え(とちははえ=等知波々江)[「<父母(ちちはは)よ>の訛り」]。筑紫(つくし=豆久志)。


万葉短歌4339 国回る4015

2022年04月25日 | 万葉短歌

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万葉短歌4339 国回る4015

国回る あとりかまけり 行き回り
帰り来までに 斎ひて待たね  刑部虫麻呂

4015     万葉短歌4339 ShuJ458 2022-0425-man4339

□くにめぐる あとりかまけり ゆきめぐり
 かひりくまでに いはひてまたね
○刑部虫麻呂(おさかべの むしまろ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第47首。4346歌第二左注<十首>の第3首。左注に、「右一首刑部虫麻呂」。
【訓注】あとりかまけり(阿等利加麻気利)[「<あとり>は燕雀目スズメ科の小鳥で、ほおじろに似た青い色の渡り鳥という。…<かま>は鴨、<けり>は鴨より小型の水鳥鳧(けり)〔下記注〕という。どちらも渡り鳥」]。帰り(かひり=加比利)[「<帰(かへ)り>の訛り」]。
【編者注-鳧】1:①チドリ科の鳥。日本で繁殖し、冬は南方に渡る。大きさはハトほど。背は灰褐色で、腹は白く胸に黒い帯がある。「ケリリ、ケリリ」と鳴く。季夏 ②物事の終わり。「―をつける」(『漢字ペディア』) 2:発音=fú/ 英語=wild duck,teal;swim/ 法語(フランス語)=canard sauvage(『漢典』) 3:宋 蘇轍 《趙少師自南都訪歐陽少師於潁州留西湖久之作詩獻陽公》:“棹進鳧鴨亂,樂作蟲魚驚。”(『字典網』)4:鳧鴨の訓読は<ふあふ(ふおう)>、日本では歌人の蔑称にも。


万葉短歌4338 畳薦4014

2022年04月24日 | 万葉短歌

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万葉短歌4338 畳薦4014

畳薦 牟良自が磯の 離り磯の
母を離れて 行くが悲しさ  生部道麻呂

4014     万葉短歌4338 ShuJ458 2022-0424-man4338

□たたみけめ むらじがいその はなりいその
 ははをはなれて ゆくがかなしさ
○生部道麻呂(みぶべの みちまろ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第46首。4346歌第二左注<十首>の第2首。左注に、「右一首助丁(じょちゃう)生部道麻呂」。
【訓注】畳薦(たたみけめ=多々美気米)[「<畳薦(たたみこも)>の訛り」]。牟良自が磯(むらじがいそ=牟良自加已蘇)[「家郷の海岸の暗礁であろうが、所在不明」]。離り磯(はなりそ=波奈利蘇)[「<離(はな)れ磯(いそ)>の約」]。母(はは=波々)。


万葉短歌4337 水鳥の4013

2022年04月23日 | 万葉短歌

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万葉短歌4337 水鳥の4013

水鳥の 立ちの急ぎに 父母に
物言ず来にて 今ぞ悔しき  有度部牛麻呂

4013     万葉短歌4337 ShuJ458 2022-0423-man4337

□みづとりの たちのいそぎに ちちははに
 ものはずけにて いまぞくやしき
○有度部牛麻呂(うとべの うしまろ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第45首。4346歌第二左注<十首>の第1首。左注に、「右一首上丁(じゃうちゃう)有度部牛麻呂」。
【訓注】水鳥(みづとり=美豆等里)。父母(ちちはは)。物言ず来にて(ものはずけにて=毛能波須価尓弖)[「〈物言(い)はず来(き)にて〉の訛り」]。


万葉短歌4336 防人の4012

2022年04月22日 | 万葉短歌

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万葉短歌4336 防人の4012

防人の 堀江漕ぎ出る 伊豆手船
楫取る間なく 恋は繁けむ  大伴家持

4012     万葉短歌4336 ShuJ449 2022-0422-man4336

□さきもりの ほりえこぎづる いづてぶね
 かぢとるまなく こひはしげけむ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第44首。「追痛…并短歌〔(五首)〕」の第5首。左注に、「右九日大伴宿祢家持作之」。
【訓注】防人(さきもり=佐伎母利)。伊豆手船(いづてぶね=伊豆手夫祢)[「伊豆風(ふう)の船。…伊豆は船の製作で聞こえていたのであろう。<手>は方式、種類の意」]。恋(こひ)。


万葉短歌4335 今替る4011

2022年04月21日 | 万葉短歌

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万葉短歌4335 今替る4011

今替る 新防人が 船出する
海原の上に 波なさきそね  大伴家持

4011     万葉短歌4335 ShuJ449 2022-0421-man4335

□いまかはる にひさきもりが ふなでする
 うなはらのうへに なみなさきそね
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第43首。「追痛…并短歌〔(五首)〕」の第4首。4336歌左注併照。
【訓注】新防人(にひさきもり=尓比佐伎母利)。船出(ふなで=布奈弖)。海原(うなはら=宇奈波良)。波なさきそね(なみなさきそね=那美那佐伎曽祢)[「<さくは波頭が白く砕けるのを花が咲いたようにいったもの。…<な~そね>は懇願的な禁止。<波>の<な>…<奈>が本来の形かも…」]。


