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黒髪 谷村 志穂 講談社 このアイテムの詳細を見る |
久しぶりに、別世界に浸る気分にさせてくれる小説でした。 亡命ロシア人のおじさんとと、日本人少女の恋。 ”銀色巻き毛のおばあちゃん”と呼ばれる、エキゾチックな顔立ちの小杉りえ。彼女の娘が結婚したときに、お祝いにとせがんで、祖母から譲ってもらった古いチェストのなかにあった古い手紙を、”もういいかな”という言葉とともに送ってきた。そこに入っていた一葉の写真からりえは、自分のルーツを探しはじめる。そして見つけたのは、函館で亡命ロシア人の家にお手伝いとして奉公していた少女と、その家の主人の激しい恋愛の物語だった。
現代に生きる りえの生活と、半世紀前の”さわ”という女性のストーリが交錯する構成です。平穏に生きてきたりえが、母の人生をたどるような形にですが、実際にはほとんど彼女は何もしていなくて、函館市の気のいい職員がいろいろ調べてくれるのです。また、さわの物語は、読者は詳しく知ることができますが、りえ自身はさほど詳しくは知ることはできなかったので、構成にはやや違和感がありました。
ロシア革命で、故郷を失った人々が日本に多く住んでいたということは、今まで全く知らなかったため、新鮮で、題材としては面白く、またさわの物語もぐいぐい引き込まれ、りえの人生との絡みもよいのですが、もう少しりえ自身が知っていく過程を工夫してほしかったかなぁと思いました。