万葉短歌4334 海原を4010

2022年04月20日 | 万葉短歌

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万葉短歌4334 海原を4010

海原を 遠く渡りて 年経とも
子らが結べる 紐解くなゆめ  大伴家持

4010     万葉短歌4334 ShuJ449 2022-0420-man4334

□うなはらを とほくわたりて としふとも
 こらがむすべる ひもとくなゆめ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第42首。「追痛…并短歌〔(五首)〕」の第3首。4336歌左注併照。
【訓注】海原(うなはら)。子ら(こら=児良)。ゆめ(由米)。


万葉短歌4333 鶏が鳴く4009

2022年04月19日 | 万葉短歌

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万葉短歌4333 鶏が鳴く4009

鶏が鳴く 東壮士の 妻別れ
哀しくありけむ 年の緒長み  大伴家持

4009     万葉短歌4333 ShuJ448 2022-0419-man4333

□とりがなく あづまをとこの つまわかれ
 かなしくありけむ としのをながみ
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第41首。「追痛…并短歌〔(五首)〕」の第2首。左注に、「右二月八日兵部少輔(ひゃうぶのせうふ)大伴宿祢家持」。
【訓注】鶏(とり=等里)。東壮士(あづまをとこ=安豆麻乎等故)。妻(つま=都麻)。


万葉短歌4332 ますらをの4008

2022年04月18日 | 万葉短歌

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万葉短歌4332 ますらをの4008

ますらをの 靫取り負ひて 出でて行けば
別れを惜しみ 嘆きけむ妻  大伴家持

4008     万葉短歌4332 ShuJ448 2022-0418-man4332

□ますらをの ゆきとりおひて いでてゆけば
 わかれをおしみ なげきけむつま
○大伴家持(おほともの やかもち)=03-0403歌注参照。次歌左注併照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第40首。前歌(4331、長歌)題詞に、「追(おひて)痛(いたみて)防人悲別之心作歌一首 并短歌〔(五首)〕」、その第1首。
【訓注】ますらを(麻須良男)。靫(ゆき=由伎)[「矢を入れて背に負う具」。03-0478(長歌)靫取負而(ゆきとりおひて)、-0480名負靫帯而(なにおふゆきおびて)、など。靭・𩉠は異体字]。妻(つま=都麻)。


万葉短歌4330 難波津に4007

2022年04月17日 | 万葉短歌

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万葉短歌4330 難波津に4007

難波津に 装ひ装ひて 今日の日や
出でて罷らむ 見る母なしに  丸子多麻呂

4007     万葉短歌4330 ShuJ444 2022-0417-man4330

□なにはつに よそひよそひて けふのひや
 いでてまからむ みるははなしに
○丸子多麻呂(まろこの おほまろ)=左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第38首。第二左注<三首>の第3首。左注に、「右一首鎌倉郡〔(鎌倉市)〕上丁丸子連(むらじ)多麻呂」。第二左注に、「二月七日相模国防人部領使(ことりづかひ)守従五位下藤原朝臣宿奈麻呂(すくなまろ)進(たてまつる)歌数八首 但拙劣歌五首者不取載之」〔三首を載せる〕。
【訓注】難波津(なにはつ=奈尓波都)[「難波の港。防人たちが出航して筑紫に赴いた港。…a南区三津寺町辺…、b東区東横堀川高麗橋辺〔の人工港、の2説がある〕」]。今日の日(けふのひ=気布能比)。


万葉短歌4329 八十国は4006

2022年04月16日 | 万葉短歌

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万葉短歌4329 八十国は4006

八十国は 難波に集ひ 船かざり
我がせむ日ろを 見も人もがも  丹比部国人

4006     万葉短歌4329 ShuJ443 2022-0416-man4329

□やそくには なにはにつどひ ふなかざり
 あがせむひろを みもひともがも
○丹比部国人(たぢひべの くにひと)=左注参照。4330歌第二左注参照。
【編者注】巻20(4293~4516、二百二十四首)の第37首。4330歌第二左注<三首>の第2首。
【訓注】八十国(やそくに=夜蘇久尓)。船かざり(ふなかざり=布奈可射里)[「出航を前に船の装備を整えること」]。我が(あが=安我)。日ろ(ひろ=比呂)[「<ろ>は接尾語。人に関しても用い、東国の歌に目立つ」]。見も人も[「<見も>は<見む>の東国形。<人>は家人を意識している」]